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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第二百九十二話 行く場所その十三

「そうされました」
「本当に暴力的ですね」
「関係がなくとも権威と見ると襲うなぞ」
「しかも個人をリンチにして本とか場所を荒らすなんて」
 もうそれこそだ。
「狂ってますね」
「それが連中の正体でした」
「まさにそうですね」
「ですから私にとって四十年代はです」
 昭和のその時代はというのだ。
「三十年代より遥かに豊かになりましたが」
「三十年代よりもですか」
「いい時代ではなかったです」
「クリスマスがよくなってもですね」
「左様でした、クリスマスも彼等の話を聞いて嫌になったこともあります」
 学生運動のそれをというのだ。
「全く以て愚かなだけで意味のない」
「下らない運動でしたね」
「はい、ですがクリスマスを楽しまれたら」
 そうすればというのだ。
「それだけ楽しい思い出になるので」
「それが人生の糧にもなりますね」
「ですから」
 それでというのだ。
「義和様もです」
「楽しんでくればいいですね」
「学生運動は何も生み出しませんでしたがクリスマスに遊ぶことは違います」
 革命だ反動だの喚いてヘルメットを被ってゲバ棒を持って暴れることよりもその日に遊ぶことはというのだ。
「思い出になり」
「その思い出がですね」
「人生の糧になりますので」
「だからですね」
「暫くよく考えられて」
「計画を確かにして」
「そしてです」 
 そのうえでというのだ。
「楽しんで来られて」
「思い出にですね」
「されて下さい」
「人生の糧をもうけに」
「楽しい思い出はそれだけで人を育ててくれます」
 畑中さんは僕に微笑んで話してくれた。
「まさに」
「その通りですね」
「ですから」
 それ故にというのだ。
「義和様も楽しまれて下さい」
「それじゃあ」
「はい、では」
「そうしてきます」
 二人でこう話してだ、そのうえでだった。
 僕はあらためてクリスマスの計画を練った、ただ詩織さんと香織さんのどちらと行くかは決めていなかった。一人を選べばもう一人とは別れてしまう、そのことがわかっているからこそ今は本当に悩んだ。そして悩みつつクリスマスに向かっていた。


第二百九十二話   完


                  2020・7・15 
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