おっちょこちょいのかよちゃん
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77 エレーヌの羽衣
前書き
《前回》
かよ子達の活躍により、赤軍の構成員・西川純と山田義昭の逮捕された。しかし、護送中に赤軍のリーダー・重信房子と異世界の人間・フビライが現れ、彼女らの襲撃によって西川と山田を逃がされる。そして房子は後始末をフビライに任せて立ち去るが、フビライは石松やエレーヌ、そしてすみ子達に発見され、討伐されたのであった!!
三河口達は散らばった食材を見る。
(こんなに食材を粗末にしやがって、あいつら・・・!!)
「三河口君・・・」
「ん?」
奏子が呼ぶ。
「酷いね、あの人達」
「うん、あいつらを何としても倒さないと、日本はまた間違った道へと進んでしまうからね」
「間違った道って?」
「再び日本を戦争の国とする道だよ」
「そんな・・・」
「まずは片付けようか」
「うん・・・」
三河口達はクラス名と共に模擬店コーナーの片付けと清掃を始めるのだった。
かよ子達は帰るとその道路の大通りが混乱していた。パトカーがひっくり返ったり、横倒しにされている。
「あれってさっき赤軍の奴を護送したパトカーだったよな?」
「ああ、なんで?」
「あれは別の敵によるものだ」
石松とエレーヌが現れた。
「別の敵?」
かよ子は聞く。
「左様、日本赤軍の長が我々の世界におる『剣』を使って吹き飛ばし、さらに異世界の者を召喚してその者の能力を利用して赤軍の者を助け出して撤退したのだ!」
「そ、そんな・・・。折角捕まえたと思ったのに・・・!!」
「『剣』・・・。前に御穂津姫から聞いたんだけど、広島で奪われたあの異世界の『剣』かい!?」
長山が質問した。
「いかにも。まあ、異世界の者は我々と組織『義元』の皆で葬り去る事はできたが・・・」
「そうだったんだ・・・」
「お主、健闘ご苦労だった。では、また、共闘しよう」
「うん・・・」
皆は石松にエレーヌと別れた。
「石松」
「何だ?」
「私、あの学舎に一旦戻ってもよろしいでしょうか?」
「ああ、構わん」
エレーヌは高校の方角へと向かった。
かよ子達は電車に乗る。石松の言葉を思い出しながら。
《日本赤軍の長が我々の世界におる『剣』を使って吹き飛ばし、さらに異世界の者を召喚してその者の能力を利用して赤軍の者を助け出して撤退したのだ!》
(日本赤軍の長って・・・)
皆も文化祭の騒動の疲れで談笑できる気分ではなかった。皆は無言で車内を過ごすのだった。
(でも、絶対に杖は渡さない・・・!!)
電車を降り、皆は別れる。
「それじゃ、皆さん、お疲れ様。気を付けて帰ってね」
「うん、さようなら〜」
皆は帰ろうとする。その時、藤木は笹山に呼び止められる。
「藤木君!」
「え?」
「今、ふと思い出したんだけど・・・」
「え?」
かよ子も思わず立ち止まってその場を盗み聞きしようとする。
「かよ子、何してるの?」
「あ、ごめん・・・」
かよ子は慌てて親に付いていった。そして転びそうになった。
「もう、おっちょこちょいなんだから・・・」
一方、笹山に呼び止められた藤木はその場に立ち止まる。
「あの時、お姉さんの友達のお兄さんの言葉で私も少し驚いたんだけど、藤木君は、本当に、私の事、好きなの・・・?」
「え?あ・・・」
藤木は返答に詰まる。ここで本当の事を伝えたらどうなるか。本当に自分の気持ちを受け入れてくれるのだろうか。それとも、振られるか。
「実は、僕・・・、き、君の事が・・・、す、す、・・・」
「え?」
「好きなんだ・・・!!」
藤木は自爆覚悟で言った。
「そうだったのね・・・」
「笹山さん・・・」
「だから、私と文化祭楽しみたかったのね」
「うん、でも、空回りばっかりだったよ。いいとこ見せられなくて」
「ううん、そんな事気にしてないわ。最後は大変だったけど、藤木君と楽しめて良かったわ」
「笹山さん・・・」
「じゃ、学校でね、またね!」
笹山は両親と共に帰った。
(笹山さん・・・。ありがとう・・・。僕も楽しかったよ)
藤木は今回の文化祭に来て良かったと感じるのであった。
(よおし、笹山さんにもっと仲良くなれるように頑張るぞ!!)
