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とある地球外生命体が感情を知るまで

作者:えんぜ
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4 としょかん

 昨日のなのはとの遊びが終わる直前、なのはが明日は何か用事があると言ってその日だけ遊べなくなるということを伝えられた。

 伝えるときのなのはの顔は恐らく哀であり、思い切り抱き締められ、目には涙を浮かべており……まるで私ともう二度と会えないと言っているかのような感じであった。

 正直なのはと二度と会えないとなると困るのはこちらであるし、その事を考えると胸がキュッと謎の痛みが起こる。その日だけ、ということであったのでそういうことはなさそうなのだが。

 さて困った。昨日言われたことなのでその日というのは今日である。それはつまり本日はなのはとは遊べなくなるわけだ。遊べなくなるとどうなる? 感情が知れないのだ。

 なのはと遊ぶことは感情を知る上で今のところ効率は一番良いと感じている。それに加え今日『あめ』のようで、『こうえん』に人は集まっておらず、そこで遊ぶ子供を見て学ぶということもできない。

 仮に『はれ』だとしても、何故かそれをしようという感じは起こらないのだが。

 そういったこともあり、現在私は住みかにて呆けていた。道具の手入れをしたいところだが、この道具は人目につかないほうがいいだろう。ある意味私の命に直結するのだから。

「……」

「嬢ちゃん、暇なら図書館に行ってみたらどうだ?」

「……『としょかん』?」

 突然同じ場所に住んでる者から謎の単語を言われ少し考えてしまう。『としょかん』か...何かできるところというのは理解できるが、あまり想像はつかない。

 分からないことを延々と考えるのは効率が悪い。知っている者に聞くのが一番だ。

「……『としょかん』ってなに」

「図書館というのはだな。本が沢山置いてあって、それらが読めるところさ。嬢ちゃんがたまにやる文字の勉強もそこでできるぞ」

「……!」

 この星の文字のことはまだはっきりとしておらず勉強をたまに行っている。とはいってもなのはに聞いたり、ここの者らに聞いたりとし、書き取りもそこらに落ちてる棒を用いて地面に書いてみるとかだ。

 それが出来る場所。それはつまり今までよりも効率が良く文字が学べるということだろう。行くメリットしかない。

 今までの星とは違い、ここの星の文字は何故か法則が分からない。今まではまるで最初から身に付いてたようなものだったのだが...まぁ、今はこちらだ。

「……『としょかん』いく」

「じゃあいくか。こっちだ」

 歩いていく者を後ろから歩いてついていく。

 たまに他の人間がこちらをチラリと見てくるのは少し気になったのだが、前の者は気にしている様子は見受けられなかったためこちらも気にしないことにしておいた。

「ついたぞ。ここが図書館だ」

「……これが『としょかん』」

 例の『としょかん』は他の建造物に比べ圧倒的に大きさを凌駕していた。ここまで大きな施設だとは...予想外だ。

 その者は少し早足で中へと入り、それに私も続く。そして目に入ったのは...圧巻の一言であった。

『ほん』と呼ばれるものが大量に存在し、それが一律に丁寧に並べられている。驚くべきことに、ここらにある『ほん』を人間は読みはしているものの、殆どの者は持ち帰ることなく、元の場所に戻しているのだ。

 人間はきちんと統制されているだということが分かった。興味深い。

 辺りを見渡しているうちにあの者はいつの間にかいくつかの『ほん』を持ち私の方へ向かってくる。

「ほら嬢ちゃん、文字の勉強に良さそうな本見繕ってきたからそっちに座って読んだらどうだ?」

「……ん」

 漢字とやらも含まれてはいるのもも、解説は平仮名とカタカナのみの表記であるためなんとか読める。一つ一つ丁寧に読んでいくとしよう。

「じゃ、俺は色々ぶらついてくるからここで暫く読んでな。時間が経ったら戻ってくる」

「ん」

 さて、読み進めるとしよう──







 ──────────────────────








「……ふぅ」

 全て読み終わってしまった。たまによく分からない表記もあったが概ねだが理解することができた。読めば読むほど興味深いものだな。

 漢字もここに書いていた分程度ならば身に付けれた...と思う。だが、こんなに大きな場所なのだ。まだまだ勉強に使える『ほん』はあるだろう。なのはと遊べない時はここにいくのがよさそうだ。

 しかし少し疲れが出てきた。グッと背を伸ばし固まっていた身体を解すように少しだけ大きく動く。そのとき、目の前に一人の人間が目に映った。

「ぐっ……」

 椅子に車輪がついた何かに腰をかけながら上の『ほん』に手を伸ばす女の子であった。

 立ち上がればよいではないかと思うものの、何かそうできない理由があるのかとも思う。その女の子の顔は怒……いや、諦か? わからない。

 このまま観察してもよい訳だが、仮に私が取るとどのような反応をするのだろうか。予想では取られたということで怒、もしくは哀が急激に強くなると思う。

 よし、実験してみるとしよう。

「んっ……と」

「あ」

 その『ほん』を取ってみる。表面はえっと...読めない。知らない漢字が混じってる。まだ私には読めないということか。

 このまま持っていても仕方ない。とりあえず女の子にそれを与えてみた。

「ん」

「え、いいん?」

「……? いらない?」

「あ、いるいる! 」

 おや、これは予想外。女の子には笑顔が芽生えてしまった。つまり喜か。うむむ、分からなくなってしまった。

「いやー、なかなか取れんかったから助かったわ!」

「……ん」

「わたし、『八神はやて』って言うんやけど、君は?」
「……『あおいちゃん』」

「あおいちゃんか。改めて、ホントにありがとうあおいちゃん! じゃ、またなー!」

「……」

 て、展開が早い……いつの間にか自己の紹介が終わったかと思えば去っていくとは……

 それにしても器用であったなあの女の子……いや、はやてか。あの奇妙な乗り物をいとも容易く操作でき、あまり声を出してはいけないであろうこの『としょかん』で聞き取りやすい声を出せるとは……

 などと思いに耽ってると、あの者がこちらに戻ってきたようで、私に話しかけてきた。

「……何やってんだ? 嬢ちゃん」

「……なんでも」

 そのあとは『ほん』を戻し、住みかへと帰った。なんとなくだが……これから『としょかん』を活用することは多くなりそうだ。沢山色々学ばなくてはな…… 
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