水が欲しくて
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第一章
水が欲しくて
フランスのカレーに住んでいるクロチキン=デニスはこの時イギリスグロスターのパブにいた、木製の古風な造りのその店のカウンターでエールを飲みつつ言った。
「美味いな、酒とつまみは」
「フランス人がイギリスのこと褒めるなんて珍しいな」
パブの店主、カウンターの中に立っている黒髪をセットして顔の下半分に見事な黒髭を生やしているポール=キャンプスは笑って応えた。長身で逞しい身体つきで一七六位の背のデニスと二十センチは違う。見ればデニスは少し太っていて青い目でオレンジの髪の毛をロングにしている。
「俺ははじめて聞いたよ」
「そうかい?この店の酒とつまみはだよ」
「イギリスの料理はかい」
「カレーばかり食ってるな、こっちに来てから」
「そうか、カレーは美味いか」
「あと中華と朝食はな」
こうしたものはというのだ。
「三時は最高だな」
「そこまでなら充分だ、あとあんた旅行は好きか」
「趣味さ、この前はクロアチアに行ったぜ」
「そうか、俺も好きでな」
キャンプスはデニスに笑って応えた。
「この前はグランドキャニオンに行ってきたで」
「へえ、どんな旅だったんだい?」
「あんたの話も聞きたいがいいかい?」
「ああ、それじゃあな」
二人はそれぞれ話した、その話はというと。
デニスはこの時モンテネグロにコトルに来ていた、そうしてこの街の観光名所を巡って楽しんでいた。
その中で海を岩場から見下ろして景色を楽しんでいると。
「ニャア」
「猫?」
「そうね」
恋人が応えた、見れば。
猫がいた、その猫は三毛猫の雌だったが。
岩場にいて丁度デニスの胸の高さでいてだった、そうしてしきりに欲しがる様な目で見て鳴いてきた、それでだった。
デニスは恋人と共に食べものを出したがそれは受け取らない、それでデニスは言った。
「水か?」
「この娘お水欲しいの」
「そうなのか?」
「じゃあお水あげるか」
「そうしましょう」
「飲むか?」
持っていたペットボトルを取り出してだった。
デニスはその中の水を掌の上に注いで猫に差し出した、すると。
猫はその水を一心不乱に舐めだした、デニスはそこに何度も水を入れたが猫は飲んでいった。そしてかなりの量の水を飲み。
顔を上げてだった、一声鳴いてその場を後にした。
「ニャア」
「有り難うか」
「有り難うって言ってるのかしら」
デニスは恋人と共に猫が鳴いて去ったのを見て言った。
「そうかしら」
「そうだといいな」
「そうね」
猫を見送ってから話した、それから次の観光の場所に向かった。
キャンプスは恋人と一緒にグランドキャニオンを旅していた、そうしてそこの景色を楽しんでいたが。
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