戦国異伝供書
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第百六話 八万の大軍その二
「ならよい」
「ではですな」
「我等は関東に専念しますな」
「その様にしますな」
「そしてまずはじゃ」
氏康は家臣達に話した。
「河越じゃ」
「左様ですな」
「あの城ですな」
「あの城での戦ですな」
「そのことですな」
「あの城を失えば我等の武蔵の政は大きく退き」
そうなってというのだ。
「そしてじゃ」
「さらにですな」
「威信も大きく落ち」
「厄介なことになりますな」
「そうなってしまう、だからな」
それ故にというのだ。
「ここは勝つ」
「勝てば大きいですな」
「実に」
「負ければ失うものが多いですが」
「勝てばですな」
「我等は武蔵の全てを手に入れ」
河越からというのだ。
「さらにじゃ」
「大きくですな」
「関東に力を及ぼすことが出来る」
「そうなりますな」
「だからな」
氏康は家臣達にさらに話した。
「用意周到にじゃ」
「手を打ってきましたし」
「これからもですな」
「そうしていきますな」
「そうじゃ、最後の最後まで相手に気付かれぬ」
即ち両上杉をはじめとした関東の諸家にというのだ。
「それが大事じゃ」
「今はですな」
「気付かれれば相手も用心する」
「だから今は用心させぬ」
「そうすべきですな」
「左様、用心させぬこともじゃ」
敵にというのだ。
「戦であるな」
「油断させることも」
「それも知略ですな」
「ではですな」
「今はですな」
「動かぬ」
こう言ってだった、氏康は今はあえて兵を動かさずそのうえで河越城を巡ってことが動くことを見ていた。その間だった。
両上杉はしきりに関東の諸侯に話をし反北条でまとめていた、そしてそこには古河公方もいて彼を旗印としてだ。
八万の大軍が遂に動いた、氏康は河越城からの狼煙を見て言った。
「遂にじゃ」
「時が来ましたな」
「いよいよですな」
「戦ですな」
「その時が来ましたな」
「うむ」
まさにとだ、氏康は家臣達に答えた。
「その時が来たわ」
「では、ですな」
「今より兵を集め」
「そうしてですな」
「出陣しますな」
「そうする、河越城に向けてな」
こう家臣達に告げた。
「よいな」
「そしてですな」
「八万の大軍をですな」
「倒しますな」
「そうしますな」
「そうする、ただ今向かってもな」
八万の大軍にというのだ。
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