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呆気ない幕切れ

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第三章

 今シーズンでユニフォームを脱ぐことは決まっていた、まさに彼の最後の花道だった。
 その花道が今はじまった、秋山はソフトバンクナインに胴上げされるが。
 その横で和田は抗議していた、あまりにもと言えばあまりにもな結末だった。この結末に阪神ファンは愕然となった。
「抗議の横で日本一の胴上げかい」
「秋山監督のお別れでもあるそれか」
「一方は抗議、もう一方は胴上げ」
「何ちゅう対比や」
「最悪のコントラストや」
「酷過ぎる幕切れや」 
 誰もが嘆く、そして。
 ある者はこう言った。
「守備妨害のアウトってそうそうないな」
「ああ、高校野球でもな」
「あまりないわ」
「それもシリーズでとかな」
「それでシリーズが終わるとかな」
「これはじめてやろ」
「実際にはじめてや」
 スマホやパソコンで調べればすぐにわかる、そしてその通りであったのでまた誰もが嘆くことになった。
「こんなんではじめてとか嫌や」
「何でこんな幕切れやねん」
「抗議の横で胴上げってはじめて見たわ」
「それも日本一のな」
「しかも守備妨害で日本一決まるとか」
「何でこうなるんや」
「阪神はいつも変なネタ提供してるけど」
 それでもというのだ。
「これはないやろ」
「前の三十三対四も酷かったけど」
「今回もあんまりや」
「とんでもない幕切れやったわ」
 こう言うばかりだった、そうして。
 阪神ファン達の記憶に刻み込まれた、守備妨害でのアウトが日本一となりそうして抗議の横で日本一の胴上げが行われた、それは記録ともなり阪神ファン達は項垂れた。
 だが彼等はすぐにこう言った。
「来年や」
「また来年や」
「来年優勝すればええ」
「来年こそは日本一や」
 彼等は再び立ち上がった、そうしてだった。
 阪神への応援を続けた、あまりもと言えばあまりな幕切れを見ても彼等はまた立ち上がった。阪神への愛故に。


呆気ない幕切れ   完


                  2020・6・13 
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