八条学園騒動記
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第六百二話 梅干しの魔力その三
「戦場に送ってね」
「戦死させてしまったな」
「助けようと思ったら助けられたよ」
乃木希典は二人の息子達を安全な場所に就けようと思えば就けれたのだ、旅順の様な激戦地に送らない様にも出来たのだ。
だが、だ。それでもだったのだ。
「他の軍人さん達と同じ様にね」
「戦わせたんだな」
「それでお二人共壮絶な戦死を遂げたんだ」
その最後は実に立派だったと言われている。
「息子さんは二人だけで娘さんは亡くなっていて」
「乃木家は終わりか」
「お二人共結婚していなかったし」
だから子供もなかった。
「そうなったけれど」
「あえてか」
「そうしたんだ、昔の日本は家の意識が強かったけれど」
「凄いな、つくづく」
「そして戦い続けて」
「旅順を陥落させたんだな」
「見事ね」
トムはテンボに話した。
「それはアンネットも凄いって言ってるね」
「ロシア人のな」
「ロシアでも賞賛されているよ」
その敵だった彼等からもだ、千数百年前のことでもこのことはまさに英雄の行いだと言われているのだ。
「アンネットも言ってるよ」
「敵ながら見事だったからか」
「日本軍は悪いこともしなかったし」
略奪暴行は一切なかった、日清戦争でも義和団事件でもそうだった。ただ二次大戦では軍自体は兎も角軍属の者で悪事があったという。
「余計にね」
「賞賛されているな」
「その軍律の厳しさはね」
ジャッキーは日本軍のそちらの話をここでした。
「連合軍並だったのよね」
「いや、連合軍よりもね」
「厳しいの」
「今の日本軍も連合軍より厳しいけれど」
それでもというのだ。
「その日本軍よりもね」
「当時の日本軍は厳しくて」
「そうだったっていうよ」
「物凄く厳しいのはわかったわ」
ジャッキーもだ。
「ここまで聞いてね」
「だから悪事もなくて」
当時軍隊は普通にあったがだ、イギリス軍もボーア戦争でそれが問題になりコナン=ドイルが苦しいとしか言い様がない擁護をしている。
「そのこともね」
「凄いのよね」
「勿論乃木大将もね」
今話している彼もというのだ。
「銃や剣を持たない相手にはね」
「手出ししなかったのね」
「一切ね、勿論お宝にもね」
「手を出さなかったの」
「一切ね」
「本当に立派ね」
「その乃木大将も食べた」
そうしたというのだ。
「それが梅干しだね」
「そういうことね」
「それで」
トムはさらに話した。
「実は僕の国では殆ど食べないんだ」
「カナダではなの」
「うん、日本料理はよく食べても」
それでもというのだ。
「梅干しはね」
「そうなのね」
「これがね」
「カナダだとなの」
「殆ど知られていなくて」
それでというのだ。
ページ上へ戻る