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ヘタリア大帝国

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TURN46 王女アルビルダその四

「だから大丈夫さ」
「その中にあるもので」
「全てを動かされますか」
「そうさ。俺をどうか出来る奴はいないさ」
 表情は軽薄な感じだが声には得体の知れない不気味さがあった。
「じゃあ。とりあえずあれは」
「はい、今派ですか」
「そのままにしておく」
「しかし何時でも出せるようにはしておこう」
 この処置はしておくというのだ。
「いざという時にね」
「ではその様に」
「備えておきましょう」
「さて。親衛隊の皆には」
 表向きの彼の部下達だ。レーティアに絶対の忠誠を誓っている。
「表の俺と共に働いてもらおうか」
「誰一人法皇のことには気付いていませんね」
「親衛隊の誰もが」
「ははは、ロンメルや宣伝相はおろかあの娘も気付かないんだ」
 レーティア、直感も恐ろしいまでに鋭い彼女すらもだというのだ。
「それならばね」
「親衛隊には気付かれない」
「誰一人として」
 フードの者達も言っていく。
「所詮は只のアイドルファンですか」
「それに過ぎませんか」
「その通り。彼等は純粋で無邪気なだけだよ」 
 それが親衛隊だというのだ。
「その彼等に軍事訓練を施しはしたがね」
「しかし本来は只のファンに過ぎない」
「表の存在でしかありませんか」
「そもそも彼等は俺にではなくあの娘に忠誠を誓っているしね」
 彼等にとってヒムラーはあくまで自分達のリーダーでしかない。その忠誠の対象はレーティアなのだ。
「あの背も胸も小さいお嬢ちゃんにね」
「総統は閣下のお好みではないですか」
「他のタイプがお好きなのですね」
「ああ、もっと大人で胸があって」
 ヒムラーは軽く自分の好みもこの暗室の中で話す。
「背が高い娘が好きなんだよ」
「総統とは正反対のですね」
「そうした女性がですか」
「何処がいいのかさえわからないね」 
 レーティアに対してこうも言う。
「あんな貧弱な身体には何の魅力も感じない」
「ではやがては」
「そうした女性を見つけられますか」
「手頃な愛人も手に入れるとしようかな」 
 ここでも軽薄だが妙に邪なものを漂わせて言うヒムラーだった。
「そうしようか」
「ですか」
「うん。まあ今は俺はこの着任先でいるさ」
「やがて東部戦線へ向かうことになるかと」
「その時は精々頑張らさせてもらうか」
 ドクツの命運を賭けた戦いもヒムラーにとってはどうでもいいことだった。だからこそこう言えたのである。
「俺の表の姿を見せ付ける為にね」
「では我等は闇の中に」
「潜んでいます」
 フードの者達はこう言って闇の中に消えた。一人残った若き闇の法皇は楽しげに不気味な笑みを浮かべていた。
 クリオネはイギリス、そしてネルソンをある場所に連れて来ていた。そこはアラビアの奥地だった。
 そこに来てからイギリスは周りを見回してクリオネに言った。
「なあ、ここはな」
「何処かというんですね」
「岩山しかねえじゃねえか」
 草木は一本もない、そして生き物の影もなかった。
「こんな場所に誰がいるんだよ」
「それがネットで検索してみると」
「いるってか」
「その魔術師がです」
 彼がいるというのだ。
「いるとか」
「ネットでの噂だよな」
 イギリスは不安に満ちた顔になってクリオネに問うた。 
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