宇宙戦艦ヤマト2199~From Strike Witches~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第4話 総てを焦がす炎の剣
前書き
原作第3話後編です。
西暦2199年2月10日 木星
報告を受け、直ちに「大和」は第一種戦闘配置に就き、戦闘準備が進められていた。「天城」も最初から第一種戦闘配置についていたため、行動はまさに迅速だった。
「戦術長、現在使用可能な武装を報告!森、船外の状況知らせ!」
「主砲及び副砲、ショックカノンはメインエンジンが修理中のため発射不可!現在一番から三番主砲には三式弾を装填し、待機中です」
「敵艦隊は二手に分かれ、挟撃してくる模様!速度は20Sノット!敵艦の射程圏内に入るまであと3分!」
報告を受け、有賀は目前のコンソールから複数のホロウィンドウを立ち上げながらウィンドウを叩く。
「副砲はまだ三式詰めてないんだな?補助エンジンとバイパスで繋いで一斉射分確保しろ!VLSは何時でも対艦ミサイルを撃てる状態に整えろ!」
有賀の指示に従い、エネルギーバイパスで補助エンジンから副砲へショックカノンを撃つためのエネルギー供給が開始され、すでに三式弾を込めていた3基の主砲塔は左舷へ砲身を向ける。
「全兵装、使用可能!」
『こちら「天城」、戦闘準備完了!』
「よし…先ずは副砲で敵の鼻っ面にかまし、ミサイルで攪乱する。そして三式の射程圏内に入った奴から優先的に主砲を撃つ。その間にエンジン修理が成せれば、主砲もショックカノンを撃ちまくる事が出来る」
『了解!』
有賀からの指示を受け、古代と南部、真下のCICにいる北野は戦闘準備を整える。そして砲塔に直接装備されている測御儀型複合射撃管制センサーで敵艦を捕捉した砲塔と、上部構造物各所に備えた射撃管制センサーで敵との距離と方位、高度を諸元に入れ、狙いを定める。
「攻撃始め!」
有賀の命令一過、2基の副砲は同時にショックカノンを吐き出す。
前部一番副砲の放った砲撃は、先頭を進んでいた駆逐艦級を真正面から撃ち抜き、ドーナツの様な中心部が空洞となった敵駆逐艦は墜落する前に爆沈する。
後部二番副砲は、駆逐艦の後方を進んでいた巡洋艦の上部構造物と、艦首を構成するトサカの様な艦種フィンを抉り取られ、まるで絶命したかの様に艦首発光部から光を失う。そして地表に落ちて激突し、その衝撃とともに爆発して地面を揺らした。
「敵巡洋艦、及び駆逐艦各一、撃沈!」
「VLS、弾数8!発射はじめ!」
「了解、VLS発射!」
直後、今度は煙突を模したVLSから8発の艦対艦ミサイルが発射され、垂直に撃ち上げられた8発はある程度上昇してから偏向ノズルを曲げて飛翔進路を真横に変え、後に続いていた駆逐艦と戦艦に降り注いだ。
駆逐艦は急速に反転して、後部の連装砲塔を向けて対空砲火を上げ、戦艦も3基の三連装砲を指向して大量の陽電子光線を撃つ。しかし艦体に比して近接防御火器の少ないガミラス艦は全て撃ち落とす事が出来ず、どうにか2発を撃墜したものの、駆逐艦は右舷に1発食らって損傷し、戦艦に至っては左舷に5発も食らい、舷側に装備していた砲身付きフェーザー砲は木端微塵に吹き飛び、戦闘に支障が出るレベルの損傷を被った2隻は後退を始める。
ガミラス艦の損傷拡大に動揺したのか、ネウロイ艦隊が隊列を崩して足踏みする様子を見せる中、1隻の駆逐艦が果敢にも突撃して空間魚雷を4発も放ち、有賀はそれを睨み付けつつ怒鳴った。
「パルスレーザー、迎撃始め!」
号令一過、上部構造物周辺に密集する様に装備された多数のパルスレーザーが、プラズマ弾の雨を空間魚雷に叩きつける。
特殊なガスを高周波で熱してプラズマ化し、圧縮して高速で撃ち出すパルスレーザーは、通常のフェーザー砲より破壊力はないものの、貫通力は十分にあり、蜂の巣となった空間魚雷は連続で爆発する。
「敵魚雷、全弾撃墜!」
「よし…主砲、三式をぶちかませ!」
命令一過、二番主砲塔が炎を吐き、同時に3発の実体弾が敵駆逐艦を貫く。
