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MOONDREAMER:第二章~

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第三章 リベン珠
  第17話 幻想ロボット対戦外伝 すごいよ! サグメさん1/3

『お待ちなさい』
 その声が豹変した月の都の官邸に鈴仙が今まさに強行突破しようかと考えあぐねていた時に門の向こうから掛かって来たのだった。
「あなたは?」
 聞き慣れない声に、鈴仙は首を傾げながらもそれに答えていた。それに対して声の主は続ける。
「あなたはこの官邸に用があって来たのでしょう? それなら迎え入れるまでです」
「どなたかは存じませんが、いいのですか?」
「ええ、この緊急の状態の月へと赴くとは、あなた方にも事情があるのでしょうから」
 そう言って一旦その声は収まった。そして、その直後に事は起こった。
 門が開き始めたのである。その光景を見ながら鈴仙は固唾を飲んだ。玉兎の身でありながら位の高い人達が集う場所の門を開けさせる事となったのだ。故にその緊張は一入というものだろう。
 対して、勇美はそのどんなゲームでも重厚な雰囲気で以て行われる偉い人の住む場所の門が開かれる光景に、見事に彼女の中二病精神がこれでもかという位に刺激されていたのだが。
 ともあれ、いかにも力や小細工での突破は不可能と言わんばかりの雰囲気を持っていた門はここに開かれたのだった。
 そこにいた人物に対して、鈴仙は迷う事なく声を掛けるのだった。
「やはりサグメ様でしたね?」
 鈴仙に『サグメ様』と呼び掛けられた者は、銀髪に紫のベストといった、服装に関してはそこまで目を引く存在ではなかった。寧ろ、現世でこのような格好をしても特に目立つ事はなく実生活を出来てしまう位の代物である。
 しかし、その『普通』な出で立ちを以てしてもサグメの外観は強烈な印象であったのだ。
 それは、彼女の背中から生える翼……これに尽きる訳である。しかも、二枚きっかり存在せずに片方だけ──つまり『片翼』とでも言うべき異様な外見である。
 これまで様々な幻想の存在を見て来た勇美であったが、このサグメという者には只ならぬものを感じていた。
「鈴仙さん、その方……。月の民なんですか?」
 当然沸き起こってくる相方の疑問に、鈴仙は律儀に答える。
「勇美さんがそう思うのも無理はないですね。察しの通り、この方『稀神サグメ』様は純粋な月の民ではないのですよ。噂では神霊とか鬼とか言われていますけど、実際の所は分かりません……サグメ様、その辺どうなんですか?」
『残念ながらその質問には答えられません』
 謎の多い当人から返ってきた答えはそれであった。何者か判明する事を期待していた勇美は最後まで取っておいたショートケーキのイチゴと取り上げられるかのような極めてやるせない想いを噛み締める事となってしまったのだ。
『その者のご期待に答えられなくて申し訳ないですけど、まずは兎のあなたは確か今八意様の元にいる玉兎ですね』
「はい、地上では鈴仙と名乗っています」
『そして、もう一人の方は人間ですね。こちらの方は私の情報にはありませんね』
「はい、黒銀勇美と言います。もうすぐ15歳になります」
『いや、それは聞いていませんって』
 この状況でそのような自己紹介が必要なものなのかとサグメは脳内でツッコミを入れておくのであった。
 そんな中で鈴仙は気になる事が出てきたのだ。その事を彼女は指摘する。
「サグメ様、あなたがこうして饒舌に話して……いえ『話して』はいませんよね」
 そう、鈴仙が感じていた違和感がそれであったのだ。それだと先程『知らない者の声』と判断してしまったの頷ける。
 結論から言うと、サグメは『口を動かして話して』はいなかったのだ。つまり、彼女は今自分の肉声で言葉を紡いではいないという事だ。
『いい所に気付きましたね、ではその事について説明しましょう。──姿を見せていいですよ』
「「?」」
 突然何を言い出すのだろうと、勇美と鈴仙は同時に首を傾げる。
 その後、門の影に隠れていた者が姿を現したのであった。
「「!」」
 それには二人とも驚いてしまった。──何故なら二人との見知った顔であったからだ。気付けばその者の名前を勇美は口にしていた。
