夢幻水滸伝
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第百五十一話 吹雪の中の夜襲その八
「君と夏目君の部隊は騎馬隊だな」
「だからですか」
「今から突撃をしてるか」
「仕掛ける場所は」
「正面だ」
そこだというのだ。
「そこから攻めてくれるか」
「わかりました、実は今僕達もです」
滝沢は吉川に話した。
「その突撃をです」
「提案しようとか」
「話して今です」
「なら丁度いいな、これからだ」
「突撃ですね」
「君達の前方の敵軍は崩れようとしている」
吉川は戦局全体を見ている、それでこのことも把握しているのだ。そのうえで滝沢と彼の隣にいる夏目に言うのだ。
「それならだ」
「ここで、ですね」
「攻める」
まさにというのだ。
「突撃でな」
「では」
「井伏と山本も向かわせる」
この二人もというのだ。
「今からな」
「攻撃力のある二人をでおじゃるか」
「そうだ、丁度すぐ傍にいる」
吉川は夏目にも話した。
「だからだ」
「ここで、でおじゃるか」
「正面に突撃をしてくれ、ただ」
吉川はこうも言った。
「援護攻撃は出せない」
「それはでおじゃるか」
「申し訳ないが他の場所に回している」
援護攻撃出来る部隊はというのだ。
「だから砲撃等はな」
「それでの援護はでおじゃるか」
「出来ない、弓兵も鉄砲隊も他に回している」
他の戦線にというのだ。
「そちらの術、それに手持ちの銃や弓矢でな」
「そうしたもので、ですか」
「援護をしてくれ、それで頼む」
「わかりました、では今すぐに」
滝沢は吉川に強い声で応えた。
「攻めます」
「それではな」
「今すぐに」
「そうだ、今まさに崩壊しようとしている」
敵の戦線はというのだ。
「それならだ」
「ここで、ですね」
「攻めることだ、頼んだぞ」
「わかりました」
滝沢は頷きすぐに自身の馬に乗った、夏目も同時にそうしていた。二人は無言で頷き合いそうしてから自分達の部隊に突撃を命じた。
そうして前方に突撃を仕掛けるがここでだった。
井伏と山本も来た、二人は自分達の部隊を率いて駆け付けてきた、そうして彼等に対して言ってきた。
「正面は任せるけえ」
「わし等が歩兵部隊を率いて攻めるわ」
「だからこんな達は左右を頼む」
「そうしてくれるけえか」
「わかったでおじゃるよ」
夏目は二人にこう返した。
「ではでおじゃる」
「ああ、左右にな」
「向かってくれ」
「騎馬隊は攻勢の時は軍勢の左右に位置する」
滝沢は戦術の常道を話した。
「そういうことだな、ではだ」
「これよりじゃ」
「思いきりしごうたるか」
「そうだな、ではだ」
滝沢は左、夏目は右に騎馬隊を移動させた。正面には井伏と山本と二人が指揮する歩兵部隊がいる。その彼等が。
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