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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第三百十七話 日本にいることその十四

「もうな」
「どうかしてるね」
「そうだよ、馬鹿なんだよ」
「そうした人を格好良いって言う人は」
「そうだよ、本当に尊敬すべき人を知ってな」
 そしてというのだ。
「本当に恰好良い人を知らないとな」
「やっぱり駄目だね」
「吉本隆明だって格好良くないだろ」
「馬鹿だよね」 
 江戸っ子らしくすぱっとしてもいないし頭もいいとは思えない。
「はっきり言って」
「あれは本物の恰好悪い馬鹿だ」
 吉本隆明はというのだ。
「本は読まなくていいがあの姿は見ておけよ」
「反面教師として」
「そうだよ」
 まさにというのだ。
「見ておくんだ」
「もう亡くなってるからその人生をだよね」
「ああ、それをな」
「そうすればいいんだね」
「生きている人はその生き様を見てな」
「亡くなった人は人生だね」
「それを見るんだ、しかし吉本隆明って奴はな」
 親父は飲みながら苦々し気に話した。
「何処がいいのかな」
「親父もそう思うんだね」
「ああ、よりによってオウムをいいって言ったんだ」
 そしてあの教祖をだ。
「その時点で駄目過ぎるだろ」
「おかしいよね」
「オウムがおかしいなんてものじゃないのは子供でもわかるだろ」
「うん、それこそ誰でもね」
「その誰でも駄目だってわかるのがな」
 それがというのだ。
「わからなくて偉大な宗教家とか最も浄土に近い人だとかな」
「馬鹿でないと言わないよね」
「その馬鹿なことを言ったのがな」
「吉本隆明で」
「辿り着いたのがあんなのならな」
 そのオウムの教祖だ、教理は他の宗教のつなぎ合わせで悪事と煩悩の塊みたいな振る舞いであった。
「もうそれまでもだろ」
「たかが知れてるね」
「俺はあいつの本は読んだことがない」
 一切、そうした言葉だった。
「しかし辿り着いた、七十過ぎてそれがオウムならな」
「それでわかるんだね」
「何でも何を言ってるかわからない文章の時は教祖でな」 
 そこまで崇められてというのだ。
「誰でもわかる文章書いたら普通の思想家になったって聞いてる」
「何を言ってるかわからないとなんだ」
「人間難しい、小難しいな」
 親父はここでこう言い変えた。
「文章読めて理解出来たら俺頭いいと思うだろ」
「あっ、それあるね」
 僕も言われてみればだ。
「人は」
「そうだろ、けれど専門用語を使っててな」
 学問的なそれをだ。
「ある程度の教養や知識があればわかるのはいいんだ」
「その場合はなんだ」
「小林秀雄とかな」
「あの人も思想家だったね」
「小林秀雄はある程度の教養がないと読めないけれどな」
「そうなんだ」
「古典とかクラシックへのな」
 この辺り小林秀雄の知性だろうと聞いて思った。 
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