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戦国異伝供書

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第百十三話 鬼計その八

「勝つぞ」
「何としても」
「われらもまた刀を抜いて戦うが」
「そうもしてですな」
「勝つ、この戦もな」
「さすれば」
「本宮の方に向かう、敵はおそらく高倉城をな」
 伊達家の城の一つであるこの城をというのだ。
「攻めて来る」
「まずはですな」
「それからはじまる、城は守りに徹し」
 そうしてというのだ。
「攻めぬ様にな」
「徹底させますな」
「そして敵を引き寄せさせ」
「その間に我等はですな」
「観音堂山に入り」
「そこに陣を敷きますか」
「そうして戦う、後は瀬戸川を渡り」
 阿武隈川の支流のこの川をというのだ。
「戦うぞ」
「さすれば」
「敵の数は多い、本陣にも来る」
 政宗がいるそこにもというのだ。
「だからな」
「それで、ですか」
「わしは本陣を守る、しかしな」
「何かあれば」
「その時は頼む」
 こう成実に話した。
「よいな」
「それでは」
「うむ、まずはな」
「本宮にですな」
「向かうぞ」
 こう言ってだった。
 政宗は兵を本宮に向けた、そうしてだった。
 茂庭良直の軍勢と合流した、そのうえで。
 既に顔は皺だらけで髪の毛も白くなっている彼に言った。
「爺にはこの戦でな」
「死ぬ気で、ですな」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「戦ってもらう、七千の者全てがじゃ」
「死ぬ気で戦う」
「そして死んでもな」
 それでというのだ。
「戦の場に一人でも多くじゃ」
「立っていればいいですか」
「そうした戦いとなる」
「そうですか」
「無論わしも戦う」
「殿もですか」
「刀を抜いてな」
 そうしてというのだ。
「戦う」
「そうですか、では」
「お主にも頼む、死ぬ気でじゃ」
「わかり申した、この老骨に鞭打って」
 茂庭は政宗に述べた。
「敵を一人でも多く倒します」
「頼むぞ、そして死んでもと言ったが」
「それでもですな」
「死中に活ありじゃ、だから川も渡ってな」
 瀬戸川その川をというのだ。
「背水の陣もな」
「敷きますな」
「そうする、多くの兵をそうしてわしもじゃ」
「川を渡られますか」
「本陣は観音堂山に置くが」
 それでもというのだ。 
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