ハイスクールD×D イッセーと小猫のグルメサバイバル
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第71話 忙しい日常!イッセーと小猫、初めての……
前書き
グルメ細胞の悪魔に弱い宿主を殺すというオリジナル設定があるのでお願いします。
side:小猫
センチュリースープを作る事を決めた私はそれを完成させる為にまず味を知らなければなりません。なので皆には悪いのですが最後の一滴を頂こうと思います。
「そ、それでは……」
皆の好奇心が詰まった視線に罪悪感を感じながらも必ずスープを完成させて皆に飲ませて見せる、と心の中で思いその一滴を口の中に入れました。
「……っ!?」
す、凄い!たった一滴なのにいくつもの食材の味が舌に広がっていきました。濃厚なお肉や新鮮な魚、爽やかな野菜の味、あまりにも味が多すぎてほとんど分からなかったけど凄く美味しいです!
(これはまさに千年分の味がギッシリと詰まった最高のスープ……!美味しすぎて笑みを浮かべちゃいそう……)
私がスープの味の余韻に浸っているとなにやらクックックと笑いをこらえる声が聞こえてきました。見て見るとイリナさんが必至で口を押えていました。
「イリナさん、どうかしたんですか?」
「こ、小猫ちゃん……自覚無いの?す、凄い顔してるよ……うぷぷっ」
「失礼な人ですね。なにがそんなに……皆さん?」
よく見るとイリナさん以外の皆も何やら笑いをこらえていました。部長や朱乃さんですら笑いをこらえており祐斗先輩とイッセー先輩は苦笑いしながらどう言えばいいかな……と気まずそうにしています。笑っていないのはココさんや姉さま、節乃さんくらいです。
「小猫ちゃん、落ち着いて鏡を見てくれ」
「鏡ですか……?」
私はイッセー先輩が渡してくれた手鏡を覗き込みました。するとそこに映っていたのは……
「な、なんですかコレは~っ!?」
そこにはだらしない笑みを浮かべた私の顔が映っていました。いやコレはもう笑みというよりはニヤケ顔ですね。
「や、やだ!見ないでください、イッセー先輩!」
大好きなイッセー先輩にこんなだらしない顔を見られるなんて耐えられません!私は何とか顔をもとに戻そうとしますが表情筋が固定されたように固まってニヤケ顔を変えられないんです。
「そ、そんなに美味しかったの?正直女の子がしちゃいけない顔になってるけど……」
「だって!勝手にこうなってしまうんですよ!直したくても直せません!」
「怒ってるのか笑ってるのか分からないね」
部長が若干引いた様子でそう聞いてきますが顔が直らないんです!祐斗先輩はそんな私の様子を見て苦笑していました。
それから暫くすると漸く顔の表情筋を動かせるようになりました。
「ううっ……こんな変な顔を皆に見られたらもうお嫁には行けません……」
「だ、大丈夫だって!俺が貰うから!」
「意外と可愛かったよ。私はそう思うにゃん」
イッセー先輩と黒歌姉さまがフォローしてくれますが、それでも落ち込んでしまいます。
えっ?何気なく先輩にプロポーズされてるのに反応しないのかって?そんなの今さらですよ、私が嫁ぐ先はイッセー先輩以外にいる訳ないじゃないですか。
「あっはっは!思い出しただけでもお腹が痛いよ!うぷぷっ!」
「イリナさん!いくら何でも笑いすぎなんじゃないですか!」
「だ、だって!あんななっさけない顔されたらもう無理だって~!」
「こ、この!貴方も同じ顔にしてやりますよ!」
「なにすんのよ!」
未だに笑っていたイリナさんの顔を掴んで変顔にしてやりました。でもイリナさんも負けじと私の顔を引っ張って変顔にしてきます。
「お、おいイリナ……」
「あらら、二人ともヒートアップしちゃってるし」
「結局二人とも変顔になっちゃってるわね」
ゼノヴィアさんはオロオロとしていてリンさんとティナさんは私達を見て苦笑していました。
「そ、それで小猫ちゃん。センチュリースープの味は分かったのか?」
「あ、はい。味の方は覚えています。あんな美味しいスープは何年たっても忘れられませんよ」
イッセー先輩にセンチュリースープの味はどうだったと聞かれましたので私は味はしっかりと覚えたと返します。
「じゃあ明日からスープ作りの開始ね」
「えっ?もうですか?」
「当然にゃん。白音は唯でさえ経験が少ないのだから直ぐに始めないといけないにゃん」
確かに姉さまの言う通りですね。私はそう思いましたが悪魔の仕事はどうすればいいのでしょうか?それに調理する場所もないですし……流石にイッセー先輩の家のキッチンを独占するわけにはいきません。
「あの、部長……」
「分かっているわ、小猫。悪魔のお仕事は当分休んでもいいから貴方はやるべきことをしなさい」
「いいんですか?」
「ええ。可愛い眷属がしたいことを見つけたのだからそれをフォローするのは王として当然の義務よ」
「わたくし達も協力しますわ」
「うん、だから小猫ちゃんは気兼ねなくセンチュリースープを作る事に専念してね」
「部長、朱乃先輩、祐斗先輩、ありがとうございます……!」
私は嬉しくなって部長にギュッと抱き着いちゃいました。この人の眷属になれて本当によかったです。
「なら調理場も必要だな。スイーツハウスの横にもう一軒調理専用の建物を建ててもらうか」
