八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第二百八十八話 飲みに行ってその十二
「僕も好きです」
「そう言って頂けるお客様は」
「お店もですか」
「好きです」
「そうですか」
「是非またです」
笑顔での言葉だった。
「いらして下さい」
「それでは、ただもう」
「今はですね」
「アイス全部いただいて」
そしてだ。
「お酒も全部飲んで」
「満足されましたか」
「はい」
もうすっかり酔っていることが自分でもわかる、正直意識があって歩けるけれどそれまでという状況だ。
「これで」
「ではまたですね」
「また次の機会に」
「狐のお宿にですね」
「来させてもらいます」
つまりこのお店にだ。
「そうさせてもらいます」
「そしてその時はですね」
「炒飯も頂きます」
そして中華系のメニューもだ。
「そうさせてもらいます」
「それでは、あと当店の一番の自慢料理ですが」
「それは何ですか?」
「揚げです」
こちらだというのだ。
「揚げのお料理そしてきつねうどんです」
「そういえばメニューにありますね」
おうどんがだ。
「きつねうどんが」
「他のおうどんのメニューはないですが」
「きつねうどんはですね」
「あります、そしてたぬきそばも」
メニューにはこちらもある、関西では薄揚げを上に乗せたお蕎麦をこう呼ぶのだ。逆にきつねそば、たぬきうどんはない。地域によっては天かすを入れたおうどんをたぬきうどんと呼んだりすることは知っている。
「よかったら」
「たぬきそばもありますか」
「お付き合いということで」
「狐と狸のですか」
「お互い親戚ですし」
「イヌ科ですしね」
狐と狸はだ、実はこの二種の生きものは親戚同士なのだ。
「だからですね」
「左様です」
「狸もいいのですね」
「そうです、狐と狸は仲良くあってです」
「いいですか」
「そう思います、では」
「今度はですね」
「きつねうどんもどうぞ」
「それじゃあ」
僕はお店の人に笑顔で応えた、そうしてだった。
飲み食いを終えてお勘定を払ってお店を出た、振り返ってお店の方を見ると実際に狐に摘ままれた気がした。不思議な感じだった。
第二百八十八話 完
2020・6・15
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