| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第二百八十六話 色鉛筆その十六

「だからね」
「従妹の娘も北海道から出たいんだ」
「函館でも普通に雪に包まれるから」
 函館の街全体がだ。
「冬は長い間ね」
「それで有名だね」
「それが奇麗でもあるけれど」
 それでもというのだ。
「それでも函館でもそうで」
「寒くて」
「札幌はもっと寒いから」
「それでなんだ」
「もう出てね」
 北海道をというのだ。
「暖かいところにいたいっていうのよ」
「北海道に生まれても寒さに慣れていないんだ」
「馴れても好き嫌いは別ってことよ」
 香織さんの返事はシビアなものだった。
「要するにね」
「そういうことなんだ」
「だからね」
 それでというのだ。
「そう言っていて」
「八条学園を受験して」
「それで合格してね」
 そしてというのだ。
「通いたいっていうのよ」
「そうした事情なんだね」
「それで今はクリスマスプレゼントで」
 香織さんは微笑んで言った。
「合格したらね」
「その時はその時でなんだ」
「プレゼント贈るわ」
「今度のプレゼントも考えてるんだ」
「その時もね、一体何にしようか」
 どういったプレゼントにというのだ。
「今から楽しみにね」
「考えているんだね」
「そうなの。けれどまずはね」
「クリスマスプレゼントだね」
「それはもう買ったから」
 だからだというのだ。
「贈るわね」
「送料も出すよね」
「あっ、八条運送にお願いするわ」
 八条グループの企業の一つだ、所謂宅急便とかそうした配送を取り扱う企業だ。全国に展開している。
「あれだとグループの人送料無料じゃない」
「学園に通っていてもね」
「家族の人もね、だからね」
「八条運送にお願いして」
「送料無料でね」
 それでというのだ。
「いくから」
「それじゃあだね」
「そっちのお金はいらないから」
 香織さんは笑って僕に話してくれた。
「安心してね」
「そのうえでだね」
「贈るわ」
「そうするんだね」
「クリスマスに届く様にね」
 クリスマスプレゼントなだけにというのだ。
「そうするわ」
「それじゃあ」
「ええ、早速手続きするわ」 
 香織さんは笑顔のままだった、その手にあるプレゼントはまだ先だというのに完全にクリスマスのものになっていた。


第二百八十六話   完


                   2020・6・1 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