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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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第百話 夏侯淵、定軍山に向かうのことその四

「そうさせてもらうわ」
「ではどれだけで済ませられるのかしら」
 孫策は直接的ではないが曹操達の援護に回っている。
「一体どれだけで」
「今日中で終わるわ」
 司馬尉は余裕に満ちた顔で言い切った。
「あの程度の仕事ならね」
「言うわね。それじゃあ」
「それも見せてもらいますわ」
 曹操と袁紹が同時に攻撃を仕掛ける。
「貴女の仕事をね」
「楽しみにしていますわ」
「そうじゃな。では若しできなければじゃ」
 袁術は意地悪い笑みを浮かべて司馬尉に述べた。
「どうしてくれるのじゃ」
「ええ。その時は三公である司空を辞めて」
 それが司馬尉の今の官職だ。司徒は袁術で太尉は孫策だ。袁家は遂に五代に渡って三公を出したということになったのである。
「故郷に隠棲するわ」
「言ったわね。ではその時はね」
「そうさせてもらうわ。何ならね」
 さらにだとだ。司馬尉は笑いながら話す。
「倍の仕事をしてみせるけれど」
「そうね。丁度司空の仕事が溜まってるし」
「そうしてもらいますわ」
 曹操と袁紹が言いだ。こうしてだった。 
 司馬尉にだ。倍の仕事が与えられた。そうなってだ。
 袁術は会議の後己の屋敷に戻り自分の仕事をしながらだ。大笑いで言うのだった。
「愉快じゃ。これであの胸糞悪い女が消えるぞ」
「ああ、司馬尉殿」
「あの方ですね」 
 傍に控えている張勲と紀霊が応える。
「どうも山の様なお仕事を今日中にできないと」
「官を辞されて故郷に入られるとか」
「確かに言ったのじゃ。さすればじゃ」
 どうなるかと。袁術は上機嫌のまま話す。
「あの女が完全にいなくなるわ」
「そうなりますか」
「これで」
「あ奴の今日の仕事の量を見た」
 実際にだ。それを確めたというのだ。
「うむ、わらわの今している仕事の十倍はあるぞ」
「えっ、これのですか」
「銃倍もあるのですか」
「そうじゃ。十倍はあったぞ」
 それだけの仕事の量だというのだ。
「あんな仕事一日で終わらん。あ奴はこれで終わりじゃ」
「そうですね。そこまでの量だと」
「幾ら何でも」
 二人もだ。それだけの仕事の量になるとだった。
 流石にだ。無理だというのだった。
「一日では不可能でしょう」
「どう考えても」
「そうじゃ。だからこれで終わりじゃ」
 袁術はこのことを確信していた。
「後の司空は誰がいいかのう」
「そうですね。まあ董白さんでしょうか」
「董卓さんはおられないことになっていますし」
「そうじゃな。そうしたところじゃな」
 こうした話をしながらだった。袁術は司馬尉の失脚を確信していた。
 しかしだ。次の日である。彼女が驚愕する報が来た。
「何っ、それはまことか!?」
「はい、昨日のうちにです」
「御一人で」
「あれだけの仕事を終わらせたと申すか?」
 袁術は驚きを隠せない顔で楽就と揚奉に問い返した。
「あの女一人で」
「はい、妹君達は別の仕事をしておられたので」
「御一人なのは間違いありません」
「御一人で昨日一日で、です」
「終わらせました」
「信じられん」
 袁術もだ。唖然として言う。
「あれだけの仕事をするとは」
「あの、司馬尉殿は」
「果たして人間でしょうか」
 楽就も揚奉もだ。唖然となっている。
 そしてその唖然となった顔でだ。袁術に言うのである。
 
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