藤木もまた帰っていくのであった。
文化祭のテロの後始末も終わり、三河口のクラスメイト達は集合した。
「それじゃ、今日は色々大変な目に遭ったけど、焼鳥や唐揚げは順調に売れたし、皆帰って休もう!解散!!」
皆は帰る。
「ミカワ」
三河口は濃藤と北勢田に呼ばれた。
「今日、お前、大変だったよな。兄貴にやられて、それで今度はテロと来たし」
「でも、どうして兄貴に対して能力を使わなかったんだ?」
「ああ、それは前はその能力を普通に使ってたけど、清水に来てからは使うのを控えると決めたんだ。そのせいか、日本赤軍とか異世界の敵とかといった相手にしか使えなくなったんだろうね。でも、兄貴にやられた時は奏子ちゃんに救われたよ」
傍で聞いていた奏子が照れた。
「い、いや、私は・・・」
「奏子ちゃん、俺達と一緒に変えるかい?」
「う、うん」
三河口、濃藤、北勢田、そして奏子は校門を出る。その時だった。
「あ、貴方達、お待ちになって!」
エレーヌが現れた。
「アンタ、確かエレーヌと言ったな」
「はい、貴方達、本日はお疲れ様でした。何とか『敵』の撃退に協力したお礼を申し上げたいのです。それで、徳林奏子さんでしたね、貴女は?」
「わ、私?」
「貴女は『武装の能力』をお持ちでしたか・・・。私、貴女の今後の活躍に期待したく、こちらを差し上げたいと思います」
エレーヌは奏子に帯のような物を差し出した。
「これは私がいる世界の羽衣です。この羽衣を身に纏えば飛行もでき、自分や守りたいものの対象を守りたいと思った時に相手の攻撃を防いでくれるものです。今後、日本赤軍や私達の敵との戦いもさらに激しさを増していきますのできっと役に立ってくれるでしょう。よくお考えになってお使いください。それでは」
エレーヌは去った。奏子は手に持った羽衣をどうしようか迷う。
「この羽衣、どうしよう・・・」
「エレーヌは君を選んだんだから、君が持っておくといいよ」
「う、うん」
「俺達ももしかしたら徳林さんを頼りにするかもしれない。じゃあ、また何かあったら協力しないか?」
濃藤は提案を持ちかけた。
「そうだね」
皆は帰って行った。
響は帰宅の為に新幹線に乗車していた。
(あの野郎・・・。本当に成長したのか・・・?)
いずれにせよ彼にとって忌まわしい弟である事には変わらない。
石松とエレーヌは再合流した。
「それでは私はあちらの世へ戻りましてウローレンスとイマヌエルに報告していきます」
「ああ、気を付けてな」
エレーヌは石松から離れた。
(奴らめ、勢いを増しおって・・・!!)
石松は更なる戦いの激化に心臓の鼓動を強めた。
かよ子は家に着いた。
「それじゃ、私は今回の事を電話で娘達にも伝えておくわ」
「それがいいわね。さようなら」
皆はそれぞれの家に入った。
「かよ子、東京のりえちゃんにも手紙で伝えたほうがいいわよ」
「うん、そうだね」
かよ子は東京の杯の所持者に手紙を書こうとする。
りえちゃんへ
この前隣に住んでるお兄さんが通ってる高校の文化祭に行ったら、日本赤軍が攻めてきました。杖は奪われずに済んだけど、今後が心配です。そちらは何か変わった事はありませんか?では、さようなら。
山田かよ子
かよ子は手紙を書き終えた。
(そういえば、藤木君と笹山さん、どんな話してたんだろう・・・?)
かよ子は藤木にとって最高の思い出だったか、それとも最悪の思い出だったか、今のかよ子にはまだ知らなかった。
そして、戦いが激しくなると共に、時は進んでいく。
後書き
次回は・・・
「隣人の高校生」
かよ子の隣の家に住む高校生・三河口健。彼はなぜこの清水に来たのか。そして彼はなぜ実の家族と決別したのか、かよ子達は羽柴家に上がり込んで真相を知ることになる・・・。
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