靴好きの猫
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第二章
「十キロ以上離れたお家にもね」
「行ってか」
「それでわざわざよ」
「靴を集めていたんだな」
「そうだったのよ」
妻は夫に家の中でジョーダンを見つつ話した。
「それで今片っ端から返してるわね」
「フェイスブックにも情報集まっているしな」
「取られた人も何でなくなったのかね」
「わからないんだな」
「まさか猫に取られていたなんてね」
自分の靴がというのだ。
「思っていなくて」
「驚いているんだな」
「ええ、それでね」
妻は話を続けた。
「順調にね」
「今は返していけてるな」
「そうなってるわ、あともうジョーダンは」
彼を見てこうも言った。
「そろそろ靴に飽きてきたみたいよ」
「また別のものを集めだしてるんだな」
「今度はまたゴミよ」
これの収集に熱中しだしているというのだ。
「これがね」
「そうか、またか」
「またよ、けれど人の靴取って来るよりましでしょ」
「ああ、じゃあこのことはか」
「終わりそうよ」
「それは何よりだな、しかしな」
夫は妻の話をここまで聞いてぼやく様に言った。
「猫も色々だな」
「それぞれ性格があるわね」
「ものを集めたがる猫もいるんだな」
「ジョーダンみたいにね」
「そうだな、全く今度は驚いたし参った」
夫は今度はやれやれといった顔になって述べた。
「人の靴を集めたがるなんてな」
「猫がね」
「こんなこともあるんだな」
「ええ、けれど靴を返してね」
「それでジョーダンも靴から他のものに興味が移ってな」
「よかったわ、全くあんたも変な子ね」
ロスはジョーダンにも言った。
「靴を集めるなんて」
「二度と興味を持つなよ」
プラシドもジョーダンに言った。
「ゴミはまだいいがな」
「もう靴は駄目よ」
「ニャア」
「わかったって返事か?」
「どうかしらね」
自分に言う二人に顔を向けて鳴いた彼にこうも話した、だがもうジョーダンは靴を集めることはしなかった。彼の収集癖はそのままだったが少なくとも靴はなくなった。夫婦はそれならいいと思ったのだった。
靴好きの猫 完
2021・5・27
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