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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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第九十八話 孫策、賭けを考えるのことその八

 しかしだ。今はだった。
「確かな証拠はね」
「そう。証拠はないわ」
「けれど。状況としては」
「完全に否定できないわね」
 孫策の目に剣呑な光が宿る。そしてだった。
 あらためてだ。周瑜にこんなことを言った。
「賭けだけれどね」
「また危険なことをするのね」
「司馬尉は私を嫌っているわね」
「それは確かね」
 間違いないとだ。周瑜も言った。
「もっと言えば曹操も袁紹もね」
「袁術も含めてね。かつて大将軍の下にいた時から」
 その時からだというのだ。
「私達はあの娘には嫌われていたわね」
「政敵。それも直接的な」
「だからこそね」
「司馬尉は司空で終わるつもりはないわ」
「三公の一人では」
 司馬尉の野心をだ。二人はある程度見抜いていた。
「そうね。宰相、若しくは」
「摂政まで目指すわね」
「劉備の椅子までね」
「狙っているわ。だからこそね」
「私達に隙があれば」
「仕掛けてくるわ」
 話す周瑜の目も光る。
「だからこそというのね」
「ええ、かなり危険な賭けだけれど」
 それでもだというのだ。孫策は言うのだった。
「やってみる価値はあるわ」
「全てを確める為に」
「若し。石弓が来たら」
「その場合はね」
「間違いないと思っていいわね」
「ええ、その時はね」
 どうするかというのだ。
「司馬尉は完全にね」
「私達が滅ぼす相手になるわね」
「そういうことね。ただ」
「ただ?」
「賭けは賭けだけれど」
 それでもだとだ。周瑜は孫策に釘を刺したのである。
「それでも死なないようにね」
「そうね。それはね」
 孫策もだ。そのことはわかっていた。確かな顔になりそのうえで周瑜の言葉に頷く。
「私もまだ死ぬ訳にはいかないし」
「貴女にはまだやるべきことはあるわ。それにね」
「それに?」
「貴女に何かあれば悲しむ者がいるわ」
 熱い目で孫策を見ての言葉だった。
「だから。御願いね」
「わかってるわよ。私は絶対に死なないから」
 ここでは優しい微笑みになって話す孫策だった。
「安心してね」
「絶対にね」
 そんな話も為されていた。そしてであった。
 司馬尉達はまた闇の中でだ。こんな話をしていた。
 司馬尉は妹達にだ。こう話していた。
「随分と騒いでくれるわね」
「はい、たかが京観で」
「随分と言うものです」
 妹達もこう姉に返す。
「あんなものはほんの遊戯だというのに」
「些細なことでしかないですが」
「しかしそれでもですね」
「あれだけ騒いでくれるとは」
「予想していたけれどこそばゆいわね」
 その騒ぎも決して悪いものではないとだ。司馬尉は楽しげな笑みを浮かべて話した。
 
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