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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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ナツvsメイビス

 
前書き
最終章尻流頑張ったと思う人?

尻流「は~い!!」
冷温「俺の方が頑張っただろ?」
変態「もっと活躍の場がほしかったです!!」

お前らはいいんだよ、サブなんだから。
今回は尻流が頑張ったから前半だけちょっとしたご褒美を彼にあげることにしました。
クリスマスでも彼にはちょっとしたご褒美をあげる予定ですので、もしよければ気長にお待ちください。 

 
朝一でいつも通りにギルドへとやってきた俺。ただ、今日はいつもと違いギルド内に人がいない。いや、厳密にはいるんだけど・・・

「なんで皆さんお風呂に?」

その日はなぜか皆さん揃いも揃ってお風呂へと向かったらしく、リクエストボードの前にもカウンターやテーブル席にもほとんど人がいない。ていうか、いるのはお酒を飲んでる男性陣ばかりで、女性たちは全員お風呂に入りにいっているらしい。

「俺もお風呂行こうかな」

そう言った瞬間、後ろから何人かが立ち上がる音が聞こえて振り返った。驚いた俺の顔を見て立ち上がっていたウォーレンさんやマックスさんたちは、何事もなかったかのように元の位置へ着席している。

「な・・・なんだったんだ?」

なんか身の危険を感じないわけでもないが、やることもないし、気にするのもあれなのでお風呂へと向かって歩いていく。そんな時だった。女湯からこんな声が聞こえてきたのは。

「ナツ!!」
「呼ばないでよ!!」

エルザさんとルーシィさんの声。女湯から呼んではならない人を呼ぶ声に困惑したが、いくらナツさんでも呼ばれたので来ましたなんてことは・・・

「なんだ?」

ありました。

「ナツさん!!何しようとしてるんですか!?」

タオル一枚で男湯から出てきたナツさんは、あろうことか女湯に入ろうとしている。

「ダメですよ!!何考えてるんですか!?」

悪びれる様子もなく、一瞬俺が間違っているのではないかと勘違いしてしまうほど無表情で女湯の脱衣所の方へと入ろうとしたナツさんの腕を引っ張り引き止める。

「何すんだシリル!!エルザに呼ばれたから行かなきゃ行けねぇだろ!?」
「それは違う!!絶対間違ってます!!」

懸命に彼を引き止めようとするが、向こうの方が体が大きいし力も強い。そのため、当然ながらズルズルと引き摺られていく形になってしまい・・・

「呼んだか?」

いつの間にか、脱衣所すら通り過ぎ、大浴場の中へと侵入してしまっていた。

「「「「「きゃあああああ!!」」」」」
「入ってくんな!!」

悲鳴をあげて脱衣所の方へと駆けていく皆さん。その声を聞いて俺は正気を取り戻し、赤面した。

「わっ、皆さんすみません!!」

目を隠して皆さんの裸を見ないようにする。きっと怒られることだろうと震えていると、予想外の出来事が発生した。

「あらシリル、服着たままお風呂入るつもりだったの?」

声をかけられ手をどけて目を開けると、そこにいたのはミラさんだった・・・全裸の。

「わっ!!ごめんなさい!!」

一瞬気を抜いてしまったせいで見てはいけないものを見てしまい再び元の姿勢へと戻る。しかし、その格好のままいるわけにはいかないと思っていると、その隙に周りに囲むように人が集まってきているのを気配で感じた。

「シリル、今はナツさんが入ってるからお風呂は入れないですよ」
「あたしは別に気にしないけどね」
「それはカナだけだよ」

さっきまでお風呂にいたであろう人たちの声がする。ただ、ナツさんが入ってきたと同時にほとんどの人が脱衣所へ戻っていったから、服を着ているんじゃないかと思い、ゆっくりと目を開ける。

「なんで目を閉じてたの?」
「ナツなら裸見られても気にしないと思うよ?」

目が慣れてくる視界に入ってくる皆さんの姿。そこはお風呂場だからか、肌色ばかりになっていた。

「あ・・・いや・・・その・・・」

もう目を閉じていると何を言われるかわからず顔をうつ向けているのがやっと。その間も彼女たちは俺が男だということを気にしていないのか、色々問いかけてきているが、もう何も頭に入ってこない。

