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おっちょこちょいのかよちゃん

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130 共闘の約束

 
前書き
《前回》
 かよ子はりえと杉山を久々に顔を合わせる。夏休み以来の接触となった二人だったが、大野と喧嘩した事についての問題の解決にもならずに二人はまた喧嘩してしまう。杉山は元の日常を戻せても何も変われない事に辛く考え続けるのだった!! 

 
 大野は自分が持っている草の石、そして嘗て杉山が持っていてかよ子が自分に持っていて欲しいと頼んだ雷の石を見ていた。
(でも、あいつは俺がいなくたって大将だってそう言ったんだ・・・。こんなの思い出の品にしろって事なのかよ・・・)
 その時、母が入って来た。
「けんいち、山田さんから電話よ」
「山田から?」
 大野は電話に出てみる。
「もしもし」
『あ、大野君?山田だけど』
「どうしたんだよ?」
『えっと、夏休みに会った安藤りえちゃんって子、覚えてる?』
「え?ああ、どうかしたのか?」
『今、ウチに遊びに来てるんだ。大野君もし暇だったら一緒に遊ばない?』
「ああ、そうだな・・・。行ってみるよ」
『ありがとう。待ってるよ』
 大野は電話を切った。
(安藤りえか・・・。そういえばあいつ、夏休みに来た時、杉山と喧嘩してたっけな・・・)
 大野は夏休みの事を思い出しながらかよ子の家へと向かった。

 かよ子はりえの他、まる子にたまえを呼んでいた。
「まるちゃん、たまちゃん、久しぶりねっ!」
「うん、アタシもまさかりえちゃんとまた会えるなんて夢にも思わなかったよお~」
「私も」
「うん」
 まる子とたまえは再会を喜んだ。大野への電話を終えたかよ子が部屋に入って来た。
「今、電話で大野君呼んだよ。あ、そうだ、りえちゃんは知らないと思うけど、長山君って男子も呼んでみたよ」
「え?どうして長山君を~?」
「長山君も私の杖とかりえちゃんの杯とか色々調べててくれてたし、会っておいた方がいいかなって思ってね」
「そうね、是非会いたいわ」
 りえは否定しなかった。そして皆は大野と長山が来るのを待つのであった。

 冬田は自分がコレクションしているシールを買っていた。なおそのシールは「変な顔シール」と言って時にはクラスメイトにも配っていた(嬉しがっている人は皆無なのだが本人はその事には全く気付いていない)。冬田は帰ろうとする途中、とある男子の姿を発見した。
(あ、あれ、大野君!?)
 冬田は慌てて確認する。間違いなく己の後ろ姿だった。
(大野君、どこへ行くのかしらあ・・・?)
 冬田はこっそり大野の跡を追うのだった。そして追跡すると共に大野はとある家に入って行った。そこはクラスメイトの山田かよ子の家だった。
(大野くうん、なんで山田さんの家にい・・・!?)
 冬田はもしかしたら大野がかよ子に恋でもしたのかと邪推した。

「こんにちは」
「あら、大野君」
 かよ子の母は大野が家に来たために出迎えた。
「かよ子は二階にいるわよ」
「はい」
 大野はかよ子の母に連れられてかよ子の部屋へ向かった。
「かよ子、大野君来たわよ」
「よっ!」
「あ、大野君」
「久しぶりねっ」
「ああ、夏休み以来だな」
 大野は東京の少女との再会を喜んだ。

