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八条学園騒動記

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第六百九話 カレーはそれぞれその九

「それでビーフシチューにもね」
「なるのね」
「そう、だからね」
「調味料が大事ってことね」
「僕も凄いことだと思うよ」
 トムは食べながら素直に賞賛の言葉を述べた。
「調味料でそこまで変わるから」
「あと香辛料ね」
「そうだよね、カレーって結局ね」
「香辛料の塊なのよね」
「沢山の種類の香辛料を調合したのがね」
 まさにそれがというのだ。
「カレールーだよ」
「そうよね」
「それで本当に同じ食材でも」
「調味料や香辛料で変わるわね」
「全く別のお料理になるよ」
「ビーフシチューと肉じゃがみたいに」
「不思議と言えば不思議なことに」
 トムはこうも言った。
「変わるよ」
「そこが面白いわね。ただね」
「ただ?」
「連合ってそういうこと多いわね」 
 エイミーの今の言葉はしみじみとしたものだった。
「お料理がすぐに変わるわね」
「同じ食材でもだね」
「ええ、もうね」 
 それこそというのだ。
「それぞれの国でアレンジして」
「そうだね。まあカナダはね」
 トムはここで寂しい笑顔になって言った。
「そういうのはね」
「あまりというか殆どね」
「ないよね」
「それはね」
「カナダって目立たない国で」
 連合の中ではかえってそのことで有名になってさえいる、兎に角目立とうとしても目立てない国とされている。
「文化もね」
「目立ってないわね」
「大国の筈なのに」
「どうにもね」
「国力でも目立てないし」
「自己主張しないし」
 カナダのお国柄とされている。
「だからね」
「芸術もスポーツもで」
「食べものも」
 こちらもというのだ。
「そっちもね」
「本当に自己主張しなくて」
「それでこれだっていうものがね」
「ないわね」
「カナダ料理っていうと」
 トムは短時間だがかなり必死に考えた、そうしてそのうえでエイミーだけでなくシッドに対しても話した。
「メイプルシロップ使ったパンケーキと」
「スモークサーモンだね」
「それ位よね」
 弟も従姉も言った。
「その二つは何処でも食べられるわ」
「はっきり言えばね」
「後はイヌイット料理だけれど」
「これもね」
「結局アメリカだし」
「あの国の寒い地域のお料理で」
「うん、セイウチとかホッキョクグマの料理は」
 トムも言った。
「全部ね」
「アメリカ料理になってるね」
 シッドはこう返した。
「連合としては」
「そうだよね」
「うん、それどころか」
 シッドはさらに言った。 
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