「ちょっとシリル!!なんで女湯に入ってきてるの!?」

もうどうすればいいのかわからずにいたところにやってきたのは、バスタオルを胸元まで巻いているウェンディ。後ろからはシャルルとセシリーもやってきていた。

「ウェンディ!!助けて!!」
「なんであんたが助けを求める側なのよ」
「色々とおかしいんだけど~」

猫二匹にもっともなことを言われるけど、今はそんなこと気にしてられない。涙目で彼女の方を見ると、ウェンディは赤面しながらこちらへと走ってくる。

「皆さん!!シリルはこれでも男の子なんですよ!!」
「これでもとは!?」

恋人とは思えないような言葉に突っ込みを入れずにはいられない。

「あれ?そうだっけ?」
「そんなこと言ってたような・・・」
「でも、シリルは男の子に見えないわよね」
「うぐっ」

しかし、女性陣の反応は全然変わらない。むしろそれでも女の子にカウントされてしまっているのが悔しい・・・

「違いますよウェンディ!!シリルはジュビアとグレイ様の娘なんですから女の子です!!」
「それが一番間違ってますよ!?」

その中でもジュビアさんが一番暴走してたけど、彼女はどや顔をかましており扱いに困ってしまう。すると、ここでこちらへと走ってきていたウェンディが・・・

ツルッ

「キャっ!!」

濡れた床のせいで全てしまい、勢いよくこちらへと転がってくる。彼女はそのまま止まることもなく向かってくると・・・

「うわっ!!」

俺へと衝突し、押し倒された。

「大丈夫?ウェン・・・」
「シリル?大丈・・・」

交錯した俺とウェンディを心配して顔を覗き込むようにしているミラさんとジュビアさん。しかし、彼女たちは途中で言葉を飲み込んだ。その理由は、俺のウェンディの現在の体勢にある。

「うう・・・ごめんねシリル、大丈・・・」

ぶつけた頭を押さえながら体を起こしたウェンディ。それに俺は答えることができない。いや、答えられる体勢ではないのだ。

「むごごごご・・・」

その理由は、ウェンディが俺の顔に跨がっているから!!この状況に気が付いたウェンディは耳まで真っ赤にすると、すぐさまバスタオルを押さえながら立ち上がり・・・

「シリルのエッチィ!!」

床に倒れている俺の顔面に、魔力を纏った拳が突き刺さった。

「痛いけど・・・ちょっとラッキー・・・」

ウェンディのパンチがいいところに入ったせいで意識が朦朧としているけど、皆さんの裸やウェンディに密着されてラッキーと思っている自分もいる。そんなことを思いながら、俺の意識は暗闇の中へと飲み込まれていった。
















それからしばらくして、ナツさんと初代の勝負?が終わってしばらくした後、意識を取り戻した俺はウェンディと一緒にエルザさんたちに呼び出されていた。

「というわけで、何せ手がかりがない。とにかく、樹齢百年以上の木全ての根本を掘るのだ」
「というわけで?」

先ほどの混浴?入浴?騒ぎの時に遊びに来たウォーロッドさんからの依頼で、初代が100年前にどこかの木の根本に植えた箱を掘り出してほしいと言われたらしい。人のものを勝手に掘り出すのはいかがなものかと思うが、ウォーロッドさんのお願いなので大丈夫ということらしいけど・・・いいのかな?

「えぇ!?そんなの無理だよ!!」
「あぁ、飛んでもない数だぜ」

ただこの依頼、少し無理なところがある。樹齢百年以上の木なんていくらでもあるし、その根本に埋まっているものを今日中に掘り出すなんて・・・

「なんだよ、お前数えたことあんのかよ!!」
「数えるか、んな暇人じゃねぇ」

なぜか顔がパンパンに晴れているナツさんとグレイさんが睨み合っているけど、それどころではない。そもそもマグノリアの周辺にも森林はあるし、そこも調べなければならないとなると・・・

「大仕事ね」
「めんどくさいよ~」

シャルルとセシリーがタメ息をつきながらそう言う。乗り気じゃない人もいることでいささか雰囲気が悪いけど、それでもやる気があるメンバーもいる。

「でも、初代のためでもあるし」
「それを言われると反論できないよね」

ウェンディの言う通り、初代のためとなると話が変わってくる。ルーシィさんいわく、彼女が元気がなさそうだったということもあり、彼女が元気の源と言っていたその宝物を掘り起こすことになったのだ。

