夢幻水滸伝
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第百五十八話 敵を待ちその七
「そこは気をつけるんじゃ」
「そういうことだね」
「ああ、そしてな」
「そして?」
「焦る時はくつろぐことじゃ」
そうしろというのだ。
「それがええんじゃ」
「そういうことだね」
「ああ、美味いもんでも食うてな」
「それだとあれじゃな」
山本も槍を振っている、そうしつつ言ってきた。
「牡蠣鍋じゃな」
「あんたそれ好きだね」
「それかお好み焼きじゃ」
「広島焼きかい?」
「そっちではそう言うのう」
「こっちは大坂のをそう言うからね」
だからだとだ、玲子は山本に笑って返した。大坂はこの世界での書き方で呼んでいた。とはいっても言葉のニュアンスは同じである。
「お好み焼きはね」
「そういうことじゃのう」
「ああ、けれどいいね」
「こっちのお好み焼きもじゃな」
「ああ、両方食うかい?」
「わしも大坂の方も好きじゃ」
山本は玲子に笑って返した。
「どっちもな」
「それじゃあね」
「今から両方食うか」
「そうしようね」
「酒は飲めんが」
井伏は四股を踏み続けている、そうしつつ二人に話した。
「サイダーでもコーラでものう」
「飲めるね」
「お好み焼きには炭酸じゃけえ」
それが大坂のものでも広島のものでもというのだ。
「それでじゃ」
「サイダーかコーラだね」
「ラムネでもいいけえ」
「ラムネな」
その飲みものの名前を聞いてだ、山本はこんなことを言った。
「わしあれとサイダーの違いがわからんかった」
「そうじゃったか」
「子供の頃はな」
「ちょっと違うじゃろ」
「今はそれがわかるが」
それでもというのだ。
「しかしな」
「子供の頃はか」
「わからんかったんじゃ」
「まあ似てると言えばな」
「似てるのう」
「それはな」
実際にとだ、井伏も答えた。
「わしも思う」
「そうじゃな」
「どうしてもな」
「しかしな」
「ちゃうからのう」
「サイダーとラムネは」
この二つはというのだ。
「ほんまに」
「ラムネの方が安いんだよね」
玲子が笑って言ってきた。
「実は」
「そうじゃ、そして味もじゃ」
どうかとだ、山本は玲子に応えた。
「ラムネの方が庶民的な感じじゃのう」
「サイダーも庶民的だけれどね」
「よりじゃ」
「あえて言うなら駄菓子屋で売ってるのがだね」
「ラムネじゃ」
こちらだというのだ。
「そうなるわ」
「そうだね」
「それでお好み焼きには」
「サイダーだね」
「それじゃな」
まさにというのだ。
ページ上へ戻る