「い、いえそこまでしてもらう訳には……」
「いやいや、センチュリースープを作るっていうのなら必要経費だ、遠慮することはないさ。丁度親父の所に向かってるし話をしておくよ」
「ありがとうございます、イッセー先輩。このご恩はスープの完成で返させてもらいます!」
「その意気だぜ、小猫ちゃん!」
調理する場所は先輩が用意してくれるようです。これはなんとしてもスープを完成させないといけませんね。
「良かったね、白音。私も節乃さんの手伝いで仕込みとかあるから毎日は教えられないけどできる限り協力はするよ」
「ならいっそ仕込みの際に小猫も調理場に連れてくるといいじょ。見る事も修行になるからのぅ」
「えっ?いいの?節乃さんの調理場には滅多に人を入れないのに」
「あたしゃも小猫には期待してるからのぅ。特別じゃよ」
「移動は任せてください、小猫さん。私がスイーツハウスからグルメタウンまでの移動は毎日でも連れて行ってあげますから」
姉さま、節乃さん、そしてルフェイさん。沢山の人が私に協力してくれることに私は泣いちゃうくらい嬉しくなりました。
「もし食材の調達が必要なら僕も協力するよ。イッセーも学業があるからずっとはこちら側にいられないし、そうすれば無駄なく食材を確保できるだろう」
「あたしもハーブとか必要なものがあったら言ってね。用意するし」
「ココさん、リンさん……」
更に美食屋であるココさんやリンさんも手伝ってくれると言ってくれました。
「私達ではあまり協力できることは少ないだろうが応援はするよ。頑張ってくれ、小猫」
「まあ小猫ちゃんはライバルだけど私も応援するよ。出来る事があるのなら協力するから」
「あたしもそれなりには食材に詳しいからちょっとは力になれると思うよ。その代わりと言っては何だけどスープが完成したらそれまでの敬意を取材させてもらってもいい?」
「うーん……まあスープが完成したらいいですよ」
「やった!めちゃんこ美味しいスクープがゲットできそうね!人間国宝や四天王も認める天才少女!センチュリースープ完成までの軌跡!タイトルはこれで決まりね」
「き、気が早すぎです!」
ゼノヴィアさん、イリナさんも応援してくれました。ティナさんは既にスクープをゲットした気でいたので気が早すぎだと思いましたが……ポジティブに考えればそれだけ期待してくれているという訳なのでしょうか?
「私、必ずセンチュリースープを完成させて見せます!そしたら皆で飲みましょう!」
『応っ!』
私の言葉に全員が腕を突き上げて返事を返してくれました。絶対にセンチュリースープを完成させて見せます!
―――――――――
――――――
―――
「おっ、親父の別荘が見えてきたな」
それから間もなく一龍さんがいる別荘に到着した私達はリムジンクラゲから降りました。すると一龍さんが出迎えてくれました。
「戻ったか、イッセー。どうやら無事に指を治すことができたようじゃな」
「親父!センチュリースープの捕獲が修行だって聞いてないぞ!」
「そりゃ聞かれんかったからのう。まあ済んだことをいつまでもグダグダと気にするもんじゃないぞ」
「ったく!こっちは色々と大変だったからな!」
イッセー先輩が一龍さんに突っかかっていきました。顔は怒っているように見えますがとても楽しそうです。一龍さんの前では先輩も年相応の態度を取るんですよね。可愛いなぁ。
「ワウッ!」
「うおっ!?テリー!?」
すると一龍さんの背後からテリーが現れてイッセー先輩に飛び掛かりました。
「ウォォウ!!」
「あはは!くすぐったいぞ、テリー!それになんか少し大きくなっていないか?」
イッセー先輩の顔を嬉しそうに舐めるテリーは確かに別れた時より少し大きくなっていました。こんな短期間で成長したのかな?
「流石はバトルウルフじゃな。美味いモノを食べさせて鍛えてやったら短期間でスクスクと成長したぞ」
「それにしても成長が早くないかしら?前は小猫ぐらいに小さかったのに今じゃ小猫を乗せれる位には成長しているわ」
「私で大きさを表現しないでください」
一龍さんの説明に部長はテリーの成長を私を使って表現しました。でも一週間程度であんなに成長するなんて思ってもいませんでした。後一年くらいたてばイッセー先輩よりも大きくなりそうです。
「お前も逞しくなったな、テリー。この調子だとあっという間に身長を抜かれてしまうかもな」
「ゴアアアッ!」
「うおぁっ!?オブも預けたんだっけか!お前も大きくなったな、主に舌が」
「アアアッ」
オブサウルスことオブもイッセー先輩を嬉しそうに舐めていました。オブもテリー程ではないですが成長していますね。舌も伸びていましたし……
「セツのんにも世話になったのぅ」
「いやいやイチちゃん、イッセーも立派になったじょ。それに期待できる子も見つけたんじゃ」
「ほう、それはまた興味深い話じゃな」
「そうだ、それについて親父に相談があるんだ」
節乃さんと会話していた一龍さんにイッセー先輩が声をかけました。テリーとオブに舐められまくっていたので顔が唾液まみれでしたが。
そしてイッセー先輩は先程のセンチュリースープの件で調理場が欲しいと一龍さんに相談しました。
「……という訳なんだ、親父」
「ほう、君がセンチュリースープを……」
一龍さんはジッと私を見ていました。やっぱり私では力不足に感じるのでしょうか?
