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戦国異伝供書

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第百二十六話 推挙その一

               第百二十六話  推挙
 義久が三国の守護の地位を信長に認めてもらうべく使者を送ろうと考えているとだった、その彼のところに。
 弟達が来てこんなことを言ってきた。
「三国の国人達からだけでなく」
「肥後や島原の国人達も言ってきています」
「そして筑後の者達からも」
 こう義久に言うのだった。
「是非九州探題にと」
「大友家は衰える一方です」
「そして龍造寺家も力が弱まりました」
「九州を取り仕切ることが出来るのは当家のみ」
「そうなったとのことなので」
「そうした声が日増しに上がっています」
 そうした状況だというのだ。
「大友家、龍造寺家からこちらにつく者も出ています」
「両家はもう力がありませぬ」
「そうした状況なので」
「左様か、まさかな」
 義久は弟達の言葉に腕を組んで述べた。
「当家に九州探題とはな」
「代々渋川家が務めていてです」
「今は大友殿ですが」
「その大友殿があの有様ですので」
 耳川の戦いで敗れていこう落ちる一方でというのだ。
「だからとです」
「国人達が言ってきています」
「当家にとです」
「そうか、しかし大友家は幕府より拝領してな」
 九州探題の職をというのだ。
「大友家は織田家と懇意であるしな」
「はい、確かに」
 義弘が応えた。
「幕府は倒れましたが織田家がありまする」
「今はな」
「事実上織田家が公方です」
 天下人であってというのだ。
「その織田家と懇意ならば」
「それならばな」
「確かにこれ以上ことを構えることはよくありませぬが」
「それでもか」
「はい、九州の国人達の多くの推挙で」
 それでというのだ。
「それを受ける形なので」
「それに就くこともか」
「よいかと、ですから」
「これより九州探題を目指してか」
「動いてもよいかと」
「それがしもそう思いまする」
 家久は強い声で言った。
「ここはです」
「九州探題になるべきか」
「はい、是非です」
「動いてか」
「そしてです」
「九州探題になるべきか」
「三国の守護だけでなくです」
 歳久も言ってきた。
「ここはです」
「九州探題もか」
「目指されては、ですから」
「今よりか」
「大友家も龍造寺家も敵ではなくなりましたし」
「ここはか」
「はい」
 まさにというのだ。 
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