「はぁ!!もしグレイ様が樹木なら、ジュビアはその樹液になりたい!!」
「よくわかんねぇ!!その例え!!」

そんな中でも平常運転のジュビアさん。その姿を見た俺たちは苦笑いする。

「とにかく探すぞ!!もう一回初代と勝負だ!!」
「ちょっと違うけど・・・」
「初代と勝負?」

お風呂での一件を勝負と考えていたナツさん。その続きと言いたいんだろうけど、普通の感覚とは明らかに違うだけに、ルーシィさんは呆れた感じを見せ、ハッピーは意味がわからずにいた。

「二チームに別れて探すぞ。いいか?」
「いや・・・チーム分けすっと大体ろくなことには・・・」

対象の数があまりにも多すぎるため、手分けして探す方がいいだろう。グレイさんだけは何か嫌がっているけど、そんなことはなかったかのように話は進んでいく。

「Aチームは私、ナツ、ルーシィ、ハッピー。Bチームはグレイ、ジュビア、シリル、ウェンディ、シャルル、セシリーだ」

エクシードの関係上、Bチームが多くなってしまってるけどしょうがない。そもそも木の根本を掘り起こすと力仕事になるわけで、俺とウェンディは子供の腕力しかないから、これは順当なチーム分けと言えるだろう。

「あ~ん!!グレイ様と一緒に探せるなんて、ジュビア幸せ!!」

愛しのグレイさんと一緒のチームになれたジュビアさんは大喜びだけど、彼の方はテンションダダ下がりのご様子。何が不満なのか全然わからないけど、地雷になりそうだから口は挟まないでおこう。

「行くぞ!!ハッピー!!ルーシィ!!」
「あい!!」
「うん!!」

対してナツさんたちはやる気満々で意気揚々と立ち上がる。対照的なチーム分けになってるけど、俺は何も言わない。これはグレイさんの問題ですしね。

「頑張ろ!!シリル!!」
「うん!!」
「いざ!!」

ウェンディとアイコンタクトを取り、俺たちも気合いを入れてギルドから飛び出していく。どれだけの仕事になるのか考えるとキツいけど、初代に元気を出してもらうために頑張らないと!!

















「これでよし」
「こっちもできたよ」

ウェンディと俺は木に✕印を付け終えると、グレイさんとジュビアさんへと向き直る。

「皆さん、それっぽい木を選んでみました」
「これの根本をまずは掘って行きましょう」

俺とウェンディは自然の力を利用できる魔法を使うから、こういう時に何となく役に立つ。もちろん確実ではないけど、それでもないよりはいいはずだよね?

「さすがだな、ウェンディ、シリル。おし!!じゃあ行くぜ!!」

それを聞いたグレイさんは上着を脱ぎ捨てると、なぜか魔力を溜め始める。

「え?」
「アイスメイク・・・」
「グレイさん!?」

彼が何をしようとしているのかわからず唖然としていると、彼の頭上に氷の槌が現れる。

「ハンマー!!」
「きゃっ!!」
「うわっ!!」

彼の背丈ほどの大きさのハンマーが木の根本付近に直撃した。その結果、巨大な歴史ある木は根本が緩んでしまい、彼を押し潰すように倒れてしまった。

「グレイ様」
「大丈夫ですか?」
「あぁ・・・箱はあったか?」
「ないです・・・」

普通だったら即死レベルの潰れ方をしているけど、さすがはグレイさん。一命は取り留めた様子。ただし、大問題が発生してはいるけど。

「100年の木を倒したわ」
「これは怒られるね~」

街のシンボルってわけではないけど、歴史ある木の一つを根本から倒してしまったわけで・・・きっと街長に怒られる未来が待っているだろうけど、彼は気にした様子もなく立ち上がる。

「よし、じゃあ次行くぜ。アイスメイク・・・」

気にしていないどころか、彼は反省もしていないようで再び魔力を溜め始めた。

「いや!!ちょっと!!」
「グレイさんダメです!!丁寧に!!」

慌てて彼を止めようとすると、その声はしっかりと届いていた。いや、もしかしたら最初からそのつもりだったのかもしれないけど、彼は氷のスコップを作り出すと、雄叫びをあげながら根本を掘り起こしている。