N2純核融合爆弾を内包した三式融合弾は、先の地球上でのガミラス空母撃沈時にも使われた実弾兵器で、射程はショックカノンに劣るものの威力は十分にあり、敵駆逐艦に突き刺さった砲弾は炸裂を起こし、敵駆逐艦は木端微塵に吹き飛ぶ。
別の方に目を向けると、「天城」も同様にミサイルと三式弾の併用でネウロイ戦艦級と駆逐艦級2隻の計3隻を仕留めており、残りは大慌てで後退しようとしていた。
『こちら機関室、メインエンジン及び冷却装置、修理完了!』
『こちら「天城」、機関修復完了!』
「よし、再発進する!機関始動、錨上げ!」
「了解。航海長、両舷前進強速!上舵32度、発進」
「宜候!」
沖田の指示に従い、2隻は山からロケットアンカーを引っこ抜き、鎖を巻き取る。そして復活したメインエンジンから炎を噴き出し、湖から離水する。2隻は舳先を合わせ、浮遊大陸外縁部に移動していく。
「間もなく、大陸外縁部に到達します」
2隻は全速力で浮遊大陸上を駆け、やがて木星の大気圏に出る。そして浮遊大陸からかなりの距離を取ったところで、沖田が指示を出す。
「杉田艦長、回頭180度。艦首を浮遊大陸に向けよ。これよりガミラスの基地を攻撃する。但し敵の規模が分からない中であるし、時間的ロスは許されん、一気に叩く」
『…となると、ここで波動砲を使うのですな?』
「うむ、試射を兼ねてここで撃つ」
杉田の問いに、沖田は頷いて答える。すると真田が口を開いた。
「提督、波動砲の威力は未知数です。効果が不確定な状況下での使用はリスクが高すぎるのでは?」
4時間前にワープで予期せぬトラブルが発生したということもあって、やや慎重であった。
「やってみようじゃないか、ここでダメだったら先に行ってもダメなんだ」
「敵の基地が目の前にあるんです。どんなことがあっても叩き潰すべきです」
機関室から戻って来ていた徳川が賛成の意見を述べ、南部もやや好戦的な意見を以て賛成する。
どの意見も正論である。沖田は口を挟むことなく、黙って部下達の意見に耳を傾けている。
『戦術長、貴様の意見は?』
「天城」で杉田は「天城」戦術長に意見を求めた。波動砲を発射する際、実際に引き金を引くのは彼なのだ。
「戦術長としましては波動砲の使用に賛成します。この先の戦いのためにも自分は「天城」の力の全てを把握する必要があります」
「うむ…」
軽く頷いてから、沖田はメインパネルに映っている杉田の顔を見る。
「艦長、君はどうか?」
『…異論はありません。やはり全機能の把握を務めなければなりませんし、ここでガミラスの伏兵を叩いておかねば、安心して太陽系外に出られませんので』
「…総員、波動砲発射準備にかかれ」
決定は下った。意見具申や反対していた者も、こうなれば命令に服従し、全力を尽くして任務を達成するのみである。
『航海長、取舵反転、艦首を浮遊大陸に向けろ』
『了解、艦首を大陸に合わせます』
右舷スラスターが噴射し、「天城」は左向きに回り、浮遊大陸を正面に取る。その真後ろに「大和」が位置し、磁力ビーム式牽引アンカーを繋げる。
『艦内の電源を再起動時に備え、非常用に切り替える』
「天城」副長が必要措置を採り、「天城」艦内の照明が全て切られ、艦橋を含めた艦内が真っ暗になる。
従来の地球艦船におけるショックカノン使用時同様、「天城」の波動砲使用時は波動エンジンの全エネルギーが開放されるため、発射後は推進力が失われてしまう。
前者の場合はエネルギーが再充填されるまでその場に留まるようになっていたが、後者では波動エンジン再起動までの間は動力が別個になっている補助エンジンで航行することになる。
また、2隻で行動する理由として、1隻が発射して全エネルギーを出し切った後、それを曳航する艦がいれば、早急に戦場を逃れる事が出来る様になり、生存率も上がる。何より今いるのは補助エンジンでも航行が困難な木星の大気圏内。確実にこの場から離れるには、「大和」の推力も必要となる。
『航海長、操艦を戦術長に回せ』
『戦術長に回します』
『戦術長、いただきました』
