八条学園騒動記
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第五百九十一話 巨匠の嫉妬その三
「徹夜もざらで」
「ずっと描いていたんだね」
「もう好きじゃないとね」
「出来ないね」
「そして描いて」
そしてだったのだ。
「死んだんだよ」
「漫画に生きて漫画に死んだ」
「そうだったんだ、そしてね」
それでというのだ。
「あれだけ多くの作品を残したんだ」
「偉人だね」
「まさにそうだね」
「うん、そう思ったよ」
ジョルジュもこう答えた。
「僕も」
「本当に嫉妬はね」
「嫌なものだね」
「けれど嫉妬でも昇華出来る」
「自分でどうするかだね」
「ある人を凄いと思ったら」
それならというのだ。
「自分もね」
「努力することだね」
「そうすればね」
「自分もよくなるね」
「つまり相手が凄いと思ったら」
それならというのだ。
「もうね」
「素直にそのことを認めて」
「そしてね」
そのうえでというのだ。
「自分もそうなろう、若しくはね」
「超えようだね」
「手塚治虫はそう思ってね」
人気のある作品が出るとそう思う時があったというのだ、いがぐり君然り巨人の星然りドカベン然りであった。
「自分の出来ることでね」
「描ける漫画でだね」
「超えようとしていたんだ」
「そういうことだね」
「うん、ただね」
ジミーはここでこうも言った。
「僕は信じられないことがあるよ」
「信じられないこと?」
「いや、手塚治虫ってもう不動の地位を築いていたんだよ」
日本の漫画界においてだ。
「頂点にいたともね」
「言ってよかったよね」
「もうデビュー当時から」
その頃からというのだ。
「数多くの作品がヒットして単行本が飛ぶ様に売れて」
「凄かったんだね」
「アニメ化とか実写化もされていて」
その作品達がだ。
「もうね」
「不動の地位を築いていたんだね」
「そうだったんだ、そしていつも沢山の作品を描いていたんだ」
「忙しくもあったんだ」
「殆ど不眠不休の位ね」
「あれっ、頂点にいて滅茶苦茶忙しいなら」
ここでジョルジュも気付いた。
「嫉妬することなんて」
「ないよね」
「頂点にいて誰に嫉妬するのかな」
「普通はそう思うよね」
「それにね」
ジョルジュはどうにもという顔でさらに言った。
「忙し過ぎる位忙しいと」
「もう満足してね」
「人ってかなり勉強したり働いていたら」
それこそというのだ。
「そこで満足するよ」
「自分はかなりやってるって思ってね」
「それで頂点にいたら」
「余計にだね」
「嫉妬なんてしないけれど」
「だから自分より人気が出る、並び立つっていう作品が出たってね」
その様にというのだ。
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