DOREAM BASEBALL ~夢見る乙女の物語~
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夢の舞台へ
前書き
思ったよりも早くできたので更新です。基本は隔週の日曜日更新狙いですが、早められそうな時は早めていきます(*・ω・)
ザワザワ
体育着姿の少女たちがグラウンドで和気藹々とお喋りをしている。かなりの人数が集まっているそれを見て、ユニフォームを着ている少女たちは様々な反応を見せていた。
「予想はしてたけど、今年はいっぱい入ったね」
「ミーハーばっかりだろうけどな」
背の低い赤髪のポニーテールの少女とスラッとした高身長のベリーショートヘアの少女がそう言う。
「去年の甲子園、すごかったからねぇ」
「あれは痺れたねぇ!」
金髪のロングヘアの少女と銀髪のパーマがかかった少女も同調したように盛り上がっている。そのせいか、ユニフォームを着ている少女たちも少しずつざわつき始めてしまった。
パンパンッ
このまま収集がつかなくなるかと思われたタイミングで手を叩く黒髪のポニーテールの少女。彼女が前に立った途端、全員が一斉に静かになった。
「時間だぞ。全員、静かにしろ」
凛とした声と容姿から彼女が中心的人物であることがすぐにわかる。彼女を初めて見た一年生たちもそれを察し、自然と背筋が伸びる。
「初めまして、キャプテンの坂元陽香だ。上級生は後で自己紹介させるとして……新入希望者から行くか?」
「了解です!!」
赤髪のポニーテールの少女が手を上げると、まだほとんどが体育着に身を包んでいる一年生たちを整列させる。
今日はこの『私立明宝学園』の入学式。その直後に行われている部活動の仮入部期間に伴い、例年よりも多くの生徒が女子野球部のグラウンドへと足を運んでいる。
「女子野球って結構人気あったんだね」コソッ
「みんな莉愛と同じ理由だと思うよ」コソッ
端から順番に自己紹介をしている同級生たちの話など気にしていないかのように水髪のツインテールの少女と黒髪のショートボブの少女は小声で話をしている。特に黒髪の少女は顔を正面を向けたまま平静を装っているが、水髪の少女はキョロキョロとしており、落ち着きがない。
「莉愛、しっかり前見てて」コソッ
「ごめ~ん」
坂元side
「希望ポジションはピッチャーです!よろしくお願いします!!」
約半数を過ぎたところだろうか、今年は例年以上の生徒が仮入部とはいえこの女子野球部に来てくれている。今の二、三年生よりも多いくらいだ。だが……
「希望ポジション、ピッチャーばっかりだね」
「まぁ、去年のあの試合の影響だろうからね」
後ろでコソコソと話し声が聞こえる。本来なら注意するべきところだが、彼女たちがそう言いたくなる気持ちもわからなくはない。
(この感じでは、ほとんどの部員がやめるんだろうな)
大きな感動や夢を与えられるとつい追いかけたくなる気持ちはわかる。だが、それゆえに無理だと一瞬でも思ってしまうとすぐに逃げ出してしまう。特に男子ほどの普及率ではない女子野球では、それも仕方ないだろうな。
「じゃあ次!!」
「はい!!斉藤瑞姫です。希望ポジションはピッチャーです!!よろしくお願いします!!」
それを聞いて後ろの数人がざわついている。一年生たちはその理由がわからないようで、顔を見合わせているが、気にしないでおくか。
「はいはい!!じゃあ次ね!!」
赤色のポニーテールを揺らしながら渡辺優愛が次の一年生へと話を振る。相変わらずの天真爛漫ぶりに思わず笑ってしまいそうになるが、集中して自己紹介を聞かないと失礼になるからな。気を引き締めておかなければ。
「は~い!!城田莉愛と言います!!希望ポジションはキャッチャーです!!生まれて初めて野球をやりま~す!!よろしくお願いしま~す!!」
「「「「「!?」」」」」
緊張感のあった自己紹介がいきなり崩壊するほどのゆるっとした挨拶に全員がその少女に視線を向けた。肝心の水髪の少女はなぜ全員が一斉に自分に視線を向けたのかわかっていないのか、首を傾げている。
「え?大丈夫?あの子」
「てかキャッチャー希望なんて珍しい」
「大丈夫なのかな?」
後ろからも心配するような声が聞こえてくる。無理もない、それくらいインパクトのある間抜けな声だったのだから。
「可愛い……」
「え?」
「なんでもない」
なんか不審な声も聞こえた気がしたが、気にしないでおこう。
(それにしてもキャッチャー希望か。最後まで残ってくれればありがたいが……)
責任あるポジションである上に不人気なポジションである捕手。希望する選手が少ないのは言うまでもないが、希望を叶えられたとしてもこなせる選手が少ない。それだけのポジションがキャッチャーなのだから。
莉愛side
「莉愛!!挨拶ふざけすぎ!!」
「ふにゃっ!?」
一年生の挨拶が終わった後、瑞姫からげんこつが落とされちゃった。身長さのせいで真上から叩かれちゃうから痛いんだよね。
「先輩たちすごい怒ってたよ。あとで何か言われちゃうよ」
「えぇ?そうかなぁ?」
確かにざわついてたけど、そんなに怒ってる人はいなかったような気がしたけど……いや、それよりもーーー
「私よりも瑞姫の方が先輩たちざわついてなかった?気のせい?」
瑞姫が自己紹介した瞬間、先輩たちが今までの子達と何か違う雰囲気があった。さすがに私たちも何か起きたのかと思っちゃったもん。
「あぁ、私は中学でも野球やってたから」
そう言えば、瑞姫は中学から硬式で野球をやってたんだ。それで、野球好きな瑞姫がどうしても行きたくて付いていった甲子園であの試合に出会ったんだから。
「私も頑張ってうまくなりたいなぁ!!」
「よしよし、頑張ろうね」
瑞姫の他にもユニフォーム姿の女の子が何人もいる。彼女たちもきっとうまいんだろうなと思うと、私も頑張らないとなぁと気合いが入る。
「そのためにはまず走らないといけないけどねぇ」
「ふぇぇ……」
瑞姫曰く野球部の登竜門とも言える長距離走。暑い夏のシーズンを乗り越えるためには体力が必要らしいから、走り込みが大切らしい。
「早くボールに触りたいなぁ」
キャッチボールとかは瑞姫とやらせてもらったけど、本格的な野球はやったことがない。早くグラウンドでいっぱい動き回りたい気持ちを抑えながら、これから一緒に戦っていく仲間たちと一緒にロードワークへと向かっていきました。
後書き
いかがだったでしょうか。
私が書く野球小説の主人公キャッチャーばっかりですが、私が野球を始めた理由が『城島選手のようなキャッチャーになりたい』だったからが強いですね。結局キャッチャーになれたことは一度もなかったですが|ョω・`)センスガナカッタ
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