「船務長、大陸の熱源は?」
『はい、大陸の熱源と敵艦隊の航跡延長の合致した点が北部の盆地にあります。さらにそこから強力なネウロイ反応も検知しました。恐らく巣があるものと思われます』
「大和」のレーダーと複合式センサーでも、大陸北部の盆地に熱源反応とネウロイの瘴気反応が捉えられ、そこにガミラス基地とネウロイの巣がある事は明らかであろう。
『よし、戦術長に座標を送れ』
『了解、艦首を大陸中心に向けます』
レーダーで敵基地を捕捉した「天城」船務長が、解析情報を戦術長へと渡す。それを基にして、戦術長は照準を合わせる。
『波動砲への回路開け』
『回路開きます、非常弁全閉鎖、強制注入器作動』
機関長が応じ、波動エンジンのエネルギーが波動砲に充填され始める。
『安全装置解除』
『セーフティロック解除、強制注入器作動を確認、最終セーフティ解除、ターゲットスコープオープン』
「薬室内、タキオン粒子圧力上昇…86…97…100…エネルギー充填、120%」
両刃の剣を彷彿とさせる「天城」艦首が左右に割れ、そこから1門の角形の砲身が現れる。そして砲口に向けて粒子が吸い込まれ始める。
『浮遊大陸、艦首方向二万三千キロ、相対速度36』
『艦首、軸線に乗った…照準、誤差修正プラス2度』
艦首の波動砲口にエネルギーが充填され、細かい光の粒子が吸い込まれる様に集まり、一つの光球を生み出す。
「波動砲発射用意、対ショック、対閃光防御」
沖田の指令一過、「大和」艦橋の窓に減光の為のフィルターがかかり、さらに乗員は全員対閃光用のゴーグルを着用する。
『電影クロスゲージ明度20、照準固定』
「天城」艦首を光が覆い尽くしていき、かなりのエネルギーが集中しているのが見て取れる。
『発射10秒前…9…8…』
「―っ、提督!敵基地より複数のミサイルが発射されました!こちらに向かってきます!」
「かまうな、発射態勢を続行せよ」
森からの報告を聞きつつ、沖田はそれだけ言う。ミサイル群は「天城」の波動砲の射線上に入っている上に、もし撃ち漏らしたとしても「大和」が迎撃に入るからである。その間もカウントダウンは進む。
「4…3…2…1…」
「撃て」
沖田提督の声を合図に、「天城」戦術長は無言で引き金を引く。
瞬間――二重の減光フィルター越しの視界が眩いばかりの青白い閃光に照らされた。
「天城」艦首が閃光に包まれ、直後、青白い光の奔流が飛び出す。そしてそれは木星の大気を切り裂きながら、浮遊大陸北部に突き刺さった。
迎撃ミサイルや、基地に向かって逃げていた艦船をも呑み込んだ光の波が大陸表面の樹木を瞬時に蒸発させ、大地そのものを砕き、ドロドロに溶かしていく。そして緑色の土筆の様な塔からなるガミラス基地や、黒い繭状のネウロイの巣も光の奔流に呑まれ、蒸発していく。
その熱量は瞬く間に大陸の北半分とその真下の木星の大気をも熱し、高圧の熱波が2隻を押し上げる。
「ッ、今だ!エンジン全開!急いで木星の重力圏から抜け出せ!」
有賀の指示に従い、「大和」はメインエンジンと補助エンジンの両方を使って推力最大で「天城」を引っ張り、「天城」も「大和」の噴射炎を浴びぬ様に位置を調整しながら、牽引ビームに引かれながら木星を離れる。
そしてようやく木星の重力圏から脱した直後、メインパネルに映ったのは、縞模様の一部分が縦に抉られた様な状態になった木星の全体図だった。
「こ、これが、波動砲の威力…」
「浮遊大陸自体も随分と破壊されたからな…下手すれば惑星そのものも破壊しかねん…」
古代と有賀がその威力に唖然となる中、沖田は席から立ち上がりつつ、メインパネルを見つめる。
「…この兵器は、かつての核兵器に匹敵する、使いどころを見誤る事の出来ぬ存在だ。今後、どの様に扱うべきなのか、十分な議論が必要となるだろう…」
沖田がそう呟く中、2隻は舳先を返し、再びロケットを吹かす。そして一部分が大きく変貌してしまった木星から離れていくのだった。
後書き
次回、原作にはなかったオリジナル回となります。
ページ上へ戻る