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おっちょこちょいのかよちゃん

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69 空回りは続く

 
前書き
《前回》
 三河口は唐揚げの揚げ作業を行っていた。一方、かよ子達は食べるには早いとして校内の展示を見に行く事にする。美術部や漫画研究会の展示を楽しむかよ子達だが、藤木は笹山に話しかける事もかけられる事もなく、トイレを装って帰ろうとする。それを止めたかよ子は笹山にもう少し藤木に振り向いてと乞うのだった!! 

 
 三河口のクラスが営業する唐揚げと焼き鳥の模擬店にもようやく客が増えるようになった。
「よし、そろそろ仕事再開しなきゃな」
 三河口は料理を再び始めた。少しして・・・。
「こんにちは・・・」
「あ、すみ子じゃねえか」
 濃藤は妹が来た事に喜んだ。友達の山口、川村、ヤス太郎も来ていた。
「うん、来たよ・・・」
「お、この焼き鳥と唐揚げ美味しそうでやんす!」
「そうだな、貰ってみるか」
「よし、俺が出すよ」
 濃藤は四人分払った。すみ子と川村は唐揚げを、山口とヤス太郎は焼き鳥を食べた。
「おお、うめえ唐揚げだな」
「この焼き鳥もうめえぜ!」
「美味いでやんす」
「ミカワ、よかったな、お前が揚げた唐揚げ好評だな」
「ああ、ありがとう」
「三河口君って料理上手だよね。以外!」
 三河口は褒められてなんて反応すればいいか解らなかった。
(濃藤の妹達が来ているならば、この感触は起きない・・・。でも、なんだろ・・・)
 三河口は謎の感触が続いた。そして・・・。
「あら、健ちゃん、頑張ってるね」
 叔母とその夫が来ていた。
「ああ、おばさん、おじさん、来ていただいてありがとうございます」
「売上どうなの?」
「ああ、順調です」
「そんじゃ、私達周り見てくるね。頑張るんよ」
「はい」
 三河口は奈美子と利治を見送った。
「それにしても、健ちゃん、驚かないかな?」
「ああ、あまり仲良くないしな・・・」
 二人はある事を懸念していた。

