MOONDREAMER:第二章~
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第三章 リベン珠
第18話 幻想ロボット対戦外伝 すごいよ! サグメさん2/3
イシンの能力によりサグメが自由に話せるようになった事で、彼女の心境を大きく変化させた。その事を踏まえて、鈴仙は今後イシンと関わっていくべきだろうと考えるのだった。かつて同じ『レイセン』を名乗った者同士という事や、自分にはないものを持っているが故に得られるものがあるだろうと感じての事だ。
それは、今後の方針で考える事として、今はこの勝負を抜かりなく行う事が先決だと鈴仙は思った。それには、イシンの影響で様相がうって変わってしまったサグメに対処出来なければならないだろう。
ここまで思って鈴仙は一つの結論に達した。サグメにとってのイレギュラーがイシンならば、自分にとっては誰であるかと。
「勇美さん、この勝負、あなたの存在が重要になってくるでしょうから頼みましたよ」
それが答えであった。この戦いにおいてかつての自分の元には存在しなかったこの黒銀勇美が欠かせないものとなってくるだろうと鈴仙は見切りを付けたのである。
「う~ん、何だか重荷を任されてしまった気分ですけど……分かりました、力になりましょう!」
「そうこなくてはですね。頼みましたよ」
鈴仙と勇美はそう言い合って笑みを交わしたのであった。
「では、また戦いに集中しましょう。サグメ様の攻撃はまだ始まったばかりですから、気を引き締めていきますよ」
「分かりました。後イシンの同行にも注意しないといけないですよね。いつサグメさんのサポートに回って来るか分かりませんし」
「そういう事ね」
そう言葉を交わして、二人は目の前の相手へと再び意識を向けたのであった。すると、その相手から声が掛かって来る。
『話し合いはそこまででよろしいですか? この勝負も興が乗ってきたので、ここから攻めさせてもらいますよ』
サグメがそう言うと、また彼女は懐から新たなるスペルカードを取り出した。
『【玉符「穢身探知型機雷」】』
そのスペル宣言を受けて、サグメの周りにある物が浮かび上がったのである。そして、それは勇美達が見知った物であった。
「あ、いつぞやの分子構造模型!」
そう勇美が指摘する通りであった。ここまで来る際の夢の世界の通路で幾度となく出くわした謎の歪な形の機械。それがサグメの命を受けてこの場に現れたのである。
「つまり、あれはサグメさんが送り込んだ物だったという事ですね?」
「そういう事です、来ますから気を付けて下さいね」
対して、持ち主の事を知っていた鈴仙は幾分落ち着いた態度で迎え打っていた。そして、当然その機能も知っているのである。
「名前の通り、『穢れ』に反応して攻めて来ますから用心して下さい」
「まるで温度探知みたいな機能を思い出しますね。あ、あれ鈴仙さんにも対応するのですか?」
「ええ、私は地上に移り住んだ事で穢れをその身に持ってしまいましたからね。私が探知されないのを期待しましたか?」
「ちょっとですね。でも、それじゃあ弾幕ごっこになりませんし、仕方ないですね」
そもそも鈴仙が探知されないのならサグメはこれを使いはしないだろうと、勇美はそう思うのだった。
一方で、サグメがスペルカード宣言により現出させたそれは、完全なる機械なのであり、生き物ではないのだ。故にこの場に呼び出されて事により、自動でその役割を果たすべく機能し始めたのである。
彼等は迷う事なく、その組み込まれたプログラム通りに、自分達の目的を果たすべく行動を開始し始めたのであった。
『こうなっては私にも止められませんから、どこまで対処出来ますかね?』
尚もサグメは楽しそうにそう言った。
「来ましたね」
対して勇美も、どこか心躍るような気持ちでそれを迎え撃ったのである。相手が楽しそうに弾幕ごっこに挑む様を受けては、自分も楽しく思えて来るものがあるのだ。
勇美はそのまま手に持った星の機関銃の引き金を引いたのである。それにより彼女達に向かって来た機雷は次々と撃ち落とされて爆散していったのだった。