「……よし分かった。調理場の建設は任せておけ。費用もワシが出しておこう」
「いいのか?」
「ふふっ、ワシなりの親心じゃよ。それにしても成長してからワシに頼み事などしなくなったイッセーが頼ってくれるとは……それだけ小猫の事が大事なんじゃな」
「……まあな」
先輩は照れ臭そうに肯定してくれました。私は嬉しくなって先輩の腕に抱き着きました。
「それともう一つ頼みがあるんだ……黒歌」
「にゃん♪」
イッセー先輩が姉さまを呼ぶと、姉さまはいつの間にか先輩の横に立っていて私と同じように先輩の腕に抱き着いていました。でも直ぐに先輩から離れると一龍さんに頭を下げて挨拶をします。
「初めまして、一龍さん。私は白音……小猫の姉の黒歌と言います」
「ほう、小猫の姉か……初めましてじゃな、黒歌。ワシは一龍、セツのんからスタッフがいると話だけは聞いておったよ。君のような別嬪さんだとは思ってもいなかったがな。しかしふむ……」
一龍さんはイッセー先輩と姉さまを交互に見てニヤっと笑みを浮かべました。
「なんだよ、その笑みは」
「なるほどなるほど……イッセー、お前食材よりも女性をゲットする才能の方があるんじゃないのか?」
「変な事を言うんじゃねえ!」
「にゃはは……」
茶化す一龍さんに先輩がツッコミを入れました。でも私もそれには同意見なんですよね。姉さまも顔を赤くしながらまた先輩に抱き付きましたし、よっぽど鈍感でもなければ気が付きますよね。
「それでもう一つの頼み事は何じゃ?」
「ああ、ホテルグルメのオーナーと話がしたいんだ。それというのもな……」
先輩は私と黒歌姉さまが姉妹で父様がこの世界の人間ではないのか、という説明を一龍さんにしました。
「なるほど、蝶以外の七色に光る昆虫を見つけたのか。そうなると確かにお前の言う通り別の種類の七色昆虫がいてもおかしくはないな。更に小猫にグルメ細胞が眠っていたとなれば親から譲り受けた可能性は大きい。何せ向こうの世界にはグルメ細胞など無いんじゃから」
一龍さんの言う通り私達の世界にはグルメ細胞はありません。ですので私が最初からグルメ細胞を持っていたのは人間であった父様がこちら側の住人であったからという可能性が高いです。
先輩も同意見だと言い頷きました。
「ああ、俺は小猫ちゃんと黒歌のお父さんは異次元七色昆虫によって俺達の世界に来たんじゃないかと思うんだ」
「分かった。ワシの方から言っておこう」
「済まないな」
これで父様が働いていたかもしれないホテルのオーナーさんとお話が出来ますね。今から楽しみです。
「そういえば親父、修行を終えたらグルメ界に行っていいって言っていたよな。アイスヘルを攻略したんだからもう大丈夫だよな?」
「何を言っとる、お前などまだまだじゃ」
先輩はもうグルメ界に行けるか一龍さんに聞きましたが、彼は大笑いしてそれを否定しました。
「どうしてだよ?」
「セツのんから聞いたがお前、吐く息が白かったようじゃないか」
「それがどうかしたのか?」
「お前がアイスヘルの環境に適応できていない証拠だと言っておる。グルメ界の気候や環境は直ぐに変化する、それら全てに対応できなければグルメ界を生き抜くことは出来ん」
「うむむ……」
なるほど、確かに先輩の吐いていた息は白かったので先輩ですらアイスヘルの環境には完全に適応できていなかったわけですね。私も適応できるようにならないといけませんね。
「ほれ、これを受け取れ」
「何だ、この紙は?」
「これはお前にやってもらう依頼じゃ。それを全てこなさない限りはグルメ界には行かせんぞ」
「うげぇ!?こんなにもあるのかよ!先は長いなぁ……」
先輩がげんなりとした様子でしかめっ面になりました。これはとても過酷な修行になりそうですね。
「どうした?お前のGODへの熱意はその程度か?」
「はぁ?こんなもんあっという間にクリアして親父を驚かせてやるよ!」
「ふふっ、期待しとるぞ」
でも一龍さんに煽られると先輩はムキになった子供みたいな反応でそう返しました。
「……なあ、親父」
「うん?どうした、イッセー?」
「親父は昔、俺が瀕死の状態になった時グルメ細胞を移植したって話していたよな。でも本当は違うんじゃないのか?グルメ細胞は最初から俺の中にあった……そうじゃないのか?」
イッセー先輩はライフで話してくれた自身の過去について一龍さんに聞きました。それを聞いた一龍さんは真剣な表情になって先輩に話しかけます。
「……何故そう思う、イッセー?」
「小猫ちゃんがそうだったからだ。あの時俺にグルメ細胞を移植しなくても治療は出来たはず、それに親父は俺がグルメ細胞を移植するのを反対していた。それなのに親父が急に考えを変えて俺にグルメ細胞を移植するとは思えない」
「……等々このことを話す時が来たか」
「そう答えるって事は肯定と受け取っていいんだな」
「うむ」
イッセー先輩の問いに一龍さんは否定することなく答えました。
「イッセー、お前は生まれながらのグルメ細胞所持者じゃ。初めてお前に会った頃、ワシは直ぐに分かったよ」
