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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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第九十八話 孫策、賭けを考えるのことその一

                          第九十八話  孫策、賭けを考えるのこと
 司馬尉が山賊達を皆殺しにしその首で京観を築いたことはすぐに都にも伝わった。曹操もその話を聞いてだ。
 血相を変えてだ。報告をした楽進に対して問い返した。
「それは本当なの!?」
「はい、春瞬殿達からの報告です」
「そう、それならね」
 間違いないと。曹操もわかった。
「その通りね」
「しかしです」
 楽進もだ。顔を驚いたものにさせてだ。己の前に座る曹操に対して述べる。
「まさか。京観なぞ」
「私も実際にしたというのはね」
「はじめてですか」
「ええ、はじめて聞いたわ」
 曹操もだ。それははじめてだというのだ。
「今の乱れている世でも」
「そこまでする方は」
「いなかったわ。確かに項羽は敵の多くの者を生き埋めにしたけれど」
 それでもだというのだ。
「京観までは」
「築いてはいませんでしたか」
「確かね」
 こう楽進に話すのだった。
「覚えがないわ」
「しかし司馬尉殿はですか」
「それをあえてしたわ」
 曹操の顔は顰められたままだった。
「恐ろしいことにね」
「華琳様から見てもですか」
「ええ。どうやらあの女」
 蒼白になった顔の唇を強く噛み締めてだ。曹操は言った。
「考えていたよりも遥かに恐ろしい女の様ね」
「私もです」
 楽進もだ。こう言った。
「あの様なことをするとは」
「考えていなかったわね」
「想像もしませんでした」
「私もよ。おそらく誰もがそうよ」
「そうですか。誰もがですか」
「あの娘が都から帰ったら」
 どうするか。曹操はもうそのことを考えていた。
「問い詰めるわ。劉備や麗羽達と一緒にね」
 そうすることを決めたのである。
 楽進は曹操に司馬尉のことを報告してからだ。彼女の前を退いた。
 そのうえで曹操の屋敷から出て茶店に入った。そこにだ。
 李典と于禁が来てだ。晴れない顔で声をかけてきた。
「ああ、そこにおったか」
「少し探したの」
「そうか」
 楽進は強張った顔で二人に返した。
「華琳様のところに行っていた」
「あのことでやな」
「そうよね」
「そうだ。信じられない話だ」
 茶を片手にだ。また二人に述べた。
「京観を築くか」
「普通そんなんせんで」
「はじめて聞いたの」  
 二人もだ。こう言うのだった。
「皆殺しにしてその首で門築くなんてな」
「やり過ぎなの」
「しかし司馬尉殿はそれを平然とされた」
 楽進はこのことを指摘する。
「やはりこれは」
「あの人普通ちゃうで」
「人を殺すことを楽しんでるの」
「おそらくな」
 楽進は于禁のその言葉に頷いた。三人は卓を囲んで茶を飲みはじめている。それ自体はいつもと変わらないが表情が違っていた。
 それでだ。その顔で話をするのだった。
「その様な方か」
「なあ、これめっちゃやばいで」
 李典も言う。
「あの人三公やしな」
「それだけの力があるな」
「また何かあればなの」
 于禁にもいつもの少女の屈託のなさがない。
 
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