書いた作品は

　　　　　　　　　　　　　　　書いた作品は
　武田麻美子は通っている高校の文芸部長だ、赤がかった少し癖のある黒髪を腰まで伸ばしていて勝気そうな強い光を放つめにきりっとした唇を持っている。眉にも英気がある。
　胸は九十ありウエストは引き締まっている。一七〇近い長身で脚も奇麗だ。
　その彼女はいつも部室で執筆しながら言っていた。
「まずは書かないとね」
「駄目ですか」
「文芸部なら」
「そうですか」
「そう、小説やポエムを書いてね」
　そうしてとだ、部員達にも書きつつ言う。
「それで発表するものだよ」
「それでいつもパソコンで執筆されて」
「ワードを使って」
「それで小説サイトに投稿されてるんですね」
「毎日」
「そう、そうしないとね」
　やはり書きつつ言う。
「文芸部じゃないよ」
「それで部長今度は何書かれてるんですか？」
　二年生の置下凛が淘汰、黒髪をおかっぱにした楚々とした感じの少女だ。背は一五六位でスタイルも普通だ。ダークブルーのブレザーとタートンチェックのミニスカート、赤リボンの制服は大学生の様なボディの麻美子より彼女の方が似合っている。
「一体」
「純文学よ」
「そっちですか」
「芥川みたいなね」
「芥川ですか」
「前期のね」
　芥川は芥川でもというのだ。
「古典に題材を取ったの書いてるからね」
「そうですか」
「地獄変みたいな」
「ああ、あの有名な」
「そういうの書いてるから」
「それはまた」
「盗作はしてないからね」
　麻美子はこのことは断った。
「それはしないから」
「盗作はアウトですね」
「そんなことをしたら」
　それこそというのだ。
「アウトだからね」
「書き手としてはですね」
「あたしはしないから」
「それは絶対ですね」
「それしたら怒るから」
　部長としてとうのだ。
「あんた達もね」
「盗作は、ですね」
「しないでね」
「わかりました」
「とにかく今はね」
「書いていかれますか」
「今書いているこの作品を」
　その様にしていくというのだ。
「書くのなら終わらせる」
「完結させることですね」
「そうしないとね」
「そのことも絶対ですね」
「未完の作品って嫌だろ」
　麻美子は凛にこう返した。
「凛ちゃんも」
「はい」
　それはとだ、凛も答えた。
「読んで終わっていませんと」
「続きが気になるね」
「どうしても」
「明暗でもね」
　夏目漱石の最後の作品だ、いよいよ作品としての答えが出るというその時に漱石が急死して未完となった。
「あたし読んだけれどね」
「終わっていないからですね」
「もうね」
　それこそというのだ。