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戦国異伝供書

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第百十六話 摺上原の合戦その四

「やはりな、そこはわしも手本にしてな」
「やっていかれますか」
「そうする、しかし今はな」
「戦に専念されますな」
「猪苗代家がこちらについたからな」
 それでというのだ。
「猪苗代に入るぞ」
「あの城に」
「そしてじゃ」
 そのうえでというのだ。
「戦う、しかしな」
「敵も来ますな」
「もう既に黒川の城を出ているとのことじゃ」
 芦名家の本城であるこの城をというのだ。
「そしてじゃ」
「こちらに来ていますな」
「ならばな」
「そこで雌雄を決しますな」
「我等は猪苗代の城に入るが」
 しかしとだ、政宗はこうも話した。
「出来れば高森山にまで出てな」
「あの山に本陣を置いてですな」
 ここで茂庭が言ってきた。
「そうしてですな」
「日橋川を挟んでじゃ」
「川の守りを使ってですな」
「戦いたいが」
「それは出来ませぬな」
「おそらく我等が城に入ってな」
 猪苗代のその城にというのだ。
「そこでじゃ」
「芦名家も川を渡り」
 その日橋川をというのだ。
「高森山に布陣してな」
「我等と対しますな」
「軍勢は急がせておるが」
 それでもというのだ。
「そこまではじゃ」
「出来ませぬな」
「うむ、だから猪苗代の城に入ってな」
「そこを拠点にしてですな」
「戦う」
 その様にするというのだ。
「よいな」
「はい、確かにあの山を手に入れますと」
「当家はさらに有利になるな」
「そして皮を挟んで戦えれば」
「そうであるな、しかしな」
「それは間に合わぬので」
「だからじゃ」
 それでというのだ。
「そこまでで戦う」
「そうされますか」
「これよりな、我等はこれまで五家に勝ち中新田で大崎家に勝ってな」
「郡山でも勝ちましたな」
「そしてここで勝てばな」
 まさにというのだ。
「奥羽の覇者になる、しかしな」
「それでもですな」
「高森山までは今はな」
「至れませぬな」
「それが残念であるが」
 それでもというのだ。
「戦うぞ」
「さすれば」
「それならそれで仕方ない」
「城を足掛かりにしますな」
「それでも全く違う」
 城を足掛かりに出来ればというのだ。
「ではな」
「そうして戦いますな」
「これよりな、では城に向かうぞ」
 こう言って政宗は軍勢を猪苗代にまで急がせた、そうして城に入るとすぐに西の高森山の方を見た。そこに芦名家の軍勢が迫っていた。
 その山を見つつ政宗は諸将に話した。 
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