「ハッ!!そうだ。水流台風(ウォーターサイクロン)!!」
「ええ~!?」
「ちょっと!?何する気!?」

やっと安心して作業に入れると思ったのもつかの間、今度はジュビアさんが木の根本から水を吸い上げ、それが辺り一帯を濁流にしてしまう。

「わぁ!?百年の木が!?」
「ジュビアさん何してるんですか!?」
「えぇっと・・・地下水を噴出させれば掘らなくても出てくるかなぁ、と」

力仕事になるとどうしても大変なのはわかる。ただ、森が川のようになってしまっており、それがあまりにも危険な行為であることを物語っている。

「お願いです!!掘りましょう!!優しく!!」

流されそうになり慌ててるウェンディの手を握りながら、どんどん溢れてくる水を吸い込んでいく。ただ、あまりの量に飲みきれなかったので、水が引くまで作業再開できずに時間を消費してしまったのだった。
















「クソ・・・これじゃあラチがあかねぇな」
「見つかりませんね、もっと深く埋めたのでしょうか?」

それから数時間、ひたすら穴を掘っているが全然目的の物は出てこない。さすがに拾うの色が見えてきて、一度手を休めていた。

「百年前より木は太くなってますよね、きっと」
「つまり木の下に埋まってるってこと?」
「そんなことなる・・・のかな?」

木が太くなれば根が広い範囲に伸びていくことになる。そうなれば近くに埋めていた箱を飲み込むこともでき・・・るのか?

「あ!!」

よくわからない木の生体に頭を悩ませていると、図書室で調べものをしていたシャルルとセシリーが帰ってきた。

「おかえり、シャルル」
「どうだった?セシリー」
「手がかりになりそうなヒントを見つけたわ」
「大変だったよ~」

何やら手がかりになりそうなものを見つけてきてくれたらしい。初代が何かを埋めた頃、当時のメンバーだったユーリさんとプレヒトさんが地面に何かを埋めたとか埋めてないとかで大喧嘩したそう。
その争った場所に二人に案内してもらうと、大きな滝と見るからに百年は経っているであろう大木があった。

「この辺りだと思うわ」
「おおっ、なんかありそうな気がするな」
「でも、埋めた場所で喧嘩したのでしょうか」

言われてみれば、埋めたのかどうかで喧嘩になったのなら、その場所で喧嘩をしたとは限らない。そもそも埋めてたら現行犯で問い詰められるだろうし・・・

「でも・・・他に手がかりもないですし・・・」
「と・・・とにかく掘ってみましょう!!」
「よーし!!行くぜ!!」

もう時間がかかることは承知しているのだから、不発だったらそれでも構わない。そのくらいのつもりで掘ろうと思っていたところで、またしてもこの人が勝手に飛び出してしまう。

「「グレイさん!!」」

最初に見たような体勢になっている彼を見て怒声をあげる俺とウェンディ。

「任せろ!!」
「任せられないだって~!!」

俺たちの制止の意味をわかっていなかった彼は巨大なシャベルを作り出し、木の根本へと直撃させる。その結果はもちろん・・・

「「あぁ・・・」」
「また百年の木を倒すわ」

崖の壁に頑張って根付いていた木は重力に従いゆっくりと落ちていく。ただ、その時何かがこちらへと飛んでくるのが見えた。

「あれは・・・」

木が倒れてきていることも忘れてそれに駆け出す俺たち。真っ先に動いたジュビアさんがそれを拾い上げる。

「箱です!!」
「ありましたね!!」
「やったぁ!!」
「どうよ」

どや顔のグレイさんはさておき、ようやく見つけたであろう目的のものの中を確認するため開けてみる。そこに入っていたのは・・・

「「「「「??」」」」」
「なんでしょう?」

中に入っていたのは一枚の紙。グレイさんがそれを手に取り読み上げる。

「これ、借用書だぜ」
「借用書?」
「誰のですか?」
「686年、6月27日、私ユーリ・ドレアーは金5万Jをプレヒト・ゲイボルクより確かに借用しました。なお、返済期限は・・・」
「もしかして・・・大喧嘩の理由ってこれですか?」
「しょうもねぇ・・・」

大方、借金の返済に困ったユーリさんがこれを埋めてプレヒトさんから逃げようとしたのだろう。ただ、それを誰かに見られてて結果こんなことになったのだと俺たちはすぐに察した。

