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おっちょこちょいのかよちゃん

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105 狙われた護符の所持者

 
前書き
《前回》
 クリスマス合唱コンクールの日が訪れ、かよ子は練習の成果を出す為にコンクールに臨む。「大きな古時計」の1番の自身の独唱は上手く歌えたが、3番の独唱を担当する大野の声が出なくなるというハプニングが起きてしまう。そんな危機を救ったのが大野と喧嘩していた筈の杉山だった。杉山が代わりに独唱を行う事で、運動会以来二人は仲直りをする事ができた。しかし、名古屋では護符の所有者で、かよ子の家の隣のおばさんの娘・さりが赤軍の襲撃を受けてしまう!! 

 
 すみ子の学校ではクラス別学芸会を行っており、白雪姫の劇を成功に収めていた。
「山口君の王子様役、かっこよかったわよ・・・」
 すみ子は山口を褒めた。
「ああ、でもすみ子も裏方として頑張ってたぜ!」
「うん、ありがとう・・・」
 なお、この時、川村もまた裏方を担っており、ヤス太郎は小人の役を演じていた。
(もうクリスマス・イブか・・・)
 すみ子はそう思う。クリスマスは皆楽しみにしている期間だ。何か楽しい事ないかなと思った。

 さりは街を荒らす男が日本赤軍の一味だと勘付いた。
「お前だな、護符の所有者は!さあ、その護符を寄こせ!」
「渡すわけないでしょ!」
「なら、力づくで奪うまでだ。バーシム、サラーハ、出てこい!」
(バーシム、サラーハ・・・!?)
 さりはサラーハはともかく、バーシムの名前は聞いた事がある。清水に帰省していた時、大雨の中、出会ったあの男に会った事がある。まさかそのバーシムが来ているというのか。
「この名古屋の地にいたとはな。天よ、我に仕事を与えよ!」
 バーシムが唱える。バーシムとサラーハが急接近してくる。さりは再び護符の能力(ちから)を行使した。その時、靴が変形した。そして踵部分の砲から炎が噴射し、さりは空中へと待った。
「空へ逃げやがったか」
「追えるぜ、あんな奴」
 サラーハは倒壊していない建物をやすやすと登った。さりはサラーハが太った体つきにも拘らず機敏に動けるとは恐ろしく思った。その時、サラーハは唱える。
「空に浮かぶ建物を!」
 さりは一瞬、何を言っているのやらと思ったが、急速に周りがコンクリートか煉瓦のような物に包まれた。これでは動けない。
「これで動けん、今だ、バーシム!」
「天よ、我に仕事を与えよ!」
 さりを囲んだ空中に浮かぶ建築物は赤軍の男の元へ吸い寄せられていく。
(これで終わるわけにはいかないわ!)
 さりは護符の能力(ちから)を行使する。サラーハが造り出した建築物は粉々に砕け散った。
「何!?」
「護符の能力(ちから)を舐めるんじゃないわよ!」
 さりは護符の能力(ちから)をもう一度行使する。ガトリングが出てきた。ガトリングを赤軍の男に向かって発砲する。だが撥ね返されてしまった。
「え!?」
「ハハハ!俺にこんな攻撃が通用するか!」
 さりは靴のジェットでもう一度飛行した。しかし、いくら清水にいる女の子の杖と同等の強さがある護符とはいえ3対1で勝ち目はあるのか。
(どうか、私に援軍を・・・!!)
 さりはそう願った。その時、護符が光り出した。