 かよ子達はゲームができる所を回っていた。そこで野球部主催のボールでダーツをやるコーナーがあった。
「お。これやろうぜ!長山と藤木、ブー太郎もどうだ?」
 大野が提案する。
「うん、いいね」
「オイラもやるブー!」
「う、うん・・・」
「どうしたんだよ、藤木、元気ねえな」
「あ、その・・・。そんな事ないさ!」
 杉山が耳元で藤木に呟く。
「笹山にいいとこ見せるチャンスだぜ」
「あ、う、うん」
 四人はダーツに挑戦した。手作りの的は外から1点、2点、3点、4点と続き、中心部が5点となっていた。ルールはボールは2回投げる事ができ、6点以上取ると、飲み物が貰える。8点で、スナック菓子、さらに10点満点の景品はぬいぐるみや人形、さらにはサッカーのボールや野球セットなどがあった。
「うわあ、いろいろあるねえ~」
「私、あれ欲しいな」
「あれって?」
 かよ子は聞く。
「あのウサギさんのぬいぐるみ。あれ、可愛いなって思って・・・」
 薄い桃色のウサギのぬいぐるみが置いてあった。
「ふ、藤木君がきっと獲ってきてくれるよ!」
「藤木君が!?」
「お、おう、やれるよな、藤木!」
 杉山も藤木を刺激しようとした。
「あ、う、うん・・・!!」
「よし、俺からやるぜ!」
 大野が張り切った。
「大野くうん、頑張ってえ~」
 冬田が応援した。大野がボールを投げる。ボールは1個目は的のど真ん中に命中した。2個目も同様、命中した。
「やったぜ!」
「大野くうん、凄いわあ~」
 冬田は好きな男子のかっこいい姿が見れて嬉しかった。大野は10点満点の景品としておもちゃのピストルを貰った。
「長山、先行っていいぜ」
 杉山は長山に先を譲った。
「うん、やってみるよ」
「長山君、頑張って〜」
 藤木は反応した。笹山が長山を応援する。まさか笹山もやはり自分みたいな卑怯者なんかより大野や杉山、長山の方がいいのかもとまた思うのであった。
 長山がボールを投げる。3点の的に当たった。そして2回目。次は4点の的に当たった。合計7点。長山は缶ジュースを貰った。
「はは、残念だったよ」
「でも、7点で景品貰えたじゃねえか。なかなかやるよ」
「そうだよ。長山君もいい投げ方だったよ」
 とし子と大野が称賛する。
「うん、ありがとう」
 長山は貰った缶ジュースを小春にあげた。
「ありがとう、お兄ちゃん・・・」
「よし、次はオイラだブー!」
 ブー太郎が投げる。1回目は4点。2回目は5点と合計9点だった。景品としてスナック菓子の袋を貰った。
「藤木、次、お前、行けよ」
 杉山が促す。
「あ、いや、僕は・・・」
「藤木君、頑張って!」
「笹山さん・・・」
 笹山の言葉に藤木は奮起しようとする。
「うん、やるよ、絶対に10点取るよ!」
 藤木は張り切った。かよ子も藤木を応援したくなった。藤木はボールを投げる。
(笹山さーん!!)
 だが、力み過ぎてしまい、的から外れてしまった。
「あ・・・」
「藤木、落ち着いて!」
「うん・・・」
 藤木は二回目を投げた。2点の的に当たった。
「ああ〜・・・」
 まる子が落ち込んだ顔をした。笹山も心配そうにしていた。
「落ち込むなよ、俺が代わりに取ってやる」
「す、杉山君・・・!!」
 かよ子は杉山に釘付けになった。
「杉山君、頑張って・・・!」
 杉山がボールを投げる。杉山は10点満点だった。杉山は景品としてウサギのぬいぐるみを手にした。
「す、凄い、杉山君・・・!!」
「やるねえ~」
(いいよなあ、杉山君は・・・)
 藤木は杉山を羨ましがった。
「藤木、お前に預けるよ。お前の手で笹山にあげろ」
「え?いいよ・・・」
「遠慮すんなって」
「う、うん・・・」
 杉山は藤木にぬいぐるみを渡した。
「はい、笹山さん、杉山君が獲ったんだけど、あげるよ・・・」
 藤木はそのぬいぐるみを笹山に渡す。
「うん、ありがとう、藤木君」
(笹山さん・・・)
 藤木は少し嬉しかったが、かよ子や杉山の情によってできた行為なので、どこか切なく感じてしまうのだった。
「杉山君、なんかかっこよかったよ」
「ああ、藤木が少し可哀想に見えたからな」
「でも、杉山君は欲しいものなかったの?」
「いいよ、俺は。楽しめればいいんだ」
 皆は次を廻った。次はサッカーのPKができるゲームがあった。勿論ここでも景品は貰える。2回まで挑戦でき、1回目の挑戦でゴールすればスナック菓子、2回目ならばお茶や缶ジュースなどの飲み物が貰える。ただし、失敗すればポケットティッシュだった。
「あ、あそこ、隣のお兄ちゃんが言ってたゲームだ!」
「よおし、今度はアタシもやろう~」
 まる子が張り切った。
「ま、まるちゃん・・・!?」
「よし、さくらもやるか」
 こうして大野、杉山、ブー太郎、長山、藤木、そしてまる子の六人でやることになった。まず大野が挑戦する。見事に1回目でゴールインした。続いて杉山も1回目でゴール。二人はポテトチップスの袋を貰った。ブー太郎は1回目は外したが、2回目は当たり、缶入りのお茶を貰った。長山は1回目は手作りのゴールのポールにあたって弾かれたが、2回目は成功した。長山はジュースを貰った。
「藤木、アンタ次行ってきなよ」
「え?あ、いや、さくら先行けよ・・・」
「もう、よおし、やるよお~」
「まるちゃん、頑張って!!」
 まる子はボールを蹴った。だが、ボールはゴールの上を行ってしまった。そして二回目。今度はゴールインした。まる子はジュースを貰う。
「ほら、藤木もやれよ」
「う、うん・・・」
 藤木はボールを蹴った。しかし、一回目は蹴りそこねた。改めて蹴り直し。しかし、ポールに掠りもせずに外れた。二回目を蹴る。
(次こそ笹山さんにいいとこを見せないと!)
 藤木はボールを蹴った。しかし、次も大きく外してしまった。また藤木は好きな女子の前で醜態を晒してしまった。藤木は残念賞のポケットティッシュを貰った。
「おい、藤木は元気だせよ」
 杉山は宥めようとする。
「う、うん・・・」
「ふ、藤木君、こんなんでくよくよしちゃ駄目だよ!」
 かよ子も慰めようとした。
「ねえねえ、私達もなんか遊びたくなっちゃったよね」
 たまえが提案した。
「そうだね、どこかないかな?」
 皆は女子も遊べそうな所を探した。
「藤木君、気を取り直して行こうよ」
「さ、笹山さん・・・」
 藤木は笹山に気に掛けられて嬉しかった。一瞬二人が関われてホッとするかよ子であった。

 一人の大学生が文化祭が催されている高校の門を(くぐ)った。 
 

 
後書き
次回は・・・
「訪れた男」
 かよ子達女子はヨーヨー釣りを楽しんでいた。一方、調理を続けていた三河口は休憩する事にし、奏子と共に校内を周る事にするのだが、彼らの前に一人の大学生が現れる・・・。 
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