八条学園騒動記
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第五百九十五話 正門を去ってその七
「世のため人の為になってはいる」
「反面教師も必要なのね」
ビアンカはしみじみとして言った。
「つくづく」
「そうだな」
「ああはなるまいね」
「殷の紂王は後の中国の君主達の最高の反面教師だったな」
「そうよね」
「ああした最悪の暴君もだ」
「役に立ったのね」
後世の君主達の、というのだ。
「そうなのね」
「最高のな」
「ロベスピエールも」
連合では血に餓えた最悪の独裁者の先駆者と言われている、ただこの評価は彼の独善性を考えるとあながち間違いではないかも知れない。
「そうだしね」
「ああはなるまいだな」
「知るとそう思うし」
「そうだな」
「あんな独善的でね」
「自分が絶対に正しいと思ってな」
「人をどんどんギロチン台に送るとか」
それこそというのだ。
「もうね」
「絶対にだな」
「あってはならないわ」
「そうだな」
「自分が正しいか」
「絶対にな」
「いつも考えないとね」
「そうだ、ロベルピエールもだ」
その彼もというのだ。
「反面教師だ」
「そうよね」
「人間最悪な奴でもだ」
「反面教師としてなのね」
「生きる価値があるな」
「そういうことね」
「だが反面教師になったらだ」
その時点でというのだ。
「もうすぐに消えるべきだ」
「それ以上害悪を撒き散らさないことだね」
ロミオが言ってきた。
「そうだね」
「そうだ、反面教師になったらな」
「もうね」
「それでだ」
その時点でというのだ。
「もう役目は果たした」
「充分にね」
「だからだ」
それ故にというのだ。
「もうだ」
「そこでいなくなるべきだね」
「反面教師はなった時点で役割を終えた」
「そう言っていいよね」
「そうだ、だからな」
「もうなった後で」
「いなくなっていい」
死んでもいいというのだ。
「それでな」
「死んでもだね」
「もう世の中への役目は終えた、終えたならまだいいが」
アルフレドはさらに話した。
「そこから害にしかならないからな」
「害毒を垂れ流したり撒き散らすから」
「もう生きていると駄目だ」
「世の中本当に残念だけれど」
ロミオは苦い顔で述べた。
「そうした人もいるってことだね」
「生きていても害にしかならない輩がだ」
「そうした人は反面教師になるのが役目で」
「もうなった時点でだ」
「役目は果たしたから」
「死ぬべきだ、もっともだ」
アルフレドも苦い顔になった、だがその表情はロミオが今したものとはまた違う顔だった。それは醜いものを見てなった苦い顔であった。
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