おっちょこちょいのかよちゃん
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97 ピアノで練習
前書き
《前回》
赤軍は護符の在処を探し出す為に戦争を正義とする世界の長にある事を依頼する。そしてクリスマスの合唱コンクールの練習をするかよ子は笹山の提案で笹山に藤木と三人で笹山の家でピアノで音取りをしながら練習する事にしたのだった!!
かよ子は帰宅後、母に報告する。
「お母さん、今度の日曜、笹山さんの家に行く事にしたよ。一緒に歌の練習するんだ」
「あら、いいわね。頑張ってね」
「それに笹山さんちはピアノがあるから、ピアノ使って練習するんだよ」
「それなら、いい練習になるわね」
「うん!」
一方、藤木は今度の日曜が楽しみで胸を躍らせていた。
(今度の日曜は笹山さんと一緒に練習だ・・・。楽しみだなあ・・・)
藤木は歌の練習をした時の事を妄想した。笹山から「藤木君、いい声してるわね」「凄い上手くなったわ、藤木君」などと言われる場面を想像するのであった。
さりは仕事を終えて家に帰る。疲れて料理するのが面倒だったので、蕎麦屋へ寄って天そばを食べる事にした。
(杖に杯、護符、か・・・)
さりは母から引き継いで異世界の護符の所有者となった。だが、杖の所有者や杯の所有者と異なり自分には母から護符を引き継いでからは直接敵が襲い掛かって来た事はない。いつ自分が狙われるのかは時間の問題だ。
(ただ、奴等は護符が名古屋にあるのに気づいていないだけかもしれない・・・。健ちゃんの言う通り探しにまた日本中を攻撃してくるかも・・・)
さりはそんな事を考えながら天そばを食べた後、帰宅するのであった。
12月に入った。かよ子のクラスでは風邪で2名ほど、欠席していた。だが、欠員がいても歌の練習は中止にはならない。かよ子はまた必死に独唱部分を中心に練習に励む。
「それでは行きますよ。さんはい!」
丸尾が指揮棒を振る。
「おーお~きなのっぽの古時計、おじいーさんの、時計ー♪百年いつも、動いーていた、ごじま~んのとーけいさ~♪」
そしてかよ子が担う1番の独唱部分をかよ子が一人で歌う。
「おじい~さんの~、生まれた朝に、やって~来たとーけいさ~♪」
(よかった、上手く歌えた・・・)
そして続きを皆で歌う。2番を担う笹山も、3番を担う大野も順調だった。
「今は、もう、動かない~~~・・・、その、と~け~い~・・・♪」
3番の最後の節はかなりスローとなる。その事には皆留意しなければならなかった。
「ハイ、では、もう一度行きましょう!」
練習は5時まで続いた。
日本赤軍のリーダーである房子はパレスチナの地を去ろうとする。
「総長。本部をレバノンに移すとはどういう意味ですか?」
西川純が質問する。日本の静岡・清水にある高校の文化祭でテロを起こした人物であり、さらには杖の奪取こそ失敗はしたもののそこにいる高校生男子の強力な異能の能力の複製する事に成功した男である。
「今、晴生が東アジア反日武装戦線のメンバーと共に逮捕されているのよ。もしかしたら晴生は警察に無理矢理私達の事を吐かされるかもしれないわ。そうなると、インターポールも動き出す恐れもあるかもしれないの。今の本部ではいつ突き止められるか分からないから攪乱させるのよ」
「ですが、あの異世界との入とは離れてしまうのですが、大丈夫ですか?」
「心配ないわ。向こうには出入口の場所を伝えておいたから、新しい本拠地の近くに移動してくれるわ。そして本格的に護符の在処を見つけ出させてもらうのよ」
「はい」
赤軍達はレバノンへと向かった。
日曜日、藤木は頭がクラクラしていた。更にはいつもより鼻が詰まるし、くしゃみも止まらない。おまけにいつもより寒気がする。
「茂、大丈夫かい?顔赤いよ」
母が心配する。
「へ、平気だよ。それに、今日、笹山さんちで一緒に歌の練習するんだ・・・」
「何言ってんの!熱計りなさい!」
藤木の母は体温計を用意した。藤木の熱は37.9℃だった。
「熱もあるじゃない。残念だけど、笹山さんには私から連絡しておくから今日は休みなさい!」
