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第二章
茶色の毛の一歳位の雄猫もいた、二匹共夫婦を見て怯えきっている。夫はその二匹を見て保健所の人に尋ねた。
「この猫は」
「保護された時からずっと一緒なんです」
保健所の人は彼に答えた。
「どうも家出をしている間にです」
「知り合ってですか」
「ずっと一緒みたいです、しかしどっちの子も酷いですね」
保健所の人は顔を顰めさせて二人に話した。
「あちこちに打ち身や骨折があります」
「虐待ですか」
「どっちの子も命に別状はないですが」
それでもというのだ。
「とんでもない虐待を受けていましたね」
「はい、実は」
ここで夫が保健所の人に犬のことを話した、すると。
保健所の人はこう彼に言った。
「その家からは何も連絡が来ていないです」
「もうどうでもいいですか」
「そうでしょうね、逃げたなら」
それならというのだ。
「そう考えているんでしょう」
「そうですか」
「ではです」
保健所の人はさらに言った。
「飼い主不明の野良犬ということで」
「僕達で、ですね」
「引き取ってくれますか」
「最初からそのつもりです」
「では」
「ただこの子ずっと一緒にいますね」
妻は猫を見て保健所の人に話した。
「それならです」
「この子もですか」
「一緒にです」
「引き取ってくれますか」
「野良猫みたいですしこのままだと」
保健所にいれば殺処分だ、だからだというのだ。
「うちでこの子も」
「そうしてくれると助かります、命が少しでも助かれば」
「はい、それでは」
こうしてだった、犬だけでなくだ。
猫も引き取られた、夫婦は二匹をまず病院に連れて行き。
入院して手当てをしてもらった、その後で家に迎え入れたが二匹は最初家族を怖がっていた。だが家の娘がだった。
犬にワン美、猫にニャン太と名付けてそうしてだった。
いつも二匹に優しい声と笑顔をかけて丁寧にご飯をあげてだった。二匹は次第に家族に心を開いた。そして。
二匹を散歩に連れて行った時にだ、夫婦はたまたま隣の古森家の姉弟二人共髪の毛を金髪に染めていて派手なメイクと柄の悪いファッションの彼等と会った。だが。
二人はワン美を見ても何とも思わなかった、もう自分達が虐待していた犬だともわからなかった。そして挨拶もせずに擦れ違ったが。
ワン美はずっと怯えて震えていた、その彼女に家族三人でそっと手を触れて声をかけた。
「大丈夫だぞ」
「私達がいるからね」
「悪いことさせないわよ」
「クゥ~~~ン・・・・・・」
ニャン太も同じだった、だが彼にもだった。
三人は触れて声をかけた。それで彼も声を出した。
「ニャ~~~ン・・・・・・」
「あの弟さんだろうな」
夫は妻に二人が去った方を見ながら言った。
「ニャン太も何処かでな」
「虐待していたのね」
「ワン美だけでなくな」
「とんでもない人ね、つくづく」
「だからヤクザ屋さんなんだよ」
言うまでもなく碌でもない人間になっているというのだ。
「どうせ下っ端だろうけれど」
「外見見たらそうね」
「自分より弱い生きものをいじめるなんて最低だ」
「本当にそうね」
「けれど僕達は違うよ」
「ええ、ワン美もニャン太もね」
「大事にしていこう」
「そうね、もうワン美はお婆さんだけれど」
犬で十歳だからだ。
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