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八条学園騒動記

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第五百九十一話 巨匠の嫉妬その十

「上手くいかないて」
「結局甥御さんの自由にある程度させてね」
「関係修復されたね」
「そうなったね」
「本当にね」
「やっぱりお付き合いしにくい人だったんだよ」
 ジミーはあらためて言った。
「ベートーベンって」
「そのことは間違いないね」
「そしてそのせいでお友達いなくて」
「結婚も出来なくて」
「気の毒って言うなら気の毒だね」
「そうだね」
「音楽の才能は凄かったけれど」
 このことは事実だった。
「人間としてはね」
「お付き合いしにくい人で」
「孤独だったんだね」
「ずっとね」
「ゲーテとも大喧嘩して」
 同時代にしかも交流がある範囲でこの偉大な人物達がいたということもまた歴史の奇跡か悪戯であると言えるだろうか。
「野獣って言われたしね」
「凄い言い様だよね」
「哀れむべき野獣だってね」
「そんな人だと言われるね」
「そうした性格だとね」
「耳が悪かったけれど」
 ジョルジュはこのことも話した。
「あれって病気のせいらしいね」
「今だったら治ったみたいだよ」
「そうなんだ」
「二十世紀にはね」
 もうこの世紀にはというのだ。
「そうだったみたいだよ」
「そんな病気だったんだ」
「何でも梅毒のせいで」
「その病気のせいだったんだ」
「それで耳管が狭くなっていて」
「そこのお肉がどうかなっていたんだ」
「肥大化していて」
 それでというのだ。
「塞がっていてね」
「聞こえなくなっていたんだ」
「だからね」
 原因はわかっているからだというのだ。
「今だとね」
「二十世紀でもだね」
「治っていたみたいだよ」
「そうだったんだ」
「このことも不幸だったね」
「その不幸に打ち勝ったところは凄いけれどね」
 このことはというのだ。
「それでもね」
「人としてはね」
「どうしてもね」
「問題の多い人だったね」
「そのことは事実だね」
 二人でこう話した、そして。
 店の中で動きがあった、新たな客が店の中に入って来たのだ。しかもその数は十人はいた。その来客を見てあった。
 ジミーは目を厳しくさせてジョルジュに言った。
「お喋りはね」
「これで終わりだね」
 ジョルジュも応えた。
「そうだね」
「うん、注文をね」
「聞きに行かないとね」
「それぞれね」
「注文を聞いてね」
 そしてというのだ。
「そのうえでね」
「キッチンに行って」
「出してもらおう」
「それじゃあね」
 二人でこうしたことを話してだった。
 すぐに彼等のところに行った、そのうえで注文を聞いてそれをキッチンに言ってすぐにその注文のものをテーブルに持って行った。


巨匠の嫉妬   完


                   2020・10・9 
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