おっちょこちょいのかよちゃん
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76 あと一歩のところで
前書き
《前回》
西川と共に文化祭に侵入したもう一人の赤軍のメンバー・山田義昭に襲撃されそうになる奏子、藤木、笹山。だが、彼女達の前に石松とエレーヌが現れ、奏子の異能の能力の影響もあり、九死に一生を得る。奏子達を避難させ、石松とエレーヌは山田と交戦するが、その場に乱入したかよ子達の応援もあり、山田の拘束に成功。そして西川と山田はその場に駆け付けた静岡県警に引き渡されるのであった!!
静岡県警が来て、西川と山田が遂に逮捕される時が来た。警察は赤軍のメンバー達を獲捕されていく。
「私達、初めて日本赤軍を捕まえたんだね・・・」
かよ子はその光景を改めて確認するのだった。その時、奏子が藤木と笹山、そして笹山の両親を連れてかけつけてきた。
「皆、大丈夫?」
「奏子ちゃん、ああ、奴らは捕まったよ」
「あ・・・」
奏子達も赤軍達が警察に逮捕される様を見た。
「あれが、日本赤軍・・・」
「凄いよ、僕なんかじゃ、絶対にやっつけられないよ・・・」
藤木はその場にいた大野や杉山を羨ましく思った。自分にも彼らのような勇気があれば笹山も自分を見直してくれるのにと思った。
だが、その時、杉山が異様な胸騒ぎを感じた。三河口や濃藤、北勢田、すみ子なども同様だった。
「なんだ、これは・・・」
「ああ、西川の気配でもさっきかよちゃん達が捕まえた奴の気配でもないな」
「まさか、別の奴が・・・!!」
「ええ!?今すぐにでも・・・!!」
「待て、山田かよ子!」
石松が静止した。
「どうして!?」
「この戦いの激しさでお主が出てもさらに危うくなるのみだ。杖を奪取する為の絶好の機会となってしまうぞ!!」
「あ、そうだった・・・」
かよ子は冷静さを忘れてまたおっちょこちょいをやってしまったと思った。飛んで火に入る夏の虫になってしまう所だった。
「かよ子、石松の言う通りよ。無理して今、杖を奪われたらとんでもない事になるわ」
「うん・・・」
「まずは、この荒らされ様を直す必要があるわね」
奈美子が見回しながら言った。
「はい」
三河口、濃藤、北勢田、そして奏子は己の店舗に行く。
「皆、大丈夫か?」
「うん、怪我人はいなかったよ」
真希が答えた。
「よし、店を直すか・・・」
その時、放送のチャイムが鳴った。
『ご来場の皆様に連絡致します。大変申し訳御座いませんが、今回の文化祭は異常事態発生の為、これにて打ち切りとさせて頂きます。生徒の皆様は片付けを始めてください。ご来場の皆様、本日はご来場頂きましてありがとうございました。そして、大変な事態に巻き込んでしまい、大変申し訳御座いませんでした』
「よし、エレーヌ、某と共に捕まった赤軍の者達の追跡をしてくれるか?」
「あい、畏まりました」
「では、我々は奴らを追う。お主ら、気をつけて帰るのだぞ」
「うん」
「かよ子、帰るわよ」
「うん、あ、す、杉山君・・・」
かよ子は好きな男子の元へ近づく。
「どうしたんだよお?」
「ごめんね、折角文化祭を楽しもうと思ったのに、こんな大変な事に巻き込んじゃって・・・」
「ああ、気にすんなよ」
「俺達も帰ろうぜ」
大野が提案する。
「なあ、皆」
山口が皆に尋ねる。
「今日も色々協力してくれてありがとうな」
「ああ、だが、お前らも一人とっ捕まえていい活躍だったぜ」
大野は「義元」の活躍を賞賛した。
「じゃあ、また会ったら戦おうぜ、じゃあな!」
「うん!」
組織「義元」は撤退した。
「ねえ、あの子達って誰なの?」
笹山が質問する。
「隣町の学校の子だよ。前に色々あって友達になったんだ」
「へえ、山田さんって違う学校にも友達がいるのね」
「う、うん・・・」
県警によって西川と山田は護送される。だが、パトカーは途中停車した。
「ちょっと、そこのお姉さん、車道を立ってちゃ危ないよ。どきなさい」
西川と山田ははっとした。もしや、助け舟と・・・。
「どくのは貴方達の方よ」
「何!?」
警官たちはまさかと思った。女性は剣を持っている。
「ハーグでも使われたこの『剣』を試させてもらうわ。フビライ、まずは奴等の意識を奪いなさい」
「アイヨ」
その時、背後からモンゴル人のような衣装をして髭を生やした男性が現れた。
[脱魂]
フビライはモンゴル語でそう唱えた。その時、警官達が次々と昏睡状態に陥り、フビライの手にボールのような物ができた。