「どうですか? ここまで来る際にその機械は何回か撃ち落としていますから、対処はお茶の子さいさいって訳ですよ♪」
余裕の態度で勇美はそう言ってのけたのである。既に攻略している手段なら、何も恐れる事はないのである。
『これは失礼しました。では次は少し新しい物をご用意させて頂きます。試作型なので何とぞご理解をお願いします』
そう言ってサグメは続けてスペルカードを取り出して宣言する。
『【玉符「穢身探知型機雷 改」】』
そしてサグメの周りにまたも歪な形の機械が現出する。しかも、その様相は先程の物とはうって変わっていたのだった。
その外観は、今までの分子構造模型のような幾何学的な外見ではなく、ゼリー状の球体の中に赤い核が存在する、原生生物を果てしなく拡大したかのような様相であったのである。当然これには勇美も呆気に取られる。
「あれが……、『機械』何ですか……?」
「ええ、私も初めて見るわ……」
鈴仙の方も驚いているようだ。話には聞いた事はあるが、こうして目の前にするのはこれが初であるからだった。
だが、見た目が生物然としていても、所詮は同じ機雷。そう思って勇美は再び敵の殲滅を計ろうとする。
「何にせよまたやっつければいいんでしょう?」
「ちょっと待ちなさい!」
意気揚々と増援の対処へと意識を燃やす勇美に対して、ここで鈴仙は『待った』を掛けたのである。
「何ですか鈴仙さん? あの時私を引きずってパンツが見えそうになった事を忘れてはいませんよ!?」
「しょちゅうノーパンになろうとしてるのに、パンツ見えそうになった事起こってるの!?」
鈴仙はその相方の理不尽な主張に頭がこんがらがりそうになる。
「ええ、それはパンツじゃないから恥ずかしくないですからね?」
「その言葉をリアルで言う人初めて見ました!?」
勇美から次々と出てくる迷台詞に鈴仙は翻弄されるが、漸くここで意識を戻す。
「まあ、取り敢えずですね。サグメ様は新しい攻撃を仕掛けてきたのですから、何が起こるか分かりません。ですから、ここは慎重に事を起こすべきです」
「成る程……」
それを聞いて勇美は納得した。だが、心の内では引きずられてパンツが見えそうになった事については納得してはいなかった。
「でも、一体どうするんですか?」
「それは、私に任せて下さいね」
言うと、鈴仙は自前の自慢の銃であるルナティックガンの銃口を、宙を漂う原生生物然とした機雷の一つへと向け、そして引き金を引いたのだ。
そして、当然のように弾丸型のエネルギーが発射される。しかし、いつもと違うのはその弾丸が僅か一つであった事である。
その一つの弾丸は寸分違わぬ狙いの元、見事に機雷に命中したのだった。これで機雷の一つは爆散して砕けるだろう……そう思われた。
だが、実際はそうはならなかったのである。弾丸が機雷の中へとめり込むと、その衝撃で機雷はプルンと震え、そして二つに分裂したのであった。
そして、ものの見事にそこには『二つ』の機雷が出来上がっていたのだ。その両方に核があり、蠢いている事から二つとも機雷として機能している事が窺える。
「こういうような事が起こるだろうと思っていたから、慎重にしようって言ったのよ」
「グッジョブです鈴仙さん♪」
見事に危機を回避に導いてくれた鈴仙に勇美は心から感謝するのだった。鈴仙の制止がなければ、今頃勇美が機関銃でこの『分裂機雷』を打ち抜き、敵の狙い通りに数を増やさせてしまっていた事だろう。
『よく見抜きましたね』
サグメは、その快挙をこなした鈴仙に本心から称賛の言葉を掛けた。
「ええ、これでも伊達に依姫様の元で訓練は受けていませんから、相手の動きはある程度読めるという訳ですよ」
そう言いながら鈴仙は、自ら依姫の名を出した事で複雑な心境になっていた。彼女に対しては当然色々思う所があるからである。
だが、そういう迷いは今はすべきではないだろう。鈴仙は今は依姫のお陰で危機を回避出来た自分に素直に感謝するのだった。
『でも、どうするのですか? この機雷が分裂する事が分かったからと言って、それで対処出来る事には繋がりませんよ。攻撃すれば分裂し、穢れた身で触れれば爆発するこれにどう立ち向かいますか?』
サグメはそう流暢に自分の優位を語ったのである。やはり彼女の本質はお喋りなようである。
