| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

背中を見せて寝ること

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
次ページ > 目次
 

第二章

「そんな連中よりもな」
「よくならないと駄目ね」
「だからこれからもな」
「ふわりを大事にしていかないとね」
「ああ、絶対にな」
 父は牛乳を飲みながら話した、そして彼もふわりを大事にしていった、その中のある日のことだった。
「ふわり着いたぞ」
「ワンワン」
 仕事に行く前の朝の散歩を終えてだった、洋介はふわりを家の中に戻した、ふわりは家に戻って足を拭いてもらうとすぐにだった。 
 ケージ自分の家の中に自分から戻って欠伸をして眠りだした、散歩の時に活発に動いたので心地よい眠りに賊座に入ることが出来た。
 そして寝る時は。
 ふわりは洋介に背中を向けた、彼はそれを見てから仕事に向かい。
 仕事から帰ってやはり仕事から帰った父に話した、ふわりはこの時は母が出したおもちゃで遊んでいた。
「背中向けて寝てたぜ、今朝」
「そうか、それはよかった」
 父は息子のその言葉に笑顔で応えた。
「やっとか」
「前も言ったけれど背中向けて寝て何があるんだな」
「背中は犬でも危ない場所なんだ」
 父は息子にこのことから話した。
「それを見せて寝るってことはな」
「危ない場所を預けてるんだな」
「だからな」
 それでというのだ。
「ふわりはそれだけお前を信頼しているんだ」
「そうなったんだな」
「そうだ」
「それはよかったよ」
「そして俺達もだ」
「家族全員をか」
「信じてくれているんだ、だからな」 
 それでとだ、父は息子にさらに言った。
「わかるな」
「ああ、何があってもだな」
「ふわりを裏切らないぞ」
 こう言うのだった。
「それはわかるな」
「そうだよな、裏切ったらな」
「ずっとケージに入れて無視して散歩にも連れて行かないとかな」
「保健所に捨てるとかな」
「あの屑共と同じになりたいか」
 ふわりの前の飼い主だった夫婦の様にというのだ。
「なりたくないだろ」
「絶対にな」
 息子の返事も決まっていた。
「なりたくないさ」
「人間ああなったら人間じゃない」
「屑だな」
「そうだ、屑になりたくないだろ」
「だったらだな」
「この気持ちに応えるんだ」
 ふわりの自分達を信頼しているそれにというのだ。
「あいつ等にも背中を向けて寝たがな」
「そのふわりを裏切った」
「そんな奴等は誰でも平気で裏切って捨てる」
「そうだよな」
「そんな連中になりたくないならな」
「もう絶対にだよな」
「俺達はふわりを裏切らないぞ」
 父の言葉は強いものだった。
「ふわりはずっと俺達の家族だ」
「そうして一緒に暮らしていくな」
「そうだ、これからもずっとな」
 こう言ってだった、父はふわりを見た。見ればふわりはぐっすり寝ている。顔を見ると心から安心しているものだった。


背中を見せて寝ること   完


                   2021・3・29 
次ページ > 目次
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