「イシン~♪ お久しぶり~♪ また会えるなんて思ってなかったよ~♪」
 否、口にすると同時にその者──レイセン改めイシン──に抱き付いていたのだった。
「うわっ! ちょっと勇美さん、やめて下さいってば!」
 突然自分の身に降り掛かった災難に、イシンはタジタジになり取り乱してしまう。
「あ、ごめんなさいね……」
 冷静になった勇美は漸くイシンを解放するのだった。そして、改めて彼女の様相を見て勇美は驚いたのだ。
「それにしても見違えたねイシン。格好いいよ」
「……まず最初にその事に気付くべきじゃないですか~?」
 その二人のやり取りが示す通り、イシンの出で立ちは以前勇美が見たものとは大きく異なっていた。
 彼女の今の服装は『学者』そのものであった。黒くてゆったりした服にいかにも学者といった帽子を被っていたのだった。
 その姿を感心しながら見ていた勇美だったが、重要な事を確かめる為にこう言った。
「イシン、綿月姉妹の元を巣立っていった後は月の重役の元へ行くと言ってたけど、それがこのサグメさんという訳ですね」
『そういう事です』
 勇美とイシンの間に入って来たのはサグメであった。相変わらず口を動かしてはいないが。
『イシンは彼女の能力を活かして、私の元で情報管理の役職に就く事になったのですよ』
「そうだったんですか。大出世だね、イシン」
「はい、今でも信じられない位ですよ。月の賢人であるサグメ様の元に仕える事が出来るなんて」
 そしてイシンは話していった。今まで一介の玉兎をやっていた自分には、そのような重役は荷が重いと感じる事も多いと、でもサグメのサポートもあって何とかうまくやっていると。
 そこまで聞いた勇美は、しみじみとした様子で言う。
「そっかあ……、出世するっていうのも大変なんだね。でも応援してるから、頑張ってね♪」
「はい♪」
 勇美のその励ましに、イシンは堂々と答えたのだった。彼女は重役の補助という役職に就いた事により、その振る舞いも様になっているようであった。
 そこへサグメが話に入り込んできた。
『そして、私がこうして堂々と気兼ねなく『話せる』ようになったのもイシンの能力のお陰なのですよ』
「それってどういう事ですか?」
 要点の得ないサグメの物言いに、勇美は頭に疑問符を浮かべる。そこへ助け舟を出したのは鈴仙であった。
「勇美、サグメ様には話した物事が逆の結界にしてしまう能力があるのですよ。それもサグメ様自身にも制御出来ないという代物なんです」
 そして鈴仙はサグメの能力について詳しく説明していくのだった。曰く、この能力は『発言した内容と逆の事が起こる』……という事ではないようだ。
 例えば巨人と広島の試合を例にあげるとこうなる。この勝負にサグメが『巨人が勝つ』と言っても、『広島が勝つ』と言及しても同じ事が起こるのである。
 それはサグメの能力があらかじめ定められた運命に干渉する方向性だからなのだ。
 仮に勝負の結果が巨人の勝利に定まっているとすると、これに対してサグメがどちらが勝つと言及しても彼女の発言は巨人が勝つという運命に直接干渉する為、その運命が逆転して広島の勝利になるという事である。
 そのような神の領域に足を踏み入れるような規格外の能力をサグメは有している訳であるが、今話題にすべき事はその能力の内容ではないだろう。
 今、問題にすべき事は……。
「つまり、サグメさんはイシンの『文章を操る能力』で自分の能力に干渉される事なく無事に話せるようになった訳ですね」
『そういう事ですね。厳密に言えば鈴仙が言ったように『話して』はいないのですけどね。感覚的には頭の中で文を組み立ててそれをイシンの能力で音声に変えてもらう訳ですから、『テレパシー』に似ているでしょうか』
「成る程、何にしてもよかったですね、サグメさん」
 そう自分の事のように嬉しそうな振る舞いを見せる勇美に、サグメは何か少し気を引かれてしまうような心持ちとなるが、その後こう言った。
『ええ、自由に言葉を発する事が出来るというのは心地がいいものですよ』
「……サグメ様って案外お喋りだったですね」
 イシンの補助にて悠長に言葉を放ち続けるサグメに、鈴仙は少し呆気に取られながら思っていた。
『私の事を寡黙だとお思いでしたか?』
「ええ……まあ……」