「何でそれを俺に話さなかったんだ?」
「ふふっ、未熟なお前ではグルメ細胞を使いこなせないと思っていたからじゃ。その頃のお前は力に固執していたし、グルメ細胞を得れば更に無茶をするのは必然だったからじゃ」
「ぐっ、言い返せねぇ……」
昔の先輩は焦りから無茶をしていたと聞きました。一龍さんはイッセー先輩の身を案じてグルメ細胞について話さなかったんですね。
「あの時の光景を今でも忘れはせん。自分よりも遥かに強い猛獣の息の根を止めてその体を貪り食っていたお前の姿は、まさに食欲に支配された鬼そのものじゃった」
「俺がそんなことを……」
「仕舞いにはワシにまで襲い掛かってきたんじゃ。まあ軽くノシてやったがな」
「ああ、目を覚ました時すさまじく頭が痛かったのは俺も覚えているよ」
イッセー先輩の過去にそんな事があったんですね。襲ったのが一龍さんだったから良かったもののそれが普通の人間だったら取り返しのつかない事になっていました。
「でもイッセー先輩も最初からグルメ細胞を持っていたという事は先輩のご両親もどちらかがこちら側の世界の人間なのでしょうか?」
「それは俺も考えていた。だが父さんも母さんも両親を亡くしていると聞いたことがある。他に親戚もいないしそれを確かめるのは難しそうだな」
「イッセーの両親の事はワシにも分からんが、話せることは話したぞ」
「ああ、ありがとうな。親父」
私はイッセー先輩のご両親のどちらかがこの世界の人間じゃないのかと思いました。先輩も同意見だったようですが、親戚などはいないようですし確かめるのに苦労しそうです。
とにかく一龍さんが知っていることは聞けたようですね。
『一龍。それだけではないのだろう?』
「ドライグ……?」
すると今まで黙っていたドライグが私達にも聞こえるように会話してきました。珍しいですね。
「何が言いたいんじゃ、ドライグ」
『惚けるな、イッセーの中にいる鬼の事だ。お前はあいつについて何か知っているんじゃないか?』
「……イッセー、お前自身の中にいた存在と会ったのか?」
「ああ、俺の精神世界で赤い鬼に会ったぜ。会話どころかボコボコにされたがな」
「まさか宿主に語り掛けてくるどころかボコるヤツがいるとはな……驚いたわい」
一龍さんはヤレヤレと頭を押さえていました。この反応は彼はイッセー先輩の中にいる鬼について知っているという事でしょうか?
「イッセー、先ほど話したお前にグルメ細胞が宿っていたことを話さなかったもう一つの理由がある。それはお前がグルメ細胞の『悪魔』を宿していたからだ」
「悪魔……?」
一龍さんはイッセー先輩を見て悪魔が宿っていると話しました。それってどういう事なのでしょうか?
「悪魔ってどういうことですか?」
「悪魔とはグルメ細胞に宿る食欲の事じゃよ」
「グルメ細胞に宿る食欲だって?」
一龍さんから聞いたグルメ細胞に宿る悪魔、一体それはどんな生き物か想像もつきません。
「グルメ細胞は美味い食材を食べれば強くなっていく。それは知っておるじゃろう。その中に稀にグルメ細胞の持つエネルギーを具現化することが出来る者もいるんじゃ。例えばイッセー、お前の放つフォークやナイフ、あれはイメージではなく実際にグルメ細胞のエネルギーを具現化して放っておるんじゃよ」
「そ、そうだったのか……」
なるほど、先輩が放つナイフやフォークは先輩の持っているグルメ細胞のエネルギーを具現化したモノだったんですね。今まではイメージだと思っていましたが物理的に存在していたということですか。
「じゃがその中でも強大な力を秘めたグルメ細胞が意志を持ち具現化したのがグルメ細胞の悪魔じゃ。奴らは食欲そのものであり様々な姿を持ちそれぞれが決まった名を持っておる」
「じゃあグルメ細胞を持っている人にはその悪魔が宿っているんですか?」
「いや、誰でも持っている訳じゃない。ごく一部の保有者に宿ると言われている」
一龍さんの説明を聞いて私はグルメ細胞の適合者なら全員が悪魔を宿しているのかと聞きましたが、一龍さんはごく一部しか宿していないと話しました。
唯でさえグルメ細胞を適合できる人間は少ないみたいなのに、そこからまた限られた人間しか宿していないみたいですね。
「それで俺にグルメ細胞が宿っていたことを隠していたもう一つの理由は何なんだ?その悪魔に関係しているのか?」
「うむ、まさしくそうじゃ。お前に宿っていた悪魔はとても強力な者じゃった。間違いなくお前の体が耐えられないほどの強さと食欲を持っていたんじゃ。幸いお前の神器と反発して力が弱まっておったからお前は生きれたがそうじゃなければまず死んでいたじゃろう」
「結果的に言えば赤龍帝の籠手が無ければ俺はグルメ細胞に殺されていたのか……」
「そうじゃ」
今はジュエルミートという一級品の食材を食べた事によって安定したようですが、それよりも前の先輩だったら耐えられなかったという事ですか。実際先輩が治療を受けていた時も危うくグルメ細胞に殺されかけました。それほど強力な力を秘めた悪魔が宿っているという事ですか……
