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八条学園騒動記

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第六百十七話 地獄の甘さその四

「あまり飲まれないです」
「マウリアは紅茶を聞いていましたが」
「やはりです」
 これはというのだ。
「そちらが主流です」
「コーヒーではなく」
「コーヒーはマウリアではあまり飲まれません」
「そうなんですね」
「イギリスの影響で」
 十九世紀から二十世紀にかけてイギリスの植民地であった、それでというのだ。
「そうなっています」
「イギリスですね、どうも」
「連合ではですね」
「嫌われてますからね」
「エウロパの国の中でも」
「フランス、スペイン、ドイツと並んで」
 先の二国は植民地統治、後の一国は第二次世界大戦とナチスによってそうなっている。尚連合ではエウロパの国は全て悪となっている。
「嫌われてますからね」
「それで、ですね」
「はい」
 まさにとだ、店員はベッキーに話した。
「イギリスを言われますと」
「連合の方は嫌な気持ちになりますね」
「食べものもまずいですよね」
「カレーは美味しいです」
 セーラが言ってきた。
「そちらは」
「カレーはですか」
「カリーではないですが」 
 マウリア料理ではなくイギリス料理だが、というのだ。
「ですが」
「それでもですか」
「はい、カレーは美味しいです。そして朝食とティーセットも」
 こうしたものもというのだ。
「非常にです」
「美味しいですか」
「左様です」
「では他のものは」
「召し上がったことはありません」
 セーラは微笑んで答えた。
「実は」
「そうですか」
「イギリスに行ったこともありますが」
「それでもなんですね」
「留学していました、イートンに」
「イートンですか」
「あちらの学校に」
 この時代でも有名なイギリス屈指の学校にというのだ。
「留学していましたので」
「そこで、ですか」
「カレーを頂いていました」
「それでそれは美味しかったんですね」
「そして朝食とティーセットは」
「じゃあ他は」
「シェフが作ってくれていたものを召し上がっていました」
 そうだったとだ、セーラは店員に答えた。
「そうしていました」
「そうですか」
「ですから他のお料理は」
 特にというのだ。
「存じません」
「そうですか」
「ですがどうも連合でなイギリス料理は評判が悪いですね」
「最悪です」
 悪いどころかという返事だった。
「そうです」
「お聞きする限りそうですね」
「もうその味は」
 それこそというのだ。
「仏滅だって」
「仏滅ですか」
「よく言われています」
「ですがカレーは美味しくて」
「紅茶もですか」
「そうです、そしてその紅茶をです」
 セーラは店員にあらためて話した。 
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