 サグメに痛い所を突かれて、鈴仙はタジタジになってしまう。
「鈴仙さん、人を印象で判断しちゃダメですよ~♪」
「確かにそうなんですけどね」
 その事は幻想に生きる身としては重々承知のつもりであったが、それでも相手の印象に全く左右されずに物事を判断するというのは難しいと鈴仙は感じるのである。
 それはともあれ、鈴仙にはここで聞いておかなければならない事があるのだった。
「ところでサグメ様、今月の都はどうなっているのですか?」
『そうですね、あなた方にはその事を話してもよいでしょう』
 言うとサグメはオホンと咳払いした。これは言葉を発してはいないから、彼女の能力が暴発する事はないだろう。
『まず、今の月の都は『ある者』の襲撃により月の民が住めない状態になっています』
「ある者? 襲撃?」
 勇美はサグメからさりげなく発せられたワードに驚くのだった。何やら自分の想像を越えるだろう事態になっているのだと思っての事である。
『その事については後々話します。今言うべき事は、月の民が住めなくなった都の機能を停止させて凍結状態にしてあるという事ですね』
「それで都には、何と言うか『精気』が感じられなかったという訳ですか」
『そういう事です』
 勇美の言葉にサグメは相槌を打つが、勇美には当然新たな疑問が生まれていた。
「それで、月の民の皆さんはどうなったんですか?」
 それこそが一番の論点であろう。都を賑わせていた住人が人っ子一人いなくなっているのだ。その事を心配するのは当然の流れであるのだ。
『安心して下さい、心配には及びませんよ。彼等は夢の世界に移転させています。今でも彼等は夢の中で本物の月の都にいると思っているでしょう』
「夢の世界に……?」
 サグメがさらりと言ったそのワードを勇美は逃さなかったのである。彼女は余す事なく喰らいついた。
『すみませんでしたね、言葉足らずで。あなた方もここまで来る際に遭っているでしょう、『あの獏』に』
「あ、ドレミーさんですね」
 その者の存在を提示されて勇美は合点がいくのだった。夢の世界の支配者たる彼女なら、新たに夢の世界に住居を創りそこに月の民を住まわせる事が出来るだろうと。
『そうです、私は彼女と契約して民を一時的に住まわせてくれるように頼んだのですよ』
 だが、ドレミーとて突然そのような申し出を受けたが故に乗り気ではなかったのだ。勇美達の足止めを試みたのはその事への憂さ晴らしも含めての意味合いであった訳だ。
『それにしても驚きましたよ、あの獏があなた型を通すとはね』
「ええ、それは戦いの果てに生まれた友情の証とでも言いましょうか?」
『あなたの言葉の意味がよく分かりませんが……』
 どうやらサグメにはスポ根精神やら少年漫画的な美的意識は余り持ち合わされていないようである。
「この素晴らしさが分からないんですかぁ~♪」
 そんなサグメに対して、勇美はふてぶてしくのたまった。だが、ここで彼女は聞いておかなければならない事があるのだった。
「ところで、話を率直に戻しましょう。地上に機械を送り込んで浄土化しようとしたのはその『ある者』の襲撃で今の状態になったからですよね? つまり、このまま私達を『ある者』の所まで行かせてはくれませんか?」
 その勇美の提案に、サグメの方も納得したように頷いている。
『それが賢明な判断でしょうね。獏に通行を許可されたあなた達ですから……』
「それじゃあ」
『そういう訳で、あなた達を試させてもらいますよ、準備はいいですか?』
「やっぱりそうなりますか~……」
 展開的に戦わないでは済みそうになかったからねと、勇美は淡い期待が潰えた事に項垂れるのだった。
「勇美さん、先輩。頑張って下さいね」
「イシン、他人事だと思って~」
「……って先輩?」
 どこ吹く風といった様子で言うイシンに対して、二人は各々にツッコミを入れる。
 だが、世の中とは他人に降り掛かっている災難はやがて自分にも来る機会が多いように出来ているようである。
『何言っているのですかイシン。あなたも戦いに参加するのですよ』
「ぇっ……」
 そのサグメの一言によりイシンは声を喉につっかえさせた妙な音を出してしまったのだ。そして勇美はその光景にデジャヴを感じてしまう。