「その通りですね。さてどうしたものか……」
「先生、いい案があります。寧ろ『私にいい考えがある』ですね♪」
「いや、言い直さなくていいですよ……」
鈴仙はそれは悪手だと思った。逆に言い直した事の方が、碌な事態を招かないような言い回しであったからだ。
「で、どうしますか?」
「それは、サグメさんに聞かれるとまずいので、耳貸して下さい」
「どさくさに紛れて私の耳を弄ばないならですね」
「……チッ」
鈴仙は『舌打ち!?』と思った。やっぱりこの小娘は色々碌な事をしない存在だと鈴仙は痛感するのだった。
「まあ、冗談ですよ」
「冗談で言ったなら舌打ちは出ませんよね!?」
そう鈴仙は釘を刺しておく事にした。彼女の主張はもっともだろう。
だが、これ以上勇美は悪ノリする気はなかったようで、彼女は鈴仙の耳元で敵側に聞こえないように作戦を伝えるのだった。
「成る程、それは妙案ですね」
「そういう事ですよ」
作戦が行き渡り準備万端となった二人は、再度サグメとその歪な機雷へと向き直る。
『何を話し合ったか知りませんが、この隙のない布陣の機雷からそう易々と逃れるとは思わない事ですよ』
そう言ってサグメは右手で敵陣を指さし、原生生物の群れに迎撃指令を送った。
その指令に従順に従い、機雷達は一斉に勇美達の元へと突撃していったのだった。
だが、ここで勇美は慌てずにある神へと呼び掛けるたのである。一体その神は誰であろうか? その答えはすぐに分かる事となる。
「『伊豆能売』様、この危機の回避にどうか力をお貸し下さい」
『!?』
その神の名を聞いてサグメは驚いたようだ。何故なら彼女もその神の活躍は知っていたからである。
それは他でもない、博麗の巫女が月で穢れをばら蒔くという暴挙に出た際にそれを浄化し事なきを得たというのは依姫の口止めで月の民や他の賢者は知らないのだが、サグメにだけは信頼してその事実を伝えてあったのである。
その伊豆能売の重要性は、そうして一部であるが月の者に理解されているという事だ。そんななくてはならなかった神の力をこの人間は一体どのような使い方をしようというのだろうか。
サグメがそう思っている内に、巫女の姿をした世にも珍しい神が勇美の生成した機械の中へとその力を取り込まれていったのだ。
巫女の神を取り込んで、一体どういう姿になるのか。そう思いながらサグメはその一部始終を見守っていた。
そして、出来上がった機械の姿を見て……。
「派手……」
と、思わず呟くしかなかったのである。
その姿は、海外のドラマか何かに登場する『マダム』そのものであったからだ。何故清楚な巫女を取り込んでこのようなマダムになるのかサグメは理解に苦労するのだった。
サグメがそのような苦悩をしている中で、勇美はそのマダムを用いたスペルの宣言をした。
「【健安「浄化の清浄の貴婦人」】♪」
『回りくどい名前だ~っ!』
サグメはそう突っ込んでしまったが、そのツッコミで今回は正しいだろうと心の中で再確認した。
断じて『2がいっぱい~!』の方がいいという事はないだろうし、そのツッコミは適切ではなく、寧ろ此処とは別の世界のレイセンに対して使うべきものだろうと。そもそもこの世界ではレイセンはイシンと改名した訳だし。
閑話休題。ツッコミの事とか、出来上がったのがマダムであるはさておき、問題はこの巫女神の力を取り込んだ機械が一体何をするのかという事である。
そうサグメが思案していると、それは起こったのだ。その機械のマダムは両手を広げると、そこから不可視の波動を放ち始めたのである。見えないもののそれはどこか安心するものがあった。それも、月の住人であるサグメやイシンにとっては一入に感じるのだった。
そして、異変は起こったのである。勇美達目掛けて迷う事なく直進してきた原生生物型の機雷は、ピキピキと音を立ててその場で宙に浮いたまま制止していたのだ。
『!?』
一体何が起こったのか。そうサグメは思案を始めた。
この穢身探知機雷は文字通り、地上に住む者に含まれる穢れに反応して突き進むプログラミングをされた機械である。そして、彼等が誤作動を起こした要因として考えられる事は……。
『あなた達、自分達の『穢れ』を浄化させたのですか?』