 三河口は正午頃に居候の家に帰宅した後、叔母に断って出かけた。
(あの奏子ちゃんって子、健ちゃんと上手く行ってるみたいね・・・)
 奈美子はそう思った。三河口は待ち合わせ場所で奏子と出会った。
「ごめん、待ったかい?」
「ううん、大丈夫よ、てか、時間まで10分もあるし・・・」
「はは、俺は遅刻嫌いでね・・・」
「じゃあ、一緒に色々と行ってみよう」
「うん」
 二人は歩く。清水は温暖な地域の為、雪が降る事は滅多にない。
「いつも思うけど、ここは冬でも雪は降らないね」
「うん、三河口君がいた横浜は振ってたの?」
「あまり降らないよ。でも1年に1度、2月頃に降るけど、その時は一気に積もるよ。札幌に住んでる従姉は雪の中で大変だろうな」
「そうね、あ、富士山が雪被ってるわ」
 清水からも見える富士の山は上部に雪を被っていた。
「凄いな、近くの御殿場とか裾野とか、山梨の身延や富士五湖は雪降り始めてるからな」
 やがて二人は商店街の喫茶店に入る。
「それにしても名古屋の従姉のお姉さん、大丈夫なのかしら?」
「分からん、何の情報も来ていない。神戸や札幌の従姉にも事情は行き届いてるんだが・・・」

 かよ子は成功感を持って帰宅した。
「只今!」
「お帰り、かよ子。合唱コンクール、お疲れ様」
「うん、私、自分で言うのも何だけど、おっちょこちょいしないで歌えたよ!それから杉山君が大野君と仲直り出来たんだ!」
「あら、あの二人が?良かったわね」
「独唱の所で大野君の声が出なくなって杉山君が代わりに歌ったんだよ。それがきっかけで仲直りしたんだよ」
「そうなの、良かったわね」
 その時、ふと不思議な音が聞こえた。
《助けて・・・》
「え?」
「あら?」
「お母さん、今、『助けて』って聞こえなかった」
「ええ、聞こえたわ」
 また、声が聞こえる。
《名古屋にいる羽柴さりです。赤軍と異世界の敵が攻めてきたわ。今すぐ来て欲しいの!》
「かよ子、これは隣の叔母さんの娘のさりちゃんの声よ!」
「う、うん、でも今すぐ名古屋に行け・・・?」
 その時、ブラックホールのような穴が出現した。
「かよ子、これできっとさりちゃんの所に行けると思うわ。急ぎましょう!」
「うん!」
 かよ子とその母は黒い穴に入って行った。

 ブー太郎は漫画を読んでいる時、不思議な声が聞こえる。
《助けて、名古屋にいる杯の所有者の羽柴さりです。誰か私を支援して!》
 ブー太郎は気のせいかと思った。だが・・・。
「な、何だブー!?」
 すぐそこに黒い穴があった。
(そういえば護符の所有者って前に会った気がするブー・・・!!)
 ブー太郎は勇気を振り絞って穴に飛び込んだ。

 杉山や、その姉の所にも不思議な声が聞こえた。大野やまる子とその姉、冬田、そして隣町のすみ子達の所にも。それぞれが穴に入る。
「姉ちゃんも行くのか?」
「ええ、もちろんよ」
 杉山の姉も護符の所持者の援護に向かった。

 石松は三穂津姫と話す。
「なぬ、尾張にいる護符の所有者が襲われていると!?」
「はい、石松も援護していただけますでしょうか?」
「三穂津姫の命なら勿論承る!」
 石松は飛び去った。
「健闘を祈っております、皆様・・・。私も支援しなければ・・・」
 三穂津姫は別の方向へと飛び立った。

 濃藤の家に一人の女性が現れた。
「濃藤徳崇さんですね?私は三穂津姫。御穂神社の神です。今、貴方のご友人の三河口健さんの従姉であり、異世界の護符の所有者である羽柴さりさんが危険な状態に陥っています。貴方も妹さんと同じく援護をお願い致します」
「俺に?でも、俺には何ができるんだ?」
「こちらをお渡しします」
 三穂津姫が渡したのは剣だった。
「これは運命の剣(デステニーソード)です。これで相手を倒す事ができます。場合によっては味方に対してこれを振るう事でその人物を良い結果へと招く事も出来ます」
「ありがとう」
 その時、声が聞こえた。
《助けて、名古屋にいる杯の所有者の羽柴さりです。誰か私を支援して!》
「これはミカワの従姉の声か!」
 そして黒い穴が現れた。
「そこに入れば名古屋へひとっとびです」
「ああ、行ってくる!」
 濃藤は靴を用意し、穴に入った。