「おいちょっと待てよ・・・これ5万じゃねぇ!!5億だぞ!?」
「えぇ!?」

なんでそんな大金になっているんだと思って覗き込むと、突如一の位の0が9へと変化した。

「何!?」
「今も金額は増えてるわ!?」
「なんで~!?」
「どういうことですか?」

よくわからない状況に困惑せざるを得ない俺たち。すると、ウェンディが何かに気が付いたのか、その紙を受け取る。

「これ、百年前の紙なのに新品同様です。きっと、返済期限を過ぎると金額が増えていく魔法がかけてあって・・・」
「だから隠したのか・・・」

もう返せないとわかったらあとは自分が損をしていくだけ。それならいっそなかったことにしてしまおうと隠したわけか。

「ん?待てよ?ギルドのルールじゃ金の貸し借りは禁止のはずだぜ?」
「どっちにしても、初代の埋めたものとは違いますね」
「もう片っ端から掘るしかないわ」

唯一の手がかりも空振りに終わってしまったことにより、またあの途方もない作業を繰り返さなければならないのかと思うとタメ息が出る。ただ、やると決めたからにはやるのが俺たちだから、みんな不満も言わずに元の位置へと戻っていったんだけどね。
















「ナツ!!」

それからさらに数時間、ひたすら木の根本を掘り進めた俺たちはある結論に至った。それは・・・

「グレイ・・・」
「来ました!!」
「皆さんも」
「やっぱり!!」
「やっぱり!?」

俺たちは今、ナツさんとハッピーの家へとやってきている。その理由は単純!!

「そういうことだ、ナツ。街中の疑わしい木の下を探した。どうやらこの木が最後の一本だ」

百年前からあるであろう木々の下は全部掘り返した。それでも初代の埋めたことは見当たらない。そして、百年前からあるであろう最後の木は、ナツさんの家の中にある木だけなのだ。

「ちょっ・・・だから最後かどうかわかんねーーー」
「「最後だわ!!」」
「・・・」

なおも抵抗しようとするナツさんにグレイさんとシャルルが一喝すると押し黙ってしまう。

「ここオイラたちの家だよ!?どうする気!?」
「掘るのよ!!」
「そんなことしたら家が壊れちゃうよ」
「やむを得まい」
「初代のためよ」
「ごめんね~」

元はといえば、ナツさんが一番乗り気だったんだし、これくらいしょうがないよね。可哀想だけど。

「ちょっと待てって!!この木が百年も経っているように見えるか!?」
「そうだよ!!他の木に比べて背も低いよ!!」

それでも抵抗するナツさんとハッピーだけど、それはこの少女の一言により打ち砕かれた。

「でも、こうなっているのかもしれませんよ」

成長した木の上に何らかの理由で土が被さり、下の方が見えなくなっている可能性がある。それくらい二人の家にある木は立派な太さなのだ。

「「・・・」

それにより二人は論破されたらしく、もう何も言い返すことができない。俺たちは全員で視線を合わせ意志疎通すると、一斉に家の周りを掘り返していく。

次第に地面が削れていき、その姿を現していく大木。それは予想よりもかなり大きくて、ナツさんたちの家は木に引っ掛かっているようにしか見えないレベルになっていた。

「やったぞ!!見つけた!!」
「ホントか!?」

そしてついに、俺たちは目的の物を見つけた。

「ついに見つかったのね!!」
「あぁ!!」

いつの間にか正気を取り戻し、作業を手伝っていたナツさんの元へと集まる。しかし、彼の手に握られているのは・・・

「ってこれ、ただの岩だし」

どこからどう見てもただの岩・・・しかし、ナツさんはそれを否定する。

「違ぇよ。初代の匂いがする」
「匂いだぁ?何寝言こいでんだよ。百年前だぞ!!百年」
「そんなの関係ねぇ。ほら見てみろ」
「どっかどう見てもただの岩だ」

そう言ってグレイさんは小さなハンマーを作り出し、軽くそれを小突く。案の定それは簡単に壊れてしまった。

「形はそれっぽかったけど」
「やっぱりただの岩ですね」
「そうですね」

やっと終わったと思っただけに、また一からとなると心が折れそうになる。みんな疲れているし、帰らせてもらえないかな?