『おい一龍。その悪魔と言うのは危険ではないのか?』
「ドライグ、どうしたんだ?やけにあの赤鬼について警戒してるな」
『あの赤鬼は危険だ。俺すらも安易に倒すような奴がイッセーの中にいるのなら、危険かどうかハッキリとさせておくべきだ』
「なんじゃ、ドライグ。お前悪魔にボコられたのか?」
『うるさいっ!いいから答えろ!場合によっては奴と戦わなければならないんだぞ!』
ドライグの言葉に私は確かに……と思いました。グルメ細胞の悪魔が協力的ならいいのですが、そうじゃないのなら何かしらの対策は必要でしょう。
「悪魔たちの目的は美味い食材を食べる事じゃ。人間は悪魔からすれば乗り物であり食材を得るための足でもある。そんな宿主をどうこうしようという奴はまずいない、それどころか宿主が死なないように力を貸す者もおる」
「確かに俺がコカビエルにやられそうになった時、あいつは俺に喝を入れてくれたな。今思えば俺を助けようとしてくれていたのか……」
『フン、そんな優しさなどあいつには無いだろう。お前が死ねば困るのはあの赤鬼みたいだからな』
つまり悪魔は美味い食材を食べておけば何もしてこないし、それどころか力を貸してくれるって事ですね。
「じゃが宿主が弱すぎて話にならないとなれば悪魔は宿主を殺すじゃろうな」
「そ、そうなんですか!?」
「うむ。さっきも言ったが悪魔の目的は美味い食材を食う事、それもできない宿主など即見限るわい。悪魔は宿主が死んでもまた別の宿主に宿るだけ、実質何度でも蘇ることが出来るんじゃよ」
悪魔からすれば人間なんて乗り物でしかない。弱い、つまり乗り心地の悪い乗り物を自ら壊して別の乗り物に選び変えるという事ですか。
『……本当にそれだけか?俺はあの赤鬼が食う事だけの為にイッセーを使っているとは思えないのだ。あいつには何か目的があるように感じる』
「そりゃ美味いモノを食いたいみたいだし、GODでも狙ってるんじゃないのか?」
『かもな。だが俺にはそれ以外にもあいつには何か目的があるように思うんだ』
ドライグはイッセー先輩に宿っている赤鬼を強く警戒しているようですね。
「ワシも悪魔がどこまで考えているのかは分からん」
『本当か?お前は意外と秘密主義な所もあるし何か知っているんじゃないのか?』
一龍さんは分からないと答えますがドライグは納得しません。
「落ち着けよ、ドライグ。親父が教えないって事はまだ俺が知るには早すぎるって事だ。そんなにオーガーを悪く言ってやるなよ」
『イッセー、お前は危機感が足りん!そもそもオーガーってなんだ!』
「いや、赤鬼って言うのもなんだし名前でも付けたら親しみやすくなるかと思ってな」
『馬鹿者め!あんな自分勝手で傲慢そうな奴が親しみなど感じるか!』
「でもお前も最初はあんな感じだったじゃないか」
『うっ……それは……』
イッセー先輩の一言にドライグは大人しくなってしまいました。そういえば最初は仲が悪かったって言っていましたね。
「聞けばオーガーも唯の食いしん坊って事だろう?それなら一緒に美味いモノを食べていけば仲良くもなれるさ。なっ、親父……ってどうしたんだ?なんでそんなに可笑しそうに笑っているんだよ」
何故か一龍さんはおかしそうに笑っていました。
「すまんな、イッセー。悪魔に名前を付けて親しみやすくしようなんて言う人間は初めてじゃったからついな」
「ちぇっ、親父まで悪魔と親しくする俺をバカにするのかよ」
「馬鹿になどせんよ。オーガーか、いい名ではないか」
「おっ……?……へへっ、そうだろう!」
イッセー先輩は鼻の下をこすって笑みを浮かべました。
(……まさか知らんうちに悪魔の『名』を当てるとはな。もしかしたらイッセーなら利己的なグルメ細胞の悪魔と分かり合えるかもしれん。ワシとドン・スライム以上に……)
「……?親父、どうかしたのか?」
「何でもないぞ、お前はそのままでいてくれ」
「お、応っ!」
一龍さんは何かを想うような眼でイッセー先輩を見ていました。私には理解できませんがその眼差しはイッセー先輩を信じる親の心を感じさせるものでした。
「さて、そろそろお前達も帰った方が良いのではないか?回復したばかりで疲れたじゃろう」
「確かにもうこんな時間か……」
一龍さんの話でお昼を過ぎていました。もう休日も終わりそうですし一回帰った方が良いかもしれませんね。
「でも姉さまは……」
「うん、私は一緒に行けないね。あっちじゃお尋ね者だし見つかったら今度こそ命は無い、最悪グレモリー家にも迷惑をかけてしまうわ」
「そうですよね……」
「白音、そんな顔をしないで」
姉さまも連れて一緒に帰りたいと思いましたがそれは無理です。なにせ向こうでは姉さまは悪魔に命を狙われているのですから。
しょんぼりとする私を姉さまはギュッと抱きしめました。
「もういつだって会えるわ。前みたいに離れ離れじゃなくて白音をこうやって抱きしめてあげられる……だからそんな寂しそうな顔をしないで。白音には笑顔が似合うんだから」
