八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第二百九十三話 一人だけじゃなかったその九
「やっぱりね」
「特別な日だね」
「ええ、その日一緒にいるってことは」
「そういうことだね」
「そう、これ自然とね」
詩織さんは過去を振り返ったかの様な顔になって僕に言ってきた。
「義和と同じ八条荘にいてね」
「一緒にいたからね」
「ずっとね、そうして暮らしているうちに」
「僕のことをなんだ」
「香織もね、他の娘は皆相手の子が出て来て」
文化祭の前後でだ。
「義和とは仏に暮らしているけれど」
「それじゃあ」
「義和って人に嫌われない性格で」
それでというのだ。
「人当たりもいいし紳士だから」
「女の子にもてるとか?」
「ずっと一緒にいたらね」
そうしていると、というのだ。
「好きになっていくタイプなのよ」
「そうだったんだ」
「そう、だからね」
「皆もなんだ」
「若し相手の子が出てこなかったら」
どの娘もというのだ、八条荘の。
「皆義和を好きになっていたわよ」
「そうだったんだね」
「義和は自覚していなかったでしょ」
「うん、自然とそうなるなんて」
「少しずつでもね」
それでもというのだ。
「やっぱり一緒にいたら」
「それでなんだ」
「義和のいいところがどんどん見えて」
「悪いところもあると思うよ」
「至らないところがあっても」
その悪いところがというのだ。
「それでもよ」
「僕はなんだ」
「そう、いいところが見えてきて感じて」
「好きになっていくんだ」
「最初は普通に思っていても」
恋愛対象でも何でもなくてもというのだ。
「そうなっていくのよ」
「徐々になんだね」
「そう、本当にね」
「それで詩織さんもで」
「香織もね、それで義和がどちらを選んでも」
僕をじっと真剣な顔で見て話してくれた。
「私達は後悔しないわ」
「どちらかになっても」
「そうよ」
まさにというのだ。
「だからそのことは安心してね」
「悪いね」
「悪くないわよ、むしろね」
「どっちもというのがだね」
「この場合は悪いのよ」
「そうだね、僕もね」
この辺り僕はどうしても両手に花とかいう考えにはならない、本気で好きな人と一人だけだ。それも遊びはしない。
「そうしたことはね」
「しないわね」
「絶対にね」
詩織さんにこのことを約束した。
「それは誓って言うよ」
「そうよね、だから余計にね」
「僕のことをなんだ」
「好きになるのよ」
僕に微笑んで話してくれた。
「皆ね」
「そうなんだね」
「それとね」
僕にさらに話してくれた。
「何か昨日占い研究会に行ったのよ」
「あの部活に?」
「やっぱり義和とのことが気になってね」
それでというのだ。
ページ上へ戻る