八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第二百八十八話 飲みに行ってその十
「私とも」
「そうなんですか」
「昔から」
「それだけ長いお付き合いですか」
「初代の頃から代々です」
「それは古いですね」
「華僑あるところ狐ありでして」
その狐を思わせるお顔での言葉だ。
「私共も代々」
「狐、ですか」
「はい、中国は狐のお話が多いですから」
「それは知ってます」
僕にしてもだ、赤ワインを飲みつつ応えた。
「仙狐とかいますね」
「はい、狐の社会もある位で」
「俗にそう言われていますね」
「ですから」
それでというのだ。
「華僑について行ってです」
「狐もですか」
「います」
「日本にもですか」
「そうなのです、それで長いお付き合いは」
かなり強引に狐の話を終わらせてきた、聞いていてそう思った。
「今もです」
「続いていますか」
「それで中華料理もです」
「出されていますか」
「簡単なものですが」
それでもというのだ。
「お出ししています」
「だから炒飯なんかもあるんですね」
「炒飯は外せないですね」
「中華料理の基本ですよね」
俗にそう言われていて僕もそう聞いています。
「何といっても」
「基本中の基本ですね」
「そうですよね」
「フランス料理で言うとオムレツですね」
「それでイタリア料理ではスパゲティですか」
「和食ですとお味噌汁ですね」
もうこれがないとだ、どれも。
「そうした位置にありますね」
「そうしたお料理ですね」
「それで、ですか」
「うちのお店でも置いていて」
それでというのだ。
「やはりそれなりの食材で」
「それなりのお値段ですか」
「そうしています」
「そうですか」
「またいらした時はどうぞ」
こう勧めてもきた。
「炒飯も」
「その時はですね」
「はい、宜しいでしょうか」
「そうさせてもらいます」
僕も笑顔で応えた。
「是非」
「それでは」
「いや、何かですね」
「何かとは」
「不思議ですね」
畑中さんに言われた通りだった。
「このお店は」
「どう不思議でしょうか」
「狐のお宿にいるみたいな」
「狐ですか」
「そんな気分になります」
「狐のお宿でしたら」
それならとだ、お店の人はこう返してきた。
「目が覚めるとです」
「そこは野原ですね」
「そしてご馳走やお酒も」
「葉っぱとかお水ですね」
「そうしたものです」
「そうですね」
童話でよくあることだ、楽しんだと思っていて満足して寝ると目が覚めて野原の中にいて化かされたとわかるのだ。
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