レーヴァティン
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第百九十三話 武蔵入りその九
「そうする」
「そうっちゃな」
「そうだ、そしてだ」
英雄はさらに言った。
「儲けてもらいな」
「幕府もっちゃな」
「儲ける」
「それがいい、収益がないとな」
幸正も言ってきた。
「幕府もやっていけない」
「収益即ち金がないとな」
「そういうことだ」
「俺達は幕府の統治システムを手本にしているが」
「財政までそうするとな」
「上手く動けないな」
「江戸幕府は確かに統治システムは優れていた」
英雄も言うことだった。
「柔軟かつ堅固でな」
「隅から隅まで届く様なものだった」
「そうだな、だが」
それでもというのだ、英雄は江戸幕府の統治システムは高く評価していたが財政システムについてはこう言うのだった。
「あの財政システムはな」
「手本にしてはならないな」
「当初はよかった」
幕府を開いてからはというのだ。
「それから百年でもうだ」
「脆弱なものになっていた」
「そして幕末までだ」
およそ一世紀半程はだ。
「ほぼ常に財政危機の状況にあった」
「そうだったな」
「だからだ」
それ故にというのだ。
「あの財政システムはだ」
「とても手本に出来ないな」
「泰平の世で経済が発展すればな」
「年貢だけでなくだ」
そしてその年貢の収穫も上昇していていった、ただ幕府はあえて年貢の率を低くして諸藩の手本にしていたのだ。
「他の作物の収益にだ」
「商業についてもだな」
「税とする、しかも低くともだ」
「確かにだな」
「予算を確保しないとだ」
さもなければというのだ。
「駄目だ」
「そうだな、だからだ」
それ故にというのだ。
「俺はそちらはだ」
「年貢に加えてだな」
「米以外の作物の利益にな」
「商業や漁業からもだな」
「税を得る、そしてだ」
そのうえでというのだ。
「幕府を動かしていく」
「税もないとな」
それもというのだ。
「動かないからな」
「幕府の弱点だったわね」
奈央も言ってきた。
「まさに」
「財政のことはな」
「もうそのせいで改革をやっていたわね」
享保、寛政そして天保のそれである。
「引き締めて」
「緊縮財政だな」
「そしてそれが終わるとね」
「財布を緩めていたな」
「それの繰り返しだったわね」
これは松平正之のインフラ整備から徳川綱吉の大盤振る舞いがあり新井白石が引き締めたことからはじまるだろうか。
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