戦国異伝供書
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第百二十五話 誘い出しその十一
「そうした家であるな」
「それは昔よりですな」
「当家は質実剛健」
「薩摩隼人は武に生きる者達です」
「武に戦は不要」
「そうですからな」
「そうじゃ」
だからだというのだ。
「それでじゃ」
「今もですな」
「贅沢はせず」
「そうしてですな」
「こうしてじゃ」
今の様にというのだ。
「贅沢なものは出さぬ」
「左様ですな」
「しかしそれでも楽しめますな」
「そうした宴でも」
「うむ、しかし今はな」
この度の宴はというのだ。
「こうしてじゃ」
「贅沢にですな」
「そうしていますな」
「刺身に豚だけでなく」
「様々なものを出して」
「それだけのことであった」
そう考えるからだというのだ。
「大友家との戦そして龍造寺家との戦に勝ったことはな」
「ですな、確かに」
「これでもう当家を脅かす家はなくなった」
「だからですな」
「特別にな」
それだけの勝ちだったからだというのだ、どちらの戦も。
「祝ってじゃ、ではな」
「これよりですな」
「酒をふんだんに飲み」
「馳走も食し」
「そして楽しむのですね」
「そうしてじゃ」
そのうえでというのだ。
「後は織田殿にお話をして」
「三国の守護を認めて頂き」
「その天下の政に従う」
「そうしますな」
「うむ」
こう答えた。
「そう考えおる、では落ち着けばな」
「その時にですな」
「都に使者を送り」
「そうしてですな」
「織田殿から認めて頂きますな」
「そうする」
こう言ってそうしてだった。
義久は信長に使者を送ることも決めた、だがそれよりも前に事態は動くのだった。
第百二十五話 完
2020・12・8
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