戦国異伝供書
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第百十六話 摺上原の合戦その五
「北は山、南は湖」
「我等はその間で戦いますな」
「そうしますな、この度は」
「山と湖の間の腹で戦う」
「そうなりますな」
「うむ、しかも今は風が強い」
政宗は諸将にこのことも話した。
「この風をどう使うかじゃ」
「そが問題ですな」
「この度は」
「風をどう使うか」
「そのことが」
「左様、今風は西から東に吹いておる」
風向きのことも話した。
「即ち芦名家にとって追い風じゃ」
「だとすると、ですな」
「我等にとって不利ですな」
「風は」
「そうなりますな」
「だからまずは迂闊に攻めずな」
そうしてというのだ。
「そしてじゃ」
「守る」
「守りを固めてですな」
「そのうえで戦いますな」
「そうする、そしてじゃ」
そのうえでというのだ。
「風が変わるとな」
「それに合わせてですか」
「我等は戦いますか」
「そうしますか」
「我等には城がある」
猪苗代のその城がというのだ。
「だから例え劣勢になってもじゃ」
「覆せますな」
「それが出来ますな」
「劣勢に陥っても」
「そうですな」
「そうじゃ、だから守ってもじゃ」
それでもというのだ。
「よい、多少劣勢でも城を足掛かりに戦うぞ」
「そうしてですな」
「戦に必ず勝つ」
「最後はそうしますな」
「殿はそうお考えですな」
「うむ」
まさにとだ、政宗は諸将に答えた。
「だがここは風向きがよく変わる、それはしかと見てじゃ」
「戦いますか」
「西から東への風が変われば」
「その時にですな」
「攻めることもある、まずは見るぞ」
風の流れをというのだ。
「そうして戦う」
「風ですか」
成実はその風について政宗に話した。
「それが常に芦名家に有利にはならぬ」
「うむ、必ず変わる」
「あの家にとっての追い風が」
「そこを衝く、よいな」
「それを待ちますか」
「待つのも戦であろう」
「はい」
その通りだとだ、成実は答えた。
「ましてこの度はです」
「待てる戦であるな」
「当家は既に猪苗代の城を手に入れています」
「芦名家にとって喉に匕首を突き付けておる」
「芦名家は後がないですが」
「我等はは猪苗代の城があれば」
それでというのだ。
「芦名家に刃を突き付けたままじゃ」
「左様ですな」
「だからな」
「焦る戦ではないですな」
「後がないのは芦名家じゃ」
敵である彼等だというのだ。
ページ上へ戻る