「諦めるな。ここにないなどありえない」
「だから匂うんだって!!」

ただ、ナツさんは納得できなかったらしく地面に伏せて匂いを嗅ぎ始める。でも、百年も経ってたら匂いなんてなくなっちゃうんじゃ・・・

「絶対ぇ間違いない。初代の匂いだ」

伏せたまま地面を探し回るナツさん。すると、彼は何かに気が付いたのか、一瞬固まってしまう。

「ここだ」

そして今度は犬顔負けの掘り方で地面をどんどん削っていき、やがて・・・

「あった!!ハッピー!!」
「あい!!」

だいぶ深くまで掘り進んだようでハッピーを呼び寄せ引き上げてもらう。

「気を付けろ」
「大丈夫」

足から引き上げられたナツさん。その手にあるのは・・・

「間違いないだろうな?」
「あぁ!!見ろ!!」
「いや・・・あの・・・」
「って、またただの岩じゃねぇか!!」

やっぱりと言っていいのかあれだが、どこからどう見てもただの岩。俺では突っ込みにくかっただけに、グレイさんの突っ込みが早くて助かる。

「アイスメイク・・・ハンマー!!」
「やめろコラァ!!」
「うわぁ!!ナツ!!」

また壊そうとしたグレイさんに反撃の炎を浴びせようとしたナツさん。しかし、それは彼の体に飛び火してしまい、ハッピーが大慌てしている。

しかし、その直後だった。謎の光が彼の体を包み込んだ。
その光の正体は、彼の手の中にある岩!!それは次第に姿を変えていき、宝箱へとなっていた。

「やったぞ!!」
「魔法がかけてあったんですね」
「それで岩の形をしてたんだ」

初代の魔法により岩になっていたらしい箱。これなら掘り返されても、絶対に誰も気付かないね。

「何が入っているのかな?」
「よし、開けてみるか」
「まずいでしょそれは」
「何してるんですか?」

早速箱の中を確かめようとした俺たち。しかし、その後ろから聞こえてきた声に振り返ると、そこには初代がやってきていた。

「すごい穴掘りましたね」
「誰が寂しそうに見えたって?」
「全然元気じゃん~」

どこから見てもいつも通りのテンションの初代。俺たちは初代に事情を説明すると、彼女は色々とお話ししてくれた。焚き火をしながら彼女の話を聞いていると、突如ハッピーが声をあげる。

「ねぇねぇこれ見てよ!!」
「まさか・・・勝手に開けちゃったの!?」

目を離した隙にボックスを開けてしまったらしいハッピー。俺たちは彼の元に行くと、そこには開けられた箱と一枚の紙があった。

「何これ?」
「人~?」

特徴的な男三人とその前で笑っている二人の少女と思われる絵。あまりうまいとは言いがたいけど、何かはわかるだけ全然いいと思う。

「これ・・・もしかして初代が描いたのか?」
「そうですよ」
「つかこれ・・・絵か?」
「こらナツ!!」
「いいんですよ、別に」

ナツさんの失礼な発言にも寛大な心で許してくれる初代。エルザさんは何か言ってたけど、彼女の不思議な感性はとりあえず置いておくことにしよう。

「これ誰ですか?」

男の人三人と初代はわかる。しかし、一人だけ見たことがない少女がいる。黒い髪の初代と同い年くらいの少女・・・彼女が誰なのか問いかけると、初代は嬉しそうに語り始めた。

「私のお友達なんですよ」
「友達?」
「実は・・・今日は彼女とお別れした日なんです」

初代は多くは語ってくれなかったけど、この友達は彼女の中ではすごく大きな存在なんだと言うことだけはわかった。それ以上は俺たちも聞くこともなく、解散することになった。その初代が描いた絵は記念としてナツさんの家に飾っている。

「そういえばナツさんの家、戻さなくてよかったのかな?」
「ど・・・どうなんだろうね?」

まるで何事もなかったかのようにその日は解散したけど、被害にあった彼の家はそのまま木に引っ掛かっている形にしてあり、翌朝、彼が大騒ぎしているのが目に見えた俺たちは苦笑いするしかなかったのだった。









 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
ラストがOVAだと過去の描写ありきだったのでちょっとあれですけど、ご容赦ください。
次はFAIRYTALE CITY HEROでもやってみようかと思ってます。えぇ、ただ尻流にミニスカを穿かせたいだけですが何か?

尻流「えぇ!?なんで俺女の子設定にされてるの!?」 
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