 ──いつぞやの依姫さんと私のようだと勇美は想起するのだった。依姫とサグメは同じく永琳を師と仰ぐ身であるが故に、どこか思想が共通するものがあるのであろうか。
 ともあれ、奇しくもここに『元レイセン』をパートナーに持つ者同士の弾幕ごっこが始まるのだった。

◇ ◇ ◇

「う~、私まで何で~☆」
 理不尽な展開になってしまった事を呪いながらイシンは愚痴をこぼしていた。
『イシン、観念なさい。これはあなたの実地演習も兼ねているのですよ』
「はい……」
 そう言われてはイシンは腹を括るしかなかったのである。これも自分の成長の為、そう思って彼女は目の前の課題に挑もうとするのだった。
『ですが安心しなさい。あなたの能力がサポート向けである事は知っていますから、あなたはそれに徹すればいいのですよ』
「分かりました」
 サグメのそのような配慮ある物言いにイシンは安堵する。彼女はかつて豊姫と一緒に侵略の首謀者を迎え撃った際に、自分は前線で体を張る事は難しいと思い知らされた訳である。
 その気持ちが刺激となってイシンは今の能力に目覚める事が出来たので、彼女はその機会を作ってくれた豊姫に感謝しているのだった。
 だから、今こうして重要な役割をこなす事が出来るのだ。故に彼女はそれに応えなければならないだろう。
『そういう訳で私達の準備は万全です。そちらはどうですか?』
 そして、イシンの気持ちを固まらせたサグメは今度は勇美達へと呼び掛ける。
「はい、こちらも大丈夫です」
「ええ、こうなったらやるしかないでしょう」
 鈴仙と勇美の物言いはそれぞれであるが、気持ちが決まっている事には変わりはないようだ。
『では始めましょう』
 サグメが言うと、他の者もそれに了承していった。
 まず動いたのはサグメであったようだ。彼女は懐からスペルカードを取り出す。
『【玉符「烏合の呪い」】』
 そして、スペルの宣言も彼女は『変換音声』で行ったのだ。どうやら生の肉声でなくてもスペルカードは持ち主に応えてくれるようだ。
 ともあれ、こうしてサグメのスペル発動は成功した訳だ。それによりカードにあらかじめ籠められた彼女の力が解放されていく。
 すると、彼女の背中の片翼がバサリと開かれたのだ。それにより辺りに羽根が舞い散った。
 事はそれだけでは終わらなかったようだ。宙を舞った羽根は、瞬時にその姿を変えたのである。
 その姿はスペル名が示す通り、カラスの形をとっていた。そして、羽ばたきながら耳障りである一方で透き通っても聞こえる鳴き声をあげる。
 それだけならば、品性のあるカラスという印象だろう。だが、彼等には特筆すべき事実があったのだ。
「白い……カラスさん?」
 その勇美の指摘の通り、彼等は普通のカラスのような漆黒ではなく、寧ろその逆の純白の羽毛に包まれていたのである。
 確かにカラスの仲間には、蔓延したイメージである黒塗りではない種類も存在する。だが逆に真っ白なそれなど、そうそうお目に掛かれるものではないだろう。
 このような現実離れした光景こそ、幻想の世界に住む者、もしくはスペルカードが生み出すものと言えよう。
 その芸術的な様相に見とれていたい勇美であったが、それを許す相手ではなかった。
『さあ、行きなさい』
 サグメがそう言うと、白カラス達は一斉に了承の意味を込めた鳴き声をあげ、勇美達の元へと向かって行った。
 だが、今更これしきの事で怯む二人ではなかったのだ。
「鈴仙さん……これ位で、ねぇ?」
「そういう事ですね♪」
 二人はそう言い合うと、一斉に各々で銃を引き抜いたのだ。──無論それはプレアデスガンとルナティックガンであった。
 その後の二人の行動は早かったのである。無駄のない銃捌きで瞬く間に白カラスの群れを撃ち落としていった。弾丸が空を切る音と袋から空気が抜けるような音が辺りに響く。
 そして、あっさりとカラスの群れは全滅したのである。だが、それでサグメには動揺した様子はなかった。
『まあ、これは小手調べですからね』
「ええ、そうでしょうね。──サグメさんもそういうの好きじゃないんですか?」
 スポ根精神はなくても、ボスキャラ精神はあるのかも知れないと、勇美は何故か意気揚々とするのであった。
『いえ、私には何の事だか分かりませんね』
 対してサグメの方もどこか楽しげであった。それを見ながら鈴仙は思っていた。
(あれ、サグメ様何だか楽しそう……?)
