八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第三百三話 嘘を吐かないものその一
第三百三話 嘘を吐かないもの
オードブルを食べ終えた僕達の前に遂にメインディッシュが来た、それは七面鳥の胸肉をオープンで焼いたものだった。
皮はカリッとしていてソースに香草もかけられている、その料理を前にして僕は香織さんに話した。
「もっとね」
「もっと?」
「小さいお肉と思っていたよ」
「結構なボリュームね」
「三百グラムあるかな」
僕が見たところだ。
「これ位だと」
「そうね、それ位ね」
「そうだね、これはね」
「かなり美味しそうね」
「そうだね、これとデザート食べたら」
お昼にかなり食べたこともあってだ。
「それでね」
「お腹一杯ね」
「そうなるね」
こう香織さんに話した。
「ワインも飲んでるし」
「そうね、ただね」
「ただ?」
「いや、ワインもう二本目だけれど」
香織さんがここでしたのはワインの話だった。
「本当に飲みやすいから」
「ああ、それでなんだ」
「まだ飲めそうね」
「三本目いけるかな」
「そうかも知れないわね」
「そうだね、僕も二本目だけれど」
それも飲み終わろうとしている、フェットチーネだけじゃなくオードブルもワインに合ったのでそれだけ進んでいた。
「あと一本もね」
「ケーキもあるし」
「いけそうだね、ランブルスコは飲みやすいから」
本当にこのことが大きい。
「だからね」
「お酒が進むわね」
「進み過ぎて」
それでだ。
「お店出る時大丈夫かな」
「普通に歩けるかしら」
「どうだろうね、まあ頑張って歩いて」」
そうしてだ。
「駅前の商店街に行ってね」
「イルミネーションもね」
「見ようね」
「そうね、それで今から」
「七面鳥も食べようね」
「それじゃあね」
香織さんは僕の言葉ににこりと頷いてくれた、そしてだった。
僕達はメインディッシュも食べはじめた、七面鳥のお肉もだった。
かなり美味しかった、それで僕は言った。
「鶏肉も美味しいけれど」
「七面鳥もよね」
「かなり美味しいね」
「ええ、私もそう思うわ」
「ワインとも合うし」
「そうね」
「これはいけるよ」
何というかフォークとナイフが止まらなくなった。
「本当にね」
「そうね、それとさっきのお話だけれど」
「自殺のお話だね」
「やっぱりしないことね」
「人間の一生ってわからないけれどね」
この世で一番わからないものの一つだ、親父は僕にこうも言った。あの親父は何かと人生について考えていることがこの言葉からもわかる。
「今日元気でもね」
「明日はどうか」
「わからないからね、急に悪いことが続いたり」
「逆もあるわね」
「だからね」
「何時どうなるかわからなくて」
「絶望することもあるよ」
したことのない人はいないと思う。
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