 冬田は一進一退していた。大野はかよ子の家で一体何をしているのかと。その時、長山が現れた。
「あれ、冬田じゃないか」
「な、長山くうん・・・」
 冬田は今にも泣きそうな顔だった。
「一体どうしたんだい?」
「大野君が山田さんの家に入って行ったのお・・・。もしかして山田さあん、大野君の事が好きになったんじゃ・・・」
「いや、違うよ、山田は東京の友達が遊びに来てるから呼んだんだよ。僕も呼ばれているんだ。その友達は異世界の杯を持ってるんだって」
「杯い?」
「うん、異世界の道具で山田の杖と同じくらいの強さを持ってるんだって」
「そうなのお?なら私も行くわあ!お願い、私も一緒に行っていい!?」
「う、うん、いいんじゃないか・・・?」
 長山は冬田の圧力に押された。長山は冬田を連れてかよ子の家にお邪魔する羽目となった。
「こんにちは」
「あら、長山君、こんにちは」
「こんにちはあ・・・」
「あら、貴女は確か冬田さんだったわね」
「東京から来た友達が来たって聞いてきたのですが」
「ええ、そうよ。上がって」
 長山と冬田はかよ子の母に連れられてかよ子の部屋へと向かう。
「かよ子、長山君来たわよ。あと、冬田さんも来てたわ」
「え?冬田さんも?」
 かよ子にとって冬田が来たのは予想外だった。
「やあ、山田。途中で冬田と会って連れてって欲しいって言われてさ、連れて来たよ」
「こ、こんにちはあ・・・」
 冬田はかよ子の部屋を見る。その場に大野はいた。まる子とたまえもいる。だが、冬田は大野の隣にもう一人、知らない少女がいた。
(こ、この子お・・・)
 冬田はまさかこの女子が大野と付き合っているのではないかと邪推した。
「い、いやあ、大野くうん!!」
 冬田はその場で泣いてしまった。
「ちょ、ふ、冬田さん、泣かないでよ!」
「だってなんで大野君が知らない女の子といるのよお!これって恋なのお!?うあああん!!」
 冬田は泣き喚く。かよ子や長山達はどうしようとあたふたした。りえはその急に泣き出した子を見て、訳が分からなくなった。
「はあ?冬田、お前、何言ってんだ?」
 大野が呆れた。
「・・・え?」
「冬田さん、この子は東京から来た友達だよ。別に大野君と付き合ってるわけじゃないよ」
「そ、そうだったのお・・・?」
 冬田は泣き止んだ。かよ子はりえに二人の紹介をする。
「りえちゃん、急にごめんね。こちらは長山治君。物知りな男子だよ。で、こっちは冬田美鈴さん。大野君が好きなんだ」
「初めまして、安藤りえです。宜しくね」
「宜しく」
「宜しくう・・・」
 りえと長山、そして冬田はお互い挨拶した。りえは自身が持っている杯の説明を長山と冬田に行った。
「それで、これで何か物を入れると、その精霊が出てくるの。例えば火を入れたら炎の精霊が、水を入れたら水の精霊が出てくるの。これで赤軍とか異世界の敵とかと闘ってきたのよ」
「それがか」
「凄い道具ねえ」
「そうだ、皆、こんな手紙来たかしら?」
 りえは一枚の紙を皆に見せた。フローレンスとイマヌエルからの手紙であり、異世界に来て欲しいという手紙だった。
「あ、俺にも来たぜ!」
「私も来たわあ」
「僕もだよ」
「アタシにも来た来た」
 大野、冬田、長山、まる子は肯定した。
「ごめん、私、貰ってないんだ・・・。それになんて書いてあるの?」
「ええ、たまちゃん、読めないのお!?」
 まる子は驚いた。
「ごめんね、まるちゃん」
「そっか、たまちゃんは異能の能力(ちから)ってのを持っていないのね」
「あ、そうそう、俺達はこういう石を持ってるんだ。さくらも出せよ」
「あ、うん・・・」
 大野とまる子は石を出した。
「俺のは草の石で植物を操ったりする事ができるんだ。さくらのは炎の石で火とかを操る事ができるんだぜ。他にも俺達の仲間でブー太郎って奴がいてな、そいつは水の石を持っていて水を操る事ができるんだぜ」
「凄いわね。杉山君が持ってる石みたいね」
 りえは杉山の名を出すと大野はムッとした。
(あ、大野君、傷ついちゃったかな・・・?)
 かよ子は慮った。
「ああ。まあ、そうだな」
 大野は感情を抑えようとした。
「僕はこの眼鏡を貰ったよ。神通力が使えるんだ」
 長山は自分が御穂津姫から貰い、名古屋での戦いに使用した道具を説明した。
「私はこれよお、フローレンスさんって人から貰った羽根で空を飛べるのお~」
「フローレンスさん・・・、フローレンスさんに会った事あるのっ?」
「ええ、そうよお~」
「私の東京の友達にもフローレンスさんから貰った道具を持っているの。今度異世界での戦いに行く予定だからもしかしたら私達の友達にも会えるかもしれないわね」
「そ、そうだね。あ、それからね、私達の隣町の学校にいる子にも異世界の道具を持ってる子がいるんだ。その子達にもりえちゃんを会わせられたらいいね」
「へえ、手紙にも書いてあったけど、そういう人沢山いるのねっ」
「でも行くのアタシゃめんどいなあ~」
「さくら、バカ言ってんじゃねえよ。行く行かないとかいう次元の話じゃねえだろ」
「そうよお、私達は元の日常を取り戻すのよお!ねえ、大野君!」
 冬田は急に大野の肩を持つつもりでまる子を批判した。
「え?ああ」
 大野はわずかに困惑した。
(この冬田さんって子、大野君が好きなのね・・・)
 りえは冬田が自分とはまた違う恋をしていると感じた。それに対して自分は杉山に対してどうして素直になりきれず、喧嘩になってしまうのかと気になっていた。

 その後、かよ子達はお菓子を食べたりして過ごした。そして帰る時間となった。
「皆、今日はありがとう。私は明日、東京に帰るわ」
「そっか、また学校始まるもんね」
「前もそうだったけど見送りは要らないわ。異世界で会おうね。そして一緒に戦いましょうっ!」
「うん、僕らも約束するよ!」
「うん、じゃあね~」
 皆は帰って行く。なお、冬田はりえに変な顔シールを友達の証としてあげたが、りえは微妙な反応だった。一方、かよ子は杉山とりえを引き合わせた時、結局何の結果も得られなかった事が気がかりなのであった。
(杉山君、異世界の戦いに来てくれるのかな・・・?) 
 

 
後書き
次回は・・・
「それぞれの気持ち」
 りえに家族は東京へ帰る為、羽柴家の車で静岡駅まで届けて貰う事になった。三河口はりえに杉山と会ったという事を確認する。そして三河口やりえは何を思うのか・・・。
 
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