「……分かりました」
私は姉さまに向かってニコっと笑みを見せます。それを見た姉さまも嬉しそうに笑みを浮かべました。
「姉さま、大好きです!」
「うん!私も白音が大好きだよ!」
そして今度は満面の笑みを浮かべて姉さまに抱き着きました。姉さまも同じくらいの笑顔を浮かべながら私を強く抱きしめます。
周りの皆さんの暖かい視線を受けながら私達は抱擁を続けました。
―――――――――
――――――
―――
あの後節乃さんのリムジンクラゲでスイーツハウスに戻ってきた私達は、元の世界にわたりました。色々ありましたが私達は無事に元の世界に戻ってくることが出来ました。ただルフェイさんは向こうでやることがあるらしく別れました。
「あぁ……疲れたぁ~」
ソファーにどかっと座り込むイッセー先輩の膝に座りながら皆でリラックスをしていました。他の皆さんもイスやマットに座り込んでため息を吐いていました。
「それにしても怒涛の展開ばっかりの休日だったわね~」
「そうですね。最初は一龍さんに話をしに行くだけだと思っていましたが……」
「その後にグルメタウンに行って節乃さんと出会い、そこからアイスヘルに向かったりライフに行ったりとゆっくり休む暇もありませんでしたね」
リアス部長がはあぁ……ともう一つあるソファーに身を沈めながら今まで起きた事を祐斗先輩とアーシアさんと話していました。確かに怒涛の展開ばかりの休日でしたね。
「でもまさか死にかける事になるとは思わなかったよな。俺だけじゃなくて祐斗達も危なかったしな」
「本当よ。次からは絶対にあんな事しないでね。もしまたあんな事になって貴方たちが死んだら絶対に許さないから」
「肝に銘じておきますわ、リアス」
イッセー先輩の言う通り今回の旅は本当に危ない物でしたね。いくら部長を守るためでも危険を冒した私達は苦笑いしながら部長にもうしないと誓いました。
「でも色んなことを知れましたね。GODの事やグルメ細胞の悪魔の事、私少し頭が困惑しちゃいそうです」
「無理もないな、俺だって色んなことが一気に判明してちょっと混乱気味だ」
アーシアさんはこれまでに聞いた話が多すぎてあうぅ……と頭を押さえていました。流石の先輩も情報量が多くて混乱気味だと話しています。
「グルメ細胞の悪魔か……もしかして僕達にも宿っているのかな?」
「それは分からないな。仮にいたとしても目覚めるのも稀らしいしあんまり期待しない方が良いと思うぞ」
「それに悪魔って死にかけて目覚めるかどうかなんでしょ?私は目覚めさせるのは反対よ」
祐斗先輩は自分にもグルメ細胞の悪魔が宿っていないかと言いました。それに対して先輩はあまり期待しない方が良いと話して部長も同意しました。
「まあ死にかけなくても目覚める可能性はあるみたいですけど……」
「駄目よ駄目なの!そんなこと言ってたらこの子達は死にかけるような無茶をしちゃうかもしれないでしょ!」
「ぶ、部長。もうそんなこと言いませんから落ち着いてください!」
イッセー先輩が恐る恐るそう言いましたが、部長は大きな声で怒り始めました。そんな部長を見て失言をしてしまったと祐斗先輩は思ったのか顔を青くして謝っていました。
今回の件で部長には深い悲しみを味合わせてしまったのでもう無茶は出来ません。暫くは大人しく部長の側にいることにしましょう。
「(く、空気が重いよ~)……あっ、そうだ!グルメタウンのお店、まだまだ言っていないところがあったのよね。ねぇイッセー君、今度また連れて行ってよ」
「その時は私も頼む。グルメ界の色んな料理を食べてみたいんだ」
「おー、じゃあ今度休みになったら行くかー」
「貴方たち、まだ食べる気なのね……」
話を切り替える為にイリナさんがグルメタウンのお店について話しまた行きたいと言いました。するとゼノヴィアさんも一緒に行きたいと話し先輩はいいよとOKを出しました。それを見ていた部長はまだ食べるのかと呆れた顔になっていました。
「先輩、私も一緒に食べ歩きしたいです。今度デートしましょう」
「小猫ちゃんはセンチュリースープを作るために修行しなくちゃならないでしょ?遊んでたら駄目でしょ」
「う、うぅ~!」
私も先輩とお出かけしたいと思いデートの約束をしようと思いましたが、イリナさんにそう言われて何も言い返せませんでした。
「ま、まあ偶にならいいだろう。色んな食材の味を知るのもまた勉強だからな」
「先輩!」
庇ってくれた先輩の優しさに嬉しくなって私は先輩に抱き着いてキスしちゃいました。
「あー!小猫ちゃんズルイ!私もイッセー君とキスするのー!」
「駄目です!イジワルしたイリナさんには先輩はあげません!」
取っ組み合いになってお互いの顔を引っ張り合う私とイリナさん、ゼノヴィアさんがイリナさんを、朱乃先輩が私を抑えて引き離されました。
「全く。もう休日も終わるのよ?喧嘩していないで学校に行く準備でも……」
部長はそこまで言いかけて何かを思い出したようにハッとした後、先ほどの祐斗先輩以上に顔を青くしていました。
