八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第三百六話 イルミネーションの前でその十六
「プライドがないならね」
「恰好ないわね」
「プライドがあるのと尊大とかふんぞり返ってるのは違うからね」
「プライドは確かなものよね」
「それで尊大とかはね」
そういうのはだ。
「言うなら虚勢でね」
「何でもないわよね」
「そういうもので本当のプライドじゃないから」
それでだ。
「そういうのしかない人はね」
「恰好悪いのね」
「プライドは確かな自信があってだから」
そのうえでだ。
「あるものだからね」
「それでよね」
「あっていいけれど」
「それでもよね」
「ふんぞり返ってるだけだと」
それこそだ。
「簡単に崩れてね、崩れたらね」
「もうそれでよね」
「恥も外聞もなくなるから」
「それで恰好悪いのよね」
「そんなものだよ、本当に恰好よくなりたいなら」
「内面ってことね」
「それがどうかだよ、気障でもね」
例えそうでもだ。
「内面があったらね」
「恰好いいのよね」
「気障ぶってるのはわかってるからいいけれど」
それをしている人がだ。
「気障も内面があったら、例えば痩せ我慢でも己を保ってね」
「しっかりしていたら」
「どんな状況でもね」
例え絶体絶命の時でもだ、人間生きているともうこれはどうしようもないとか駄目だという時だってある。
けれどその時こそだ、どうかなのだ。
「己を保つとね」
「恰好がつくわよね」
「親父はどんな時も自分は持ってるから」
「暴力を振るわなくて」
「家を大事にしてね」
そうしてだ。
「ギャンブルも麻薬もしなくてね」
「相手がいる人とは遊ばない」
「そうしたことは守るからね」
それこそ絶対にだ。
「格好良くてね」
「嫌われてないのね」
「ただ尊大なだけの人なんて」
もうそれこそだ。
「格好良い筈がないよ」
「中身がないから」
「そうだよ、だから僕もね」
親父のあの破天荒さは絶対に真似出来ないしするつもりもない。親父は親父で僕は僕だからだ。親子でも違う人間だからだ。
「内面を磨いていかないとね」
「恰好良くなる為に」
「僕は格好良くなるつもりはないけれど」
それでもだ。
「やっぱり内面はいいに限るよね」
「それはそうね」
「だから磨かないとね」
自分の内面、それをだ。
「本当にね」
「それは誰でもっていうのね」
「そう思うよ」
こう香織さんに話した、そうした話をしていると。
遂にイルミネーションが見えてきた、光の絵画が僕達の前に冬の冷たく澄んだ夜の世界の中で出て来た。
第三百六話 完
2020・11・1
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