「この人の達の魂はここにあるヨ。今だヨ」
「純、義昭。お疲れ様」
「房子総長・・・」
西川は自身のリーダーに跪いた。
「申し訳ございません。杖の奪取は失敗しました」
「いえ、大丈夫です。それでも、もう一つの作戦は成功されました。それにハーグの事で折角奪還した義昭もまたすぐ逮捕されるなど私には我慢なりませんから。ね、義昭?」
「ああ、勿論です。西川、あれを取り出してやれ」
「へい」
西川は義昭に言われてポケットの中の小型の機械を取り出した。ボイスレコーダーのようなものだった。
「流石は精密機械のメーカーの元従業員ですね」
「ああ、これで『奴』の実力を上手く研究・勉強に使えますよ」
「では、次は私の番ね」
房子は剣を一振りした。パトカーは遠くへ吹き飛ばされた。
「これでいいわ。フビライ、私達が去ったら警察達の魂を元に戻しなさい。貴方達は私に掴まりなさい」
「アイヨ」
西川と山田は房子に掴まり、房子は剣を一振りさせて風を起こし、その場から跳んで去った。
[脱魂]
フビライはモンゴル語で再びそう唱えた。魂を元に戻された警官は一体何があったか分からなかった。
「では、私も戻るか・・・」
と、その時、叫び声が聞こえた。
「こ、これは何だよ!?」
「あいつは何者でやんすか!?」
フビライは四人の少年少女に姿を見られた。
「お前、異世界の人間だな!!」
一人の少年がバズーカを取り出した。
「そちらこそ敵かネ?」
「お前こそ何者だ!?」
「私はフビライ。日本を今度こそ私のものにして貰うヨ!」
「何を!」
一人はバズーカ、一人は弓矢を、さらに一人はパチンコを、そして最後の少女は拳銃を取り出した。フビライは三度モンゴル語の唱和で四人の魂を奪い取ろうとする。
「させぬ!」
背後からフビライは何者かに刺された。森の石松だった。石松がフビライの背中から刀で刺したのだった。
「お前、私が自分自身を脱魂して、他の者に憑依する事もできるのだヨ。そうすれば私本体への攻撃は無効になるヨ」
[憑依]
フビライはモンゴル語でそう答えた。
「は!」
石松はフビライに体を乗っ取られた事に気付いた。
「私は今、お前の身体に取り付いた。私がこの刀でお前を切り刻めばお前もどの世からも消失するヨ。私は平気だけどネ」
石松の体に憑依したフビライはもぬけの殻となった自身の体から刀を抜き、石松の首を自分で斬ろうとする。
「石松!!」
エレーヌは一踊りした。その時、石松は自分で自分の首を斬るような姿勢から解放された。フビライの憑依の能力が解かれたのだ。
「今、貴方の能力を途中で解除する踊りをさせていただきました。」
「こ、この・・・」
「なら、チャンスだ!」
一人の少年のバズーカが発砲された。フビライが吹き飛ばされる。
「う、この・・・」
「よし!」
フビライは再び自身の魂を抜いて、他の者に憑依しようとした。しかし、できない。
「生憎ですが、私のこの踊りは能力が1踊り10分は制限されます」
「なぬ・・・」
「よし!」
一人の少年が矢を放った。見事フビライに命中した。そしてバズーカがもう一度発砲され、パチンコも飛ばされた。
「う、うおおお・・・。私の夢が・・・。今度こそ叶うと思ったのに・・・!!」
フビライは光となって消えた。
「それじゃあ、私達も帰りましょうか」
かよ子の母は提案する。
「うん、そうね、響君はどうするの?ウチに泊まる?」
奈美子は響に確認をとる。
「いや、そのまま帰りますよ」
「そう、じゃ、気を付けてね」
響はさっさと帰ろうとする。
「なあ」
響はかよ子達に顔を向けた。
「あのバカがまたなんかやったらボコボコにしとくよ」
「あのお兄ちゃんはそんな事しないよ!」
かよ子は反論した。
「そうだ、お前、勘違いにも程があるぞ!」
杉山もかよ子の肩を持った。
「・・・」
響は何も言わずただ睨みつけて去った。
「帰ろうか、私達も」
たまえが呼び掛ける。
「うん・・・」
かよ子はこの杖が奪われなかったのは幸いだが、折角の文化祭がこんな荒らされた事に日本赤軍への怒りがさらに高まったのだった。
後書き
次回は・・・
「エレーヌの羽衣」
文化祭から帰るかよ子達はパトカーが滅茶苦茶にされている様を見て日本赤軍の長が現れたと石松から聞かされる。そして帰る途中、藤木は笹山からある事を確認される。一方、後始末を終えた三河口達の前にはエレーヌが現れ・・・。
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