「リアス、どうかしたのかしら?」
「……ってない」
「えっ?」
「出されていた宿題……やっていない」
「……あっ」
部長の呟いた一言にイリナさんとゼノヴィアさんを除く全員が顔を青くしました。
―――――――――
――――――
―――
あの後私達は無言で宿題に取り掛かりました。イリナさんの話では鬼気迫る感じで声もかけられなかったと言っていましたが当然です。そのせいでセンチュリースープを作る為の修行が遅れましたので必死にやります。
そして何とか1日徹夜して終わらせることが出来ました。悪魔なので夜は活性化しますが旅で疲れていたので流石に答えました、もしこれが夏休みだったら……考えたくもありません。
因みに宿題を終えた後に部長からの提案で祐斗先輩もイッセー先輩の家で暮らす事になりました。グルメ細胞を得た祐斗先輩は食事量も増えてしまったので、グルメ界の食材をたっぷり使ったイッセー先輩や私の料理を食べた方が良いという理由です。
祐斗先輩は「騎士として女の子と一緒に暮らすのは……」とちょっと乗り気ではなかったのですが、イッセー先輩が「お前は性欲に負けて女の子を襲うような奴じゃないだろう?俺も人前でイチャつくのは出来るだけ抑えるしお前の為でもあるんだ」というと了承してくれました。
確かに祐斗先輩だって男の子ですし他人のイチャ付く姿を見せるのは酷ですよね。これからは自嘲しないと。
でもそれなら祐斗先輩も恋人を見つければいいのではないでしょうか?ティナさんと仲いいですしリンさんとも香水の話で意気投合しているみたいです。というか普通に異性からモテますのでその気になれば誰とだって付き合えると思うのですが……
そう言ったら祐斗先輩は「えっと……」と言いイッセー先輩を見つめていました。顔を赤くして……
それを追求したら「べ、別にイッセー君をそういう目で見てるわけじゃないから!ただ僕にとって今憧れているのはイッセー君で……!あっ、その……!」と目をグルグルさせながら慌てて言っていました。
(まあ祐斗先輩にとってイッセー先輩は自身の悩みを解決してくれて、なおかつ初めて親友になった男の子ですからね。ある意味特別な存在なのかもしれません)
つまり祐斗先輩はイッセー先輩と友達になれて満足しちゃってるからそこらの女の子では興味が持てないということでしょうね。
後部長も一緒に暮らせばいいんじゃないかとイッセー先輩は話しましたが、部長は今回は断りました。最後の眷属であるギャー君をお世話しないといけないからです。
ギャ―君というのは私達グレモリー眷属の最後のメンバーであり、今は訳があって封印されています。ギャ―君が封印されている部屋に出入りできるのは部長だけらしくご飯を届けたりしているんです。
「ふあぁ……そろそろ寝ようかな?」
最後の休日はゆっくり休むことができました。お風呂に入って体も暖かくなり、睡魔に襲われた私はそのままベットに入って寝ちゃおうとしました。でもその前にドアからノックする音が聞こえて思考がハッキリとしました。
「開いてますよー、どうぞー」
ガチャリとドアを開けて部屋に入ってきたのはイッセー先輩でした。お風呂上りなのかタンクトップから見える皮膚がほんのりと赤くなっていて色気を感じます。
「どうかしたんですか?イッセー先輩」
「えっと……」
先輩は何やら落ち着きのない様子でモジモジとしていました。
「こ、小猫ちゃん……前に言った約束を覚えているか?」
「約束?それっていつのですか?」
「俺が治療を受けるかどうか悩んでいただろう?その時に小猫ちゃんが俺に会いに来てくれたじゃないか」
「ああ、あの時のですね」
ライフのホテルで私は夜に先輩にこっそり会いに行きました。その時した約束って確か……
「あっ……」
「……」
私はその時に先輩に私が欲しいと言っていたことを思い出して先輩の顔を見ました。先輩は顔を赤くして頬を掻いており、それを思い出した私も顔を赤くしました。
「も、勿論覚えていますよ!こんなに早く来てくれるなんて思ってもいませんでしたが……」
「ごめんな、ムードも無しに急にこんな事を言って……」
「構いません!だってずっとこうなりたいって思っていましたから!」
徹夜した疲れなんて吹っ飛んじゃいました!興奮した私は仙術で体を成長させるとイッセー先輩に抱き着いてキスをしました。
(ああっ……私、とうとう大人になるんですね……与作さんから避妊具を貰っておいて良かったです)
ライフから去る際に与作さんから避妊具を貰っていました。何でも『赤毛ブタ』という凶暴な猛獣の動きにも耐えるという特注品らしいです。与作さん、グッジョブです。
「小猫ちゃん……好きだ!もっと小猫ちゃんが欲しい……!」
「んんっ!?」
先輩に強く抱き返されて口内に舌を入れてきました。先輩からこんな激しいキスをされたことによる喜びと驚きで頭の中が混乱してしまい、私はされるがままになってしまいます。
「小猫ちゃん……小猫ちゃん!」
(先輩の様子が少しおかしいです……?)
