| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

戦国異伝供書

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第百六話 八万の大軍その三

「勝てぬ」
「こちらは八千」
「河越城の兵を入れても一万おるかどうか」
「これではですな」
「正面きって戦っても勝てませぬな」
「だからじゃ」
 それ故にというのだ。
「ここはじゃ」
「正面からは戦わぬ」
「そうしますな」
「何としても」
「敵を油断させる」
 これまで気付かれぬように用心していた彼等に対してというのだ。
「戦の前にな」
「そうしてですな」
「一気に攻める」
「そうしますな」
「この度は」
「夜に攻めたい」
 夜襲、それを仕掛けるというのだ。
「さらにな」
「敵を油断させ」
「そのうえで夜に攻める」
「ではですな」
「そうなる様に手を打っていきますか」
「出陣してからな、」
「ではその策はです」
 幻庵が言ってきた。
「それがしがです」
「出してくれますか」
「これより、敵を油断させ夜襲にするには」
 それにはとだ、幻庵は氏康に自分の考えを話した。氏康は彼からその話を聞くと確かな顔で頷いて述べた。
「それならば」
「いけますな」
「その策見抜ける者は敵におりませぬ」
「山内上杉家の長野殿ならば若しやですが」
「その長野殿はですな」
「上野に残っておられ」
 そしてというのだ。
「出ておられぬのですな」
「はい」
 そうだとだ、風魔が答えた。
「長野殿のお姿確かにです」
「上野でじゃな」
「それがしが見ました」
 こう答えた。
「まさに」
「山内上杉家はご当主自身が出陣され」
「長野殿は上野に備えとしてです」
 そのうえでというのだ。
「残っておられます」
「ならばです」
「この策敵に見抜ける者はない」
「ですから」
 それでというのだ。
「間違いなくです」
「その様にですな」
「進めることが出来ます」
 戦をというのだ。
「間違いなく」
「さすれば」
「はい、ここはです」
 まさにというのだ。
「出陣しましょうぞ」
「そうしてですな」
「敵を策に嵌め」
 そしてというのだ。
「勝ちましょうぞ」
「では」 
 氏康も頷きそうしてだった。
 氏康はここに出陣を命じた、そうして今北条家は出せる兵を全て出して河越城に向かった。そうしてだった。
 城を囲む大軍を見て氏康は言った。
「この数は」
「勝てませぬな」
「はい、今の我等の数では」
 こう幻庵に答えた。
「とても」
「左様ですな、しかし」
「叔父上の策ではですな」
「勝てますぞ」
 間違いなくというのだ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