「ご名答です。と言っても一時的にですけどね♪」
『……驚きましたよ』
サグメはその事実を突きつけられて素直に驚くのだった。何故ならそのような芸当は月の技術ほどのものを以てしなれば本来は行えないからである。万事に月の民が地上の民を招き入れなければならない時に使う装置、それには月の技術の英知がつぎ込まれている程なのだから。
それを、勇美は神の力を借りたとはいえ、いとも簡単に行ってしまったのだ。それ故のサグメの驚きは計り知れないものだろう。
だが、ここでサグメは冷静に事を思案するのだった。こうして機雷の探知機能を妨害したが、それは悪手だったと。
『穢れをなくして機雷に探知されないという作戦は見事でしたが、それは些か選択ミスだったようですよ』
そう言うとサグメは有無を言わさずに機雷達に合図を送るのだった。
そして、次の瞬間それは起こったのだった。勇美達に接近していた機雷達は、その場で一斉に爆発を起こしたのであった。
『途中で探知を止めても、既にあなた達に機雷は接近していたのですよ? その状態で止めたのは失敗でしたね』
そう言ってサグメは満足気に勇美達を飲み込んでいる爆発を見ていたのだった。
だが、その記述は厳密には間違いなのであった。正しくは、『飲み込んでいると思われた』なのだった。
「いいえ、狙い通りでしたよ♪」
『!?』
そして勇美と鈴仙は気付けばサグメとイシンの背後を取っていたのだった。その事にサグメは驚きつつも、冷静に指摘をする。
『成る程、鈴仙の狂気の瞳の力ですか?』
「その通りですサグメ様。機雷達が爆発する前に、私達の軌道を曲げた、そういう事です」
そう、謙遜の態度を見せつつも、上官の意表を突く事が出来た鈴仙は得意気に言ってのけていた。
「チェックメイトです、サグメ様♪」
そう言って鈴仙は迷う事なく自前の銃をサグメへと向ける。
『……』
対してサグメは無言であった。従来の彼女のイメージの通りに寡黙で思考の読み辛い振る舞いをしていた。
だが、これで勝負あった筈。そう確信しながら鈴仙は引き金を引いた。
サグメ目掛けて寸分違わぬ狙いの元突き進む弾丸。しかし、そこに割って入るものの存在があった。
『【硬玉「穢身探知機雷 鋼式」】』
その宣言の後、新たな機雷が現れてその身で鈴仙が放った弾丸を受け止めたのである。しかも、その機雷はそれにより爆発する事なくさも当然の事のように弾丸を油に飛び込む水の如く弾いてしまったのだ。
「「ええっ!?」」
これには止めを刺そうとした鈴仙も、この作戦を考えた勇美も驚愕してしまったのである。
『作戦は良かったですが、残念でしたね。私とて万事に対する準備というものは怠らないのですから。では!』
言うとサグメを護ったその機雷はそのまま鈴仙と勇美達へと体当たりをしたのであった。
鈴仙の弾丸を防ぐ程の質量を持ったそれである。そのような物で体当たりされたのだから二人は堪ったものでは……ないように思えたのだが。
「勇美さん、助かりましたよ♪」
「ええ、間一髪でしたね」
そう二人はダメージを受けた様子もなく無事な状態であったのである。当然サグメはその光景に目を見張る事となる。
『……これは……?』
「【装甲「シールドパンツァー」】ですよ。危ない所でした」
サグメに答える形で勇美は種明かしをしたのだった。それは勇美を幾度となく護って来た、彼女お得意の防御手段なのである。
『やりますね……』
反撃を防がれたサグメはそう呟くと、今しがた防がれた鋼鉄の機雷を手元に戻して送還するのだった。
そして、状況は互いに振り出しに戻った訳であるが、その前に勇美は聞いておかねばならない事があったのだ。
「しかし、今のどうやったんですか? サグメさんは先程鈴仙さんに対処出来る状態ではなかったし、それにスペル発動の兆しもありませんでしたよ?」
サグメがその質問をされた時、何故かイシンは彼女に目配せをした。それに対してサグメは『いいでしょう』と言葉を返したのである。
その言葉を受けてイシンは了承を得たといった振る舞いの元説明を始めた。
「それはですね、あらかじめ私の能力でサグメ様のスペル発動を『データ化』しておいて、それをこのタイミングで解放したという事ですよ」