『すまんな、小猫。イッセーは今発情しているようだ』
いつもの先輩らしくないと思った私に、赤龍帝の籠手からドライグの声が聞こえてきました。
「んんっ!?んんんっ?」
『ああ、その状態では話せないか。じゃあ用件だけ伝えておこう』
私は先輩にキスされていたので会話が出来ません。それを悟ったドライグは用件だけ話す様です。
『発情した原因は一龍が渡した菓子類だ。あの中にチョコがあっただろう?どうやらあの中にドラゴン系の猛獣を発情させる薬が入っていたみたいなんだ。俺は魂だけだから発情しないが宿主であるイッセーには効果があったようでな』
それを聞いて私はあっ……と思いました。というのも前に一龍さんに稽古してもらっていた時に、イッセー先輩とどこまで進んでいるのか一龍さんに聞かれたのですが、全然手を出してくれないと愚痴ってしまいました。
それを聞いた一龍さんは「任せておけ」と言ってくれたのを思い出したんです。帰る際におみあげに高級品のお菓子を一龍さんから貰ったのですが多分それですね。宿題を終えた後にプチパーティーで皆で頂いたのですがこの中でドラゴンの性質を持つのはイッセー先輩だけですからこうなったという訳ですか。
『幸いその薬は薄めていたのかイッセーの理性は少し残っている。先ほどまで会話は出来ていただろう?少なくとも乱暴にはされないはずだ』
(そ、そうですか……あっ、ダメですっ♡そんな激しくキスされたら……♡)
取り合えず頭の中で返事はしておきました。でもそろそろ話を終えてくれませんかね?先輩の激しいキスで私も発情してしまったのでそろそろ事に移行したいのですが。
『はぁ……どうせお前、そろそろ話を終えてくれないかとか思っているんだろう』
「んんっ!?」
『図星か……お前も発情しているみたいだしな』
ドライグに考えを読まれて声を出してしまいました。でも仕方ないじゃないですか、イッセー先輩を好きと自覚してから発情期なんてずっと来てますよ!
『じゃあ俺は引っ込むから後は楽しんでくれ。相棒の情事を聞こうとは思わんからな』
(ありがとうございました、ドライグ。イッセー先輩の事は任せてくださいね)
頭の中でドライグにお礼を言って赤龍帝の籠手は消えました。
「小猫ちゃん、俺……」
「大丈夫ですよ、先輩。私が先輩を受け止めてあげますから……だから来て……」
「ッ!」
切なそうな表情を浮かべる先輩、そんな彼を愛おしく思い私はベットにコロンと倒れてなって両手を広げて先輩を誘いました。私がそう言うと先輩は私に覆いかぶさって……
……ここからは大人の時間です♡
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「最悪だ……薬で発情して小猫ちゃんを襲っちゃうなんて……」
「先輩、私は気にしていませんよ?」
「それでも最低だろう……俺も初めてだったのに……」
先輩と愛し合った後、体を洗うためにお風呂に入っています。発情期が収まった先輩は湯船の中で落ち込んでいました。そんなに気にしなくてもいいのに。
「イッセー先輩、そんなに落ち込まれると私と……その、ゴニョニョしたことが嫌だったみたいに感じてしまうんですが……」
「い、いや!そんなことはない!俺、今すっごく嬉しいよ!」
「ならそれでいいじゃないですか。私だって幸せですし♡」
先輩に寄り添いながら私は満面の笑みを浮かべます。だってこれで完全に先輩と結ばれることが出来たんですから。後は結婚するだけですね。
「そうか……ならこれ以上は気にしないでおくよ」
「それが良いですよ」
「でも本当に大丈夫だったか?俺、無茶な事させていないよな?」
「当然です。先輩は優しくしてくれました」
「それならいいけど……」
「なんだったら……」
私は湯船から立ち上がり先輩の膝に対面で座りました。仙術で成長した胸を押し付けられた先輩は顔を赤くして困惑しました。
「こ、小猫ちゃん!?」
「もう一回しちゃいますか?今度は意識をはっきりとさせた状態で……♡」
「……お手柔らかにお願いします」
「はーい♡」
私は先輩を抱きしめてキスをしました。大人の時間はもうちょっと続くみたいですね。
後書き
イリナだよ。グルメ界に戻ってきた私達はそれぞれの日々を送っているの。私とゼノヴィアはちょっと暇だけどね。
ただね、なーんかイッセー君と小猫ちゃんの仲が良くなった気がするのよね?視線で会話してるというかより深い関係になったっていうか……
あら?どうしたのゼノヴィア?カンペなんて持ってきて……えっ?早く次回の内容を話せって?
しょうがないわねー。次回第72話『それぞれの日々、最後の眷属ギャスパー登場!』で会いましょうね。えへっ♪
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