 もしかしたら、自由に言葉を発する事が出来るようになった為だろうか。だとしたら、イシンと、果ては彼女の力を目覚めさせるに至った豊姫、そしてイシンを綿月姉妹の元へと送り込んだ影響力を改めて知るべきだと鈴仙は思うのだった。
(何か、今更だけど私の周りの人達って凄いのが多いですね……)
 鈴仙はそう思い至るしかなかったようだ。更に言うならば依姫と、彼女が持ち味を見出だし、かつ依姫に着いてこれた勇美もその中に含まれていたのだ。
 そして、鈴仙は意識をサグメ自身に向けながら勇美に注意を促す。
「勇美さん、今のサグメ様は恐らく私が知っているかつての彼女よりも手強くなっているでしょう。ですから、気を引き締めて行きますよ」
「ええ、私にも何となくですが一筋縄ではいかないだろうって伝わって来ますね」
 鈴仙が警戒する要素は勇美にも感じ取る事が出来るのだった。物事を楽しんで行えるという事ほど成功する要素になるものはないのだから。
『では、これならどうですか? 【玉符「烏合の二重呪い」】』
 そして、サグメは次なるスペルを発動していたのだ。再び彼女が舞い上げた羽根から白きカラスが生成される。
 だが、今度は少し勝手が違うのであった。それはカラスの群れが、勇美と鈴仙を挟むように二ヶ所に誕生していたのだ。
「成る程」
「これで私達を挟み撃ちにする訳ですね?」
 そう相手の作戦を言い当てる二人であったが、その様子は至って落ち着いていた。その理由は。
「それなら私達二人で分担すればいいだけの事ですよね?」
「ご名答。それでは勇美さん、そちらは任せましたよ♪」
「任せて下さい。『天津甕星』様に加えて『金山彦命』よ」
 勇美はプレアデスガンの精製に使用している天津甕星の力に、金属の神である金山彦命の力を加える。そして出来るのが……。
「これですよ♪ 【星蒔「クェーサースプラッシュ」】!!」
 勇美はそう宣言すると、新たに手に持った機関銃の引き金を引く。それにより銃口から滝のように星の力で創った弾丸が照射されていった。
 そして、その星の乱射により白カラスの群れは次々と撃ち抜かれていったのだ。その後には一匹足りとも撃ち漏らしは存在していなかった。
 変わって、こちらは鈴仙の視点である。彼女も落ち着き払った様子で迫り来るカラスの群れに意識を向けてスペルの発動をする。
「【幻爆「近眼花火(マインドスターマイン)」】」
 宣言後、彼女が眼を赤く光らせると、カラスの群れの中に花火のような爆発が起こったのである。
 それによりカラス達は次々と爆発に飲まれて砕けていったのだ。中には誘爆に巻き込まれてしまった個体もいた。
 そして、こちらも無事に群れを殲滅する事に成功したようである。一仕事終えて鈴仙は「ふぅ……」と一息つき、勇美の方へと振り返ったのである。
「こっちは終わりましたよ。勇美さんもOKですか?」
「こっちもバッチリですよ♪」
 どうやら二人とも敵を全滅させる事に成功したようであった。まずは危険が去り、一安心して二人は向き合ったのである。
『お二人とも仲がよろしくて何よりですね』
 そう言ってサグメは二人を見ながらクスクスと微笑ましそうに笑っていたのである。
 それを見て勇美はまたしてもデジャヴを覚えて鈴仙に言う。
「やっぱりサグメさんの振る舞いって依姫さんに似ていますね」
 そう言われて鈴仙は、合点がいったように付け加える。
「更に言うと、イシンのお陰で依姫様と似た感性を得られた……といった所でしょうか?」
 それだけイシンの存在はサグメ様の心境を変化させたんだなと鈴仙は思い起こすのであった。 
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