八条学園騒動記
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第五百九十三話 正門に向かう途中その十
「ヒトラーにそうした人がいたことをな」
「そこまで女性が周りにいないって思われていたの」
「そうだった」
「実際その人以外にね」
「女性の話が少ないな」
「姪の人を可愛がっていたとは聞いたわ」
「だがそれ以外にはな」
ヒトラーにはというのだ。
「本当にだ」
「女の人のお話が少ないのね」
「女性に手を出すこともなかったしな」
「独裁者だから思いのままでも」
「芸術品は集めたが」
画家志望だっただけにそちらへの造詣は深かったのだ。
「女性には終生そうだった」
「清潔で」
「浮いた話がなかった」
「そうした人だったのね」
「確かにとんでもない人物だったが」
連合では人類史上最悪の悪人の一人とされている。
「しかしだ」
「女性には清潔だったのね」
「そして贅沢ともな」
こちらにもというのだ。
「無縁だったの」
「そのことは私も知ってるわ」
ビアンカにしてもだ。
「建築は盛んにしてもね」
「当時の技術だとな」
「多少お金はかかってもね」
「国を傾ける程ではなかった」
「そうよね」
「そして自分の贅沢の為でなくな」
建築させてそれを観て楽しんでもだ。
「国民がそれを使う為だった」
「ドイツの為だったのね」
「そして服もだ」
これもというのだ。
「制服でだ」
「あの黄色い軍服みたいな服ね」
「それ位で飾らず身の回りの品もだ」
「質素だったのよね」
「そして食事も菜食主義でな」
「やっぱり贅沢はしなくて」
「趣味は読書と音楽鑑賞だった」
その二つが主であったのだ。
「ギャンブルやそうしたこともしなかった」
「本当に生活は質素だったのよね」
「鹿も真面目でな」
「そうした人だったのよね」
「極悪人だが私人としてはな」
「真面目だったのね」
「身内贔屓もしなかったしな」
このことは連合でもままにしてある、政治家が身内を傍に置いて重用したりするのだ。スポイルズシステムの弊害の一つだ。
「それも一切だ」
「あれっ、そういえば」
ロミオはアルフレドの今の言葉にはっとなった。
「ヒトラーの親戚って姪の人以外は」
「聞かないな」
「いない風だね」
「身内は閑職に回していた」
「重用するどころか」
「そうしていた」
「そうだったんだね」
「ヒトラーは自分程自分を知らない者はいないと言っていた」
この言葉は実際に言ったという。
「そこまでだ」
「身内を登用しないで」
「そしてだ」
そのうえでというのだ。
「身内の話もな」
「聞かなかったんだ」
「一応兄弟はいた」
「お姉さんいたのよね」
ビアンカが言ってきた。
ページ上へ戻る