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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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第九十七話 司馬尉、京観を造るのことその一

                          第九十七話  司馬尉、京観を造るのこと 
 司馬尉のことはだ。相変わらず警戒されていた。
 夏侯姉妹にしてもだ。都にある曹操の屋敷の中で顔を顰めさせてこう話していた。
「ここまで怪しい話が多いとだ」
「気になるか、姉者も」
「ならない筈がない」
 夏侯惇は少しムキになったような口調で妹に返した。
「謎が多いにも程があるぞ」
「そうだな。ここまで謎が多いとな」
「光武帝の頃から三公を出している」
 夏侯惇は今度はこのことを話した。
「そこまでの名門なのはわかるが」
「言いたいことはわかっている」
 夏侯淵も怪しむ顔で返す。
「氏素性が知れぬからな」
「そうだ。秋蘭も司馬家に入ったことはあるか?」
「いや、ない」
 すぐにだ。夏侯淵も答える。
「誰も入ったことがない」
「あの屋敷には誰も呼ばれていないが」
「考えてみればこれも奇妙なことだな」
「そうだ。普通は三公ともなればだ」
 どうなるかというのだ。その場合は。
「何かあると多くの者を呼ぶものだが」
「司馬家にはそうしたことはない」
「それも全くだ」
 夏侯惇はいささかうわずった声で妹に話していく。
「だからあの家の中のこともだ」
「誰も一切知らない」
「我等が開く宴にも出て来ることもなかった」
 宴を開くことも出ることもしないというのだ。
「まさに謎の者だ」
「まして我等の中には宴好きな者が多いしな」
「私も大好きだ」
 他ならぬだ。夏侯惇もそうである。彼女は無類の酒好きで大食でもあるのだ。
「特に華琳様のお料理を召し上がるのはな」
「そうだな。しかしまことにだ」
「司馬尉、何者だ?」
「私も色々と半蔵殿達と話しているわ」
「忍の者でもわかりかねるか」
「全くだ。影一つ見つからない」
「影といえばです」
 ここでだ。程昱が出て来た。
「影を隠す為には」
「闇の中に入ればいいな」
 夏侯淵は彼女のその言葉にすぐに返した。
「それで完全に見えなくなる」
「はい。司馬尉さんの影もです」
「闇の中にあるからか」
「見えないのだな」
「そう思います。とにかく本当に何もわかりません」
 程昱もその眉を顰めさせ小声になって話す。
「影が闇の中に入ったみたいに」
「怪しい奴だ」
 夏侯惇はたまりかねた様にして述べた。
「それだけはわかるのだがな」
「そしてです」
 程昱の目が。今度は警戒するものになった。
 そしてその警戒する目でだ。こう話した。
「私達の味方ではないでしょう」
「それはおかしなことだな」
 夏侯惇はさらにいぶかしむ顔になってだ。程昱のその言葉に応えた。
「私達は共に何進大将軍の下にいたが」
「同じ陣営にいてもです」
 どうかとだ。程昱はまた話す。
「敵同士であることはあります」
「そうだな。華琳様にしても麗羽殿にしても」
 夏侯淵は二人と司馬尉のかつての関係を思い出しながら話した。
「あの御仁のことは常に嫌っておられる」
「そういうことです。同じ陣営においても対立はありますから」
「同じ大将軍の配下であったとしてもか」
「そう。味方とは限らないのです」
「そしてです」
 もう一人来た。郭嘉だ。
 
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