 北勢田の所にも三穂津姫が現れた。
「北勢田竜汰さんですね?私は三穂津姫。御穂神社の神です。今、貴方のご友人の三河口健さんの従姉が大変な目に遭っております。援護をお願い致します」
「ミカワの従姉が!?でもその従姉って確か・・・」
「はい、名古屋におります。そして貴方用の道具が丁度出来ましたのでこちらをどうぞ」
 三穂津姫が北勢田に渡したのは剣のような物だった。
「それは電脳の刃(サイバーブレード)です。トーマス・エジソンが発明した電球やグラハム・ベルが発明した電話機と同じく電気の能力(ちから)があります。これによって相手に電撃を浴びせたり、場合によっては貴方が想像したものを機械化して実現させる事もできます。これを持って異世界の護符の所持者の援護に行ってきなさい」
「ああ、今すぐ名古屋に行くには新幹線が・・・」
 北勢田が躊躇っているうちに声が聞こえた。
《助けて、名古屋にいる杯の所有者の羽柴さりです。誰か私を支援して!》
「今、声が!」
「それは三河口健さんの従姉・羽柴さりさんの助けを求める心の声です。護符の能力(ちから)を行使したのですね」
 そして北勢田の近くに黒い穴ができた。
「その穴に入ればその護符の所有者の所に行く事ができます」
「分かった、行ってくる!」
「お気を付けて」
 北勢田は支度を急ぎ、黒い穴へと入って行った。

 長山の所にも三穂津姫が現れる。
「長山治さん」
「貴女は、三穂津姫!」
「大変です、護符の所有者が危険な目に遭っております。急いで援護をお願い致します」
「う、うん!」
「それから貴方用の道具を」
 三穂津姫が出したのは眼鏡のような道具だった。
「これは神通力の眼鏡です。普通の眼鏡と同じように目が見えるようになるのはもちろんですが、遠くの場所を見たり聞いたり、危険予知などができます。また、相手や自分の過去や未来、考えている事を見通したり、高速移動したりできます」
「ありがとう」
 その時、声が聞こえた。
《助けて・・・。護符の所有者・羽柴さりです。今、赤軍に襲われてるの!!助けて!!》
 そして黒い穴が出現する。
「護符の能力(ちから)による穴ですね。ここを通って護符の所有者を援護するのです!」
「うん、分かった!」
 長山は神通力の眼鏡を持って穴へ飛び込んだ。

 三河口と奏子は喫茶店でコーヒーや紅茶を飲んだ後、街を歩いていた。奏子は好きな男子と楽しいひと時を過ごせて嬉しかった。その時・・・。
《助けて・・・。護符の所有者・羽柴さりです。今、赤軍に襲われてるの!!助けて!!》 
 不思議な声が聞こえた。
「奏子ちゃん、従姉の声が聞こえた気がするんだが・・・」
「うん、私も」
 その時、目の前にブラックホールのような穴があった。
「きっとさりちゃんが助けを呼んでんだ。急がないと!」
「三河口君、私も行くわ!」
 二人は黒い穴に飛び込んだ。

 かよ子とその母は黒い穴に入った後、長い闇の中を抜け、白い穴を見つけた。かよ子は眩しくて目を閉じる。そして・・・。
「こ、ここは・・・」
 かよ子達は護符の所有者がいる名古屋にいた。 
 

 
後書き
次回は・・・
「クリスマス・イブの乱」
 護符の所有者のいる名古屋に来たかよ子達。かよ子や三河口、そして彼女らと関わりを持った人々もさりの援護に訪れる。名古屋を舞台に護符の争奪戦が激化していく・・・!! 
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