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戦国異伝供書

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第百十話 兄と弟その四

「そうする、だから敵ならな」
「縁組に関わらず攻めて」
「そのうえで降す」
「そうしていかれますか」
「若君は」
「そうじゃ、お主達もじゃ」
 片倉と成実にも話した。
「よいな」
「はい、戦になれば」
「その時はですな」
「例えお身内でもですな」
「戦うのですな」
「そうせよ、若し戦えぬなら」
 縁戚を結んでいる相手と、というのだ。
「その戦には出るな」
「ですか」
「そう言われますか」
「うむ、ではな」
 政宗はあらためて言った。
「まずはな」
「会津ですな」
「あの地ですな」
「芦名家を降す」
「そうしますな」
「その様にする」
 こう言ってだった、政宗は二人に己の考えを話した。そんな彼に白い顔に長い睫毛に細く奇麗な眉に見事な黒髪の妙齢の美女彼の実母である義姫が言ってきた。
「世間では色々言われていますね」
「それがしと母上のことが」
「はい、私がそなたを嫌っていると」
「その様に」
「そして小次郎を可愛がっていると」
「それは風聞です」
 政宗ははっきりと述べた。
「ですから」
「わかっています、だからこそです」
「今もですな」
「母はそなたと話しているのです」 
 こう言うのだった。
「普通に会って」
「左様ですな」
「私にとってそなたも小次郎もです」
「そして妹達も」
「皆腹を痛めて生んだ子です」
 誰もがというのだ。
「ですから可愛くない筈がありませぬ」
「そうですか」
「はい、母が望むことはです」
「これまでの当家の様にですか」
「互いに争わぬ」
 その様にというのだ。
「してもらうことです」
「当家は長い間そうしたことが続いていましたが」
「はい、ですが」
「それはもうですね」
「ならずに」
 そしてというのだ。
「家中は穏やかである」
「それが母上の望まれることですね」
「戦国の世、戦はありますが」
「外で戦をしても」
「内では揉めない」
 それがというのだ。
「母の望みです」
「では小次郎とも」
「これまで通りです」
「和していく」
「そうしていくことです」
「左様ですね、では」
「はい、くれぐれもです」
 政宗に確かな声で告げた。
「家中で争わない」
「そのことをですね」
「そなたが家督を継いでも」
 それからもというのだ。 
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