「そんな事が……」
イシンのその異質な能力を知って驚く勇美であったが、その気持ちは鈴仙も同じなのであった。
確かに戦闘センスや何やらで自分はイシンよりも優れているという自覚は鈴仙にはある。だが、単純な力では計り得ないものもある事を今思い知らされたのだ。
でも、とそこで鈴仙は思い直した。こちらにも単純な力だけではない『やり手』が存在するのだ。故に心強いのであった。
ともあれ、これから戦いは仕切り直しになるのだ。そんな最中サグメはこう言って来たのである。
『イシン。あれをやりますよ、お前の出番だ!』
「待っていたぜ!」
「「んんっ?」」
敵の二人のやり取りを目にして、勇美と鈴仙は変なものを見ているような感覚に襲われるのだった。そして心の中でツッコミを入れるのだった──あなた達そういうキャラじゃないでしょう、と。
そう鈴仙が心の中でツッコミを入れている中でも、相手の二人は行動を始めたのである。「【揮符「コマンドギア」】」
ここでイシンは万を持して自分の作り上げたスペルカードを発動するのだった。
これこそがイシンの成長の証なのである。こうして彼女もスペルカードを使用するに至れたという証拠なのである。
宣言に伴い、イシンの目の前に大きな歯車型のエネルギーが現出したのだ。
以前イシンがこのスペルを使ったのは、組んで戦った他の玉兎達へ指令を送る為であったが、今回は一体どう出て来るのだろうか。そう勇美は期待と警戒の入り交じった心持ちで身構えていた。
ここで、イシンがサグメに呼び掛ける。
「今です、サグメ様!」
『わかりました』
その呼び掛けにサグメは従い、ここで彼女もスペル発動をする。
それは、先程の穢身探知機雷であった。それにより、再び歪な形の機械が現出される。
だが、今回は直接敵へ攻撃を向ける為に呼び出されたのではなかった。イシンの元で呼び出されたそれらは、その形を次々に変えていったのだ。
変形した機雷はイシンの出したコマンドギアを中心に集まり、そして繋ぎ合わされていった。それにより、歯車を核にした機雷の群れは徐々に何かの形を形成し始めていった。
そして出来たのは……。
「人型……?」
鈴仙がそう呟く通り、無数の機雷から構成されたそれは二足歩行の人間の形をしていたのだった。だが、ここで勇美は言い直す。
「いえ鈴仙さん、これは『ロボット』と言うべき代物ですよ」
それは勇美の言う通りであった。全身が機械で構成された人型の産物、それは創作物でお馴染みの、所謂『ロボット』とでも表現すべきものだったのである。
そのロマン溢れる造型物を作り出したサグメはその物の名を宣言するのだった。
『名付けて【皇玉「マインカイザー」】ですね』
「……」
それを聞いて鈴仙は閉口してしまった。もうサグメの性格はこのようなものだと理解するしかないと腹を括るのだった。
「すごいですよサグメさん! あなたも男のロマンというものを分かっていたのですね♪」
相方もマニアックな趣味をしていた事を鈴仙は思い出した。もう彼女には「あなた達女性ですよね?」というツッコミを入れる心の余裕もなくなっていた。
そんな鈴仙を尻目に、そのロボットは確かにその造型を完成していたのだった。
その外観は1980年代に主流になった、リアルな造型のロボットと例えればいいだろうか。つまり非常にスマートな様相をしていたのである。
そのアニメで稼働するような容姿でありながら抜かりなく悠然と足を踏みしめているのは、サグメとイシンの能力の賜物といった所だろうか。
実際にロボットを造るとなると、バランスを取る為に完全な直立二足歩行形式には出来ないのだ。ASIMOを例に挙げれば分かるだろう。
この光景を見ながら勇美は堂々と言うのだった。
「望む所です」
「……」
鈴仙はどこからツッコんでいいか分からなくなった。「望むな!」と言えばいいのか、そもそも何を望んでいるのか分からなかったのである。
取り敢えず、鈴仙は聞いておく事にする。
「それで勇美さん、これからどうするのですか?」
「勿論、こっちも対抗してブラックカイザーを出します」
「ですよねー」
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