「そんな、嫌だよ!」
「我儘言うんじゃないよ!寝てなさい!!」
結局藤木は最高の日になると思われたこの日曜が風邪のせいで全てが台無しとなってしまった。
(笹山さんに会いたかったのに・・・。歌の練習、一緒にしたかったのに・・・)
藤木は布団に包りながら泣くしかなかった。
かよ子は笹山の家に来ていた。
「笹山さん、こんにちは」
「こんにちは、山田さん。それじゃあ、練習頑張ろう」
「うん、あ、藤木君は?」
「それが、藤木君、風邪ひいちゃって来られなくなっちゃったんだって」
「そうなんだ・・・」
かよ子は藤木が気の毒に思った。なにしろ折角好きな女子と一緒に練習できるチャンスだというのに感じな時に風邪を引いてしまうなんてとても運が悪いとしか言いようがない。
「藤木君、心配だね・・・」
「ええ・・・」
笹山も藤木が心配に思った。まさか藤木が練習が嫌で仮病でも、と邪推したが藤木は自分が好きなんだから寧ろ喜んで来るはずである。
(そうよね、私の考えすぎよね・・・)
二人はピアノを使った練習を始めた。ピアノがあると音程が分かりやすくていい練習になる。
「山田さん、音も結構合ってるわ」
「ありがとう。笹山さんもいい声だったよ」
「ありがとう」
笹山の母が部屋に入って来た。
「二人共、少し休憩しましょう。お茶の準備ができたわよ」
「あ、ありがとうございます・・・!!」
かよ子は紅茶とクッキーを御馳走になった。
「このクッキー私とお母さんで作ったのよ」
「うわあ、凄いね」
「私、お菓子作るの大好きで、今度ケーキも作ろうかなって思ってるの」
「笹山さんはピアノ上手いし、お菓子も作れるし、おっちょこちょいの私と大違いだよ・・・」
「そんな事ないわよ。ピアノなら私よりも城ヶ崎さんとか穂波さんとかの方が上手だと思うわ。お菓子作りもまだ一人で何でもできるわけじゃないし・・・」
笹山は謙遜した。
「そ、そうなんだ・・・」
ピアノと聞くと、かよ子はふと東京にいる杯の所有者の事が頭に浮かんだ。彼女もピアノが好きでピアニストを目指している。いつの日かの前のピアノのコンクールでは優勝して、関東代表になった。ついこの間、赤軍と組んだ東アジア反日武装戦線の人間に襲われたが、隣人のおばさんの次女の介入もあり何とか救われた。彼女は今どうしているのだろうか・・・。かよ子は心配になった。
「山田さん、どうかしたの?」
「あ、いや、ボーっとしちゃったよ。ははは・・・」
かよ子は慌てて誤魔化した。
「あ、かず子」
笹山の母は娘を呼ぶ。
「今日来れなかった藤木君にもクッキーを分けてあげに行ったら?藤木君も今日来る予定だったでしょ?」
「うん、そうね、私も同じ事を考えてたの」
「それがいいね。藤木君も喜ぶよ」
かよ子と笹山はその後、練習の続きを20分ほど行った後、笹山家を出る事にした。かよ子は帰宅の為に、笹山は藤木の家へクッキーを届ける為に。
「藤木君、元気になってくれるといいな」
「笹山さん、もしかして、笹山さんも藤木君が好きになってるんじゃ・・・?」
「え・・・!?」
笹山は動揺した。
「い、いや、そんな事ないわよ。私はただ、藤木君の事を友達の一人として大事に思ってるだけよ・・・」
「そうなんだ・・・」
途中の分かれ道、かよ子と笹山は別れた。
「じゃあね~」
藤木は笹山に遭えずに寂しく、安静にしていた。
(笹山さんに遭いたかったのに・・・)
その時、ドアのインターホンが鳴った。藤木の母が出る。暫くして、母が部屋に入って来た。
「茂、笹山さんがアンタにクッキー持って来てくれたよ」
「笹山さんが・・・!?」
「うん、茂の事、心配してたよ」
藤木は笹山が自分の事を心配しに来てくれた事に感謝の意を示すのだった。
(笹山さん、ありがとう・・・!!)
後書き
次回は・・・
「護符の在処」
本拠地の移転に成功した赤軍は護符を狙う。合唱コンクールの練習をする中、かよ子はあるニュースを聞いて恐ろしくなる。それは異世界の敵が各地で